ひとりよがり。
どれだけ願っても、消えないモノがある。
どれだけ願っても、届かないモノもある。
きっとそれは、この世界がうまく循環するために必要なこと。
だけど、世界のルールとは裏腹にわたしの心は薄れゆく。
幻想の中に生まれてしまったモノ。
大丈夫、だいじょうぶ。わたしはいつも自分に言い聞かせる。
自分の身体に残った客の香りがも、感触も、声も。
眠ればすべて、なかったことになる。
だから、わたしは今日も笑っていられる。
だけど、本当は。どれだけ時間が経ったところで、薄れるはずなんかなくて
忘れられるはずなんかなくて、男たちに買われるたびに
視えないどこかに疵を作っては、自分自身を慰める日々。
携帯が鳴るたびに「ごめんなさい」と心の中でつぶやく。
チャイムを押すたびに、ノックをするたびに、
きみが好きでいてくれた「わたし」はもういないのだと、たたきつけられる。
今のわたしはただの売春婦。
だからお願い、触らないで。近寄らないで。わたしを思い出さないで。
そう思うのに、思っているはずなのに、
「大丈夫だよ」と言ってくれる言葉を、きみを。
期待してしまっている自分もいて、わたしはなんて醜いのだろう。
かなうことのない、夢物語。
聴けるはずのない、ことば。
期待は当の昔に棄てたはずなのに、きみのことだけは棄て切れず
こうしてひとり、物語を進めていく。
この話が進まなければ、終わらなければいい。
そうすれば、わたしはまだもう少し夢のなかでまどろんでいられる。
だけど、冷静に言葉をつづるわたしがいる。残酷にもそれが現実だ。
ひとりよがり。