アナザー・ライフ ~another・life~ Numberⅵ
アナザー・ライフ ~another・life~ Numberⅵ
『戦い』
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俺は、城の中に入った。堂々と正面から。すると、城の門の番人(兵士だが)が、「ヒビヤ様・・・?」と呟いた。
そう。俺は、ヒビヤ。この城の・・・、なんというか、その・・・。
考えていたら、目の前を通ったヤツが、俺に気がついた。召使のギンだ。
「ヒビヤ様!!お帰りになっていたのですね!!!あぁ、良かったです・・・。どこかに行って、もう死んでしまったのではないかと・・・」
「死ぬか!!」
俺は、意外とこう見えて、ツッコミは得意な方だ。周りのヤツらから「冷たい」や「クール」などに見えるそうなのだが、まあ、俺は、クールとツッコミが混じっている。
おっと、こんな話をしている場合ではない。本来の目的に戻ろう。
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「な、なんだと・・・!?」
俺は、驚いた表情をしてしまった。額に汗が流れていくのがわかった。
「これは、本当のことです。嘘や冗談ではありません」
ギンが珍しく顔が真剣だった。レンも、あとから集合したレベウンも、情報網係のリリーまで集まって、皆、険しい表情をしていた。
本当かどうかはまだ、正直に信じられないけれど、これが一大事だということはわかった。
「なぜ、出て行ったのかわかるのか?」
俺は、疑問をふっかけた。すると、ギンがすぐに「わかりません」とさっきより、もっと険しい表情で答えを返してくれた。
「そうなのか・・・。出て行った可能性と考えられるのは、自分の意志か・・・」
俺が結論をだそうとしていた。しかし、奥の方から。
「それとも黒龍軍かだろ?」
「「リュウテン様!!」」
皆が揃って声をあげる。黒い髪で三つ編みの凛々しい姿が見えた。リュウテンだ。
「リュウさん」
俺は、リュウテンのことを「リュウさん」と呼ぶ。親しい仲だからだ。
「よぉ、さしぶりだな。ヒビヤ」
リュウさんが片手を軽く上げた。挨拶の変わりだ。
「リュウさん。逃げ出した原因は黒龍軍が関係あるって、なぜわかるんですか」
俺は、なぜ黒龍軍が挙がってくるのか、訳を聞いてみた。するとリュウさんは、
「そんなん決まってんだろ?あいつ、元々黒龍に狙われていただろ。よくは知らねぇが、「なんとかに必要だ」とか「黒龍な鍵だ」とか散々言われていただろ?多分、それだよそれ」
「確かに、言われていたらしいですよね」
俺は、その時の話はよくはわからない。その頃、俺は、まだ生まれてはいなかったからだ。でも、なんとなくその話をオヤジから聞いていた気がする。
「・・・だから、か・・・」
俺は、リュウさんの話を聞いて、その可能性が大きいのではないのかという、考えが徐々に大きくなってきた。
もしその話が本当だったなら。
俺は、簡単なことを言い出した。しかし、これは行動できちんと表すことが難しいこともあるかもしれない。だが、俺は、不安な気持ちと真逆に、自信満々の力強い声で言った。
「行くぞ、黒龍軍に」
「「ハッ!!」」
皆も力強く答えてくれた。この思いが、力や希望に変わる。俺は、そう思った。
――母さん、今行くから。
俺は、後ろを振り向き、こういった。
「もちろん、リュウさんも来ますよね?」
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黒龍軍。
「うわぁぁ・・・」
うちは、絶叫(といっても感激して)していた。城のガーデン的なものの手すりをつかみ、身を乗り出しそうなぐらい、興奮していた。
「な?スゲーだろ?」
「うん!!凄すぎだよっ!!」
目を輝かせて言う。もう、こんな景色、見たことがない!
黒龍は、もっと、黒くて、残酷な町なのかなとか思っていたけれども、とんでもない。
家々がきちっと揃っていて、ここから、大きな真っ直ぐな通りが見える。でも、黒龍軍だけあって、屋根や家のレンガなどは、漆黒の黒に染まっている。
「オレたちの国だ。ま、これからは、お前も入るのか?」
黎穏が冗談を言う。その冗談が、何故か暖かく感じた。
「理亜?」
「なんにもないよ?」
うちは、笑って黎穏に返す。
「そうだ、城んなかも見せてやるよ」
「ホント?やったっ」
「本当だ。よし、行こうぜ」
「うん」
黎穏、ありがと。
今は、この言葉を一番伝えたかった。
嬉しかった。
だけど、裏切られた炎龍軍がこの黒龍軍に攻めてきたんだ。
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「何!?炎龍軍が気づくとは・・・!お前ら!防御魔法陣を張っとけ!!」
「「ハッ!」」
緊急事態に、黎穏が部下たちに命令を下す。
「何・・・?どうしたの?」
「大丈夫。問題ねぇーよ」
黎穏が笑ってこっちに返事を返してくれた。「オメーは、心配しなくていいぜ?」なんて言っているように。
理亜を安心させたあと、黎穏は、違う方を向いて、何か唱え始めた。
『デイザン・ラヴェウント・レイザ・バガジェール』
すると、黎穏の周りが黒い風に呑まれ・・・。周りに風が吹く。
「黎穏!?」
風が強くて、目の前がかすれて見える。
時間が少し経つと、黎穏じゃない人が風の中から出てきた。
「黎穏・・・?」
「この姿、見せてなかったな。これは、俺の前世の姿。『レイヤ』だ」
「『レイヤ』?」
これが、言っていた、『レイヤ』・・・。黒龍軍の王子・・・。
「行ってくっから。待ってろ」
その姿、その言葉が、黎穏じゃないことがわかった。
――黎穏じゃない・・・・。性格が少し変わっているなら、あの、『ドラゴン・バースト』のせい?
「ちょ、待ってよ!なんで、それも、『ドラゴン・バースト』ってやつなの?」
「ああ。何か使えてたからな。気づかないうちに」
「き、気づかないうち・・・」
――やっぱりうちだけが使えないんだ。
この龍界にきたのは三人。だが、そのうち二人はこの力を使えてる。自分だけ、出来ない。もしかしたら、うちはこの力をそもそも持っていないかもしれない。
そう思うと、仲間はずれになったようで、変な感情になってくる。
「・・・・っ」
仲間はずれ。自分は、惨めだ。何もできないし、何もされない。こんな自分を相手にしてくれる人もいない。
そう思うと、やけに悔しい思いがたってくる。
もう、何もかもができない気がする。
「理亜、大丈夫だって。俺、お前のために戦ってくるからよ。絶対負けねぇーからさ」
黎穏がポンッとうちの頭に手を乗せた。この手が、何よりも暖かくて、優しかった。
「頑張れ・・・!応援してるから!」
涙目で、そう言った。
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「えっと、召喚魔法隊は、この城を囲むように。特攻隊はそのまま、攻撃魔法を使いながら俺と行動。防御魔法隊は・・・」
俺は、それぞれに指示を下す。この仕事は、本当は母さんやリュウさんが行うのだが、今は、俺がやらなければいけない。
「あれ?リュウさんは?」
俺は、いつの間にか姿を消したリュウさんの行方を探すのと特攻隊との行動が、俺の最終目的になった。
「よし、行くぞ!!」
準備は整った。あとは、気合だけ。
「「オォォォォォォォォォ―――――――――!!」」
俺は、呆れて思った。
――ありすぎだろ。
アナザー・ライフ ~another・life~ Numberⅵ
( ノ゚Д゚)こんにちは☆彡 燐です!
今回の話は、ちょっと頑張って、早めに書いてみました。
だから、変な文章もあったかもしれません。そこは、ご了承を。
では、ここら辺で!
燐でしたぁ(*´ω`*)