B J
ぬいだあと。半透明の殻は、むなしさをおびている。生まれ変わった、せんせい。ぎしぎしとおおきな音で軋む、ベッドのうえで、光沢している。せんせいのからだ。海のなかをゆらゆらと、ゆらめく、くらげになった感覚にも似た、甘やかなめまいがつづいていた。電気ケトルに、洗面台でいれた水を沸かして飲んだインスタントコーヒーは、どうしようもなくまずかったけれど、コンビニで買って、賞味期限が過ぎてしまったサンドイッチは、ふつうにおいしかった。せんせいは、まだ、ねむっていて、ひますぎて、ちいさな音量でテレビを観ていたけれど、よく知らないテレビのなかのひとたちがおもしろそうに笑っていても、ぼくはぜんぜんおもしろいと感じなくて、テレビは消して、せんせいに借りた文庫サイズの漫画を開いた。ゆうめいなお医者さんと、かわいいおんなのこがでてくるやつ。
せんせいの寝息は、赤ちゃんのようだ。
大昔に、蟷螂という昆虫だったものが、二足歩行となり、街を支配し始めた頃に生まれたせんせいが、いま、ふたたびあたらしいせんせいとなって、目覚めようとしている。
星ははんぶん、かれらのものとなっていた。
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