美術品のざわめき

美術品のざわめき

 つい先日行ったある地方の画家たちの作品を集めた展覧会、展示数が多すぎて(150点ほど)物凄く疲れてしまった。
 好きになれそうな絵が結構あり、内容的には大満足なはずなのに、しんどかったなという思いが強く残り、ちょっと残念。
 絵や美術品を沢山観ると本当に疲れる。頭が痛くなることすらある。集中するからだろうか。
 私の鑑賞スタイルはまずは先入観なしに絵を観る。気づいたことや思い浮かんだことを作品リストの余白に鉛筆で書いていく。自分の気に入ったものには二重丸をつける。読みたければ解説に目を通したりする。最後に自分のお気に入りの絵をもう一度観に行く。そしてその絵に挨拶して帰る。パンフレットや作品リストはその都度ファイルしている。
 もう何年もそんなことをしていると、何度も遭遇する美術品もある。その時はまた遇ったなと心の中で話しかける。まるで懐かしい友に再会したかのよう。
 今回のことで改めて考えてみた。
 何故私は美術品を観に行くのか?
 それは魂を揺さぶられる体験をしたいから。子どものときとは違って、新しいこともあまりない、刺激のない生活をしていると、無感動になってしまう。そんな私の気持ちを持ち上げ、奮い立たせてくれるのが美術品たち。共感したり怖がらせたり、気づかせてくれたり、私のなかに様々な感情を引き起こす美術品。物だけど物だけじゃない。人間を相手にするのと変わらない。色んなことを伝えようとしてくる。その声を拾い上げようとしているのだ。一度に沢山の人に会うと疲れるように、一度に沢山の美術品に向き合うと疲れる。そういうことなのかもしれない。
 やっぱり点数の多い展覧会は、途中休憩を入れないと駄目だ。

美術品のざわめき

美術品のざわめき

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-02-27

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