山リスと胡桃

せっかちな山リスが せっせと早めの冬支度

すると近くの泉に胡桃がプカプカ プカプカ

あれ いいなあ

近くに寄ってみてみるけれど ほんのちょっぴり届きません

山リスは落ちた松葉をつないで 身を乗り出して胡桃をツンツン ツンツン

けれど胡桃は押されてもっと遠くに

いけない いけない

山リスは松葉を捨てて まわりをぐるりと見回すと 泉に伸びる枝を見つけてヨジヨジのぼります

上からあたりをつけて 尻尾で枝にぶら下がってみるけれど あと少し届かない

もう少し もう少し あっ……

するりと枝が尻尾から抜けて 山リスは泉にザブンと落ちました

胡桃は上げた飛沫でもっと遠くに

岸で体を乾かしながら胡桃を眺める山リスは なんだかちょっぴり恨めしそう

それから山リスは落ちた枯れ木を集めて結んで イカダなんてつくってみます

つたないイカダは 水に揺れてそっと岸から離れました

初めからこうすればよかった

山リスはゆっくりイカダを漕ぎますが そのうちなんだかブクブク ブクブク

うわ 大変だ

浸水したイカダを乗り捨てて 間一髪岸まで戻ります

山リスは岸から離れていく胡桃をみて 溜め息をついて巣へ帰り 春を待ってゆっくり瞼を閉じました

それから胡桃は風にユラユラ ユラユラ ユラユラ ユラユラ……

そうして山リスが帰ったすぐ後に 胡桃はそっと岸に打ち上げられました

山リスと胡桃

山リスと胡桃

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-03-10

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