towards the end
手を。はなしてしまったとき、破裂して、あふれた。中身のどろどろした感触。嗤っていたのは、もうひとりの。ぼく。
都市部の大半は、はりぼてで、にんげんというものがこの世界から、うとましく思われていることを、えらいひとほど知らなかったりする。先生はある夜にとつぜん覚醒して、酸素はいつのまにか、生命体を生かすための元素ではなくなりつつあるらしい。星が、ぼくらを、憎んでいるのだろうか。一生、ゆるしてはくれないのかもしれない。本能の赴くままに、理性を失った獣じみた先生は、生きているものの血肉をほしがって、でも、どうしてか、ぼくは対象外で、なぜ?、と思いながらも、ぼくは、先生に、からだをさしだすことをやめない。冬の寒さを、そのまま密閉したような教室で、先生と、ぼくは、無益な会話をくりかえし、ぼくのとなりで、もうひとりのぼくが、退屈そうにあくびをする。
感情線が一瞬も波打たない、四六時中ほほえみの仮面をつけたひとが、ひそやかにころされてゆくばかりのこの世界のぼくらを慈しんでも、ぜんぜん、うれしくもなんともないよ。
towards the end