美の欠落
わたしはまるで美が欠落している失望の美を視た、
そいつ以前わたしに非情な冷然硬質を迫らせた、
蒼穹という奴、砕け剥がれたような欠落の美を晒している、
不意にわたしは「我」が刹那欠落したのを自覚した、
わたし わたしというわたしが空無を漂うていたのか、
轟々と吹きつける伽藍洞の風わたしと蒼穹を吹き抜け、
唯現実と宿命と非情とが確固として不在として在った、
この失望の美は恰も失念と墜落にわが夢を確証させたのだ、
わたしはまるで美が欠落している失望の美を視た、
わたしの頭上に亡霊と注視する審美の自意識は吹っ飛んだ、
わたしはいまわたしとしてそが刹那を磔にしようと
こうして詩編と書き記す無為な不在な行為をするが、
されどかの失念に墜落して往く戦慄に曳き延ばされた断末魔、
不在を詩で表現することは言葉から言葉を穿ち穿り出す作業だ。
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穿たれた伽藍洞の蒼穹の洞穴の如き詩を書きたい、美なき詩の美、
椿の首墜ちるが如く人間の花が赤々と墜落する風景のフーガよ。
美の欠落