ほろ酔い
乾杯!と勢いよくグラスを合わせた元気は何処へ。顔は湯気が出そうに火照っている。
「飲み過ぎですよ。」
静止し、まだ追加のお酒を頼もうとする先輩の手を握る。
「おまえ、おれのことばかだとおもってるだろ。」
文章だったら確実に全角ひらがなじゃん、と心でツッコミを入れる自分とは裏腹に、先輩はヤケになって枝豆を多量に口に頬張り始めた。
「ちょお!面白すぎるんですけどもういい加減にして下さい。明日も仕事あるでしょ?家の人も心配しますよ?」
家の人の事を話すとその言葉が合図かのようにピッと止まりこちらを向く。
「お前が、今日のおれを許せよ。」
「え?」
突然机に突っ伏したと思えば寝息を立て始めた。いつもこうだ。この人には振り回されっぱなしだ。何も知らない幸せな貴方。ずっと見てきました貴方のこと。誰よりも家族思いで、一つ一つの言葉をずっと覚えてて。
鼻をズズっと擦る。ほろ酔いなのか、擦ったせいなのか、違う理由か分からないが恐らく赤くなっている鼻を愛おしく思えてくるよ。
ほろ酔い