病的に透明、儚げに尖鋭
かの少女、さながらに病的に透明、儚げに尖鋭。
神経的なうらわかき情緒はめくるめいて円舞する、まるで真白な水晶の乱反射のように。それ儚い翳を曳く。さまざまな感情の陰翳をうつろわせる少女、十七歳、群青の夜の暗みの奥で、清む透徹した光が睡っているように蠱惑的な眸をもつ。それ、ときに冷たい鮮明な耀きで、月の如くどぎつく炎ゆるのであるのだけれども。
そう、線がきゃしゃで肌の色の白く、まるで病弱な雰囲気の彼女を舐めてかかってはいけない、もし君がそんなことをすれば、冴え冴えと燦る硝子の切先をむけるようにして銀の銃口を向け、燃えあがる冷然硬質を噴くがように、しらじらとそっけなくも残酷で鋭利な牙を君へむけることであろう。
少女は病める魂の銀を熔かしそっと滴らせ、溶かし沈めるようにして憂鬱な悪書へと綱を伝い曳き降りて往く──暗闇の粒子のうちに、後ろめたげな躰を隠すようにして。ひっそりと。ひっそりと少女は読書する。シャルル・ボオドレール。ポール・ヴァレリー。オスカア・ワイルド。萩原朔太郎。太宰治。久坂葉子。アンナ・カヴァン。くわえて、シモーヌ・ヴェイユ。
いるのかも判らぬ、読者よ。
もし君が、この個人的美意識により書かれた架空少女を歌う拙い散文詩を、風に揺れる頁の向うでまるで隠れんぼしているように読んでくれているのなら、どうか、どうか聴いてくれないか。
──悪書を蔑んではいけない、より果敢なくも、生きるためには!
病的なまでに淋しさを清ませよ、すれば儚さをなげだすように、鋭く燦々たる刃を突き立てよ。
病的に透明、儚げに尖鋭