美の欠落

 わたしはまるで美が欠落している失望の美を視た、
 そいつ以前わたしに非情な冷然硬質を迫らせた、
 蒼穹という奴、砕け剥がれたような欠落の美を晒している、
 不意にわたしは「我」が刹那欠落したのを自覚した、

 わたし わたしというわたしが空無を漂うていたのか、
 轟々と吹きつける伽藍洞の風わたしと蒼穹を吹き抜け、
 唯現実と宿命と非情とが確固として不在として在った、
 この失望の美は恰も失念と墜落にわが夢を確証させたのだ、

 わたしはまるで美が欠落している失望の美を視た、
 わたしの頭上に亡霊と注視する審美の自意識は吹っ飛んだ、
 わたしはいまわたしとしてそが刹那を磔にしようと

 こうして詩編と書き記す無為な不在な行為をするが、
 されどかの失念に墜落して往く戦慄に曳き延ばされた断末魔、
 不在を詩で表現することは言葉から言葉を穿ち穿り出す作業だ。

  *

 穿たれた伽藍洞の蒼穹の洞穴の如き詩を書きたい、美なき詩の美、
 椿の首墜ちるが如く人間の花が赤々と墜落する風景のフーガよ。

美の欠落

美の欠落

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-02-25

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