サマードリーム
【ドリーム】
―――夢を見た。―――
幼い頃出会った、妖精の夢。
なぜ、妖精だと思ったのか覚えていない。
その子は羽根もなかったし、飛ぶこともしなかった。
ここに引っ越して来てからは思い出した事などなかった。
なぜか涙が止まらなかった。
夢の内容は覚えていない――。
【再会】
「 冷夏 、今日転校生が来るんだって」
友達の 神矢 雷那 がぱたぱたと廊下を走りながら、そう言ってきた。
教室にいた私は、初夏の風になびく髪をうっざったそうにかきあげた。
「へえ、で男?女?」
一応聞いてみる。
「おとこ!!しかも、結構美形!!」
ルンルンしながら雷那が答える。
「そう」
男に興味なんか無かった。
人に関わるのがいやなだけ。
「何よ。冷夏ってばせっかくいい男が来たんだからもうちょっと嬉しそうな顔しなさいよ」
私のそっけない態度に雷那がつまらなそうに言った。
ガラリ
「おーい、席に着け」
バタバタとみんなが席に着く。
先生の後ろに転校生がいる。
あれ、何処かで見たことがある。
転校生を見た時そう思った。
「転校生の 秋月 風夢 君だ」
「よろしくお願いします」
「席は 水城 の後ろだ。水城、面倒見てやれよ」
ボーと転校生の顔を見ていた私は先生の名指しに八っとした。
「あ、はい」
隣にいた雷那がつんつんと袖を突く。
「ね、見とれるでしょ」
「別にそんなんじゃ・・・・。」
どこで見たのだろう?
思い出せない・・・・・・。
「冷夏、テスト取りに行かないの?」
雷那の声に八ッとした。
私がボーとしてる間に、先生がテストを配っていた。
教室のあちこちでざわめきがおこっている。
「テストどうだった?」
後ろから雷那が聞いてきた。
「うん。まあまあかな」
私はあいまいに答えた。
放課後・・・
私たち2人以外、誰もいない教室。
私は今日まで提出の雷那の課題をお手伝いしていた。
「いつも男に興味の無い冷夏が珍しいねボーとなるなんて」
雷那がからかい気味に言った。
「そんなんじゃないって言ったでしょ」
「そんなんじゃなきゃ何なのかな?冷夏ちゃん」
雷那がツンと私の頬を突く。
他に考えられないって眼をして私を見てる。
「ただ・・・・」
雷那に言うと きっと・・・・。
「ただ 何?」
「見たことがあるような」
きょとん とした眼で雷那は私を見た。
「見たことがあるってあの転校生?」
「うん」
「なーんだ、やっぱり気があるんじゃない。それとも、前世で出会ってた とか?」
雷那は、ケラケラと笑い出した。
やっぱりそっちの方に話を持っていくか・・・・。
「そんな事言うなら手伝わないよ」
ちょっとムッとしていった私に
「えーん。秀才の冷夏の頭が無いとこんなの終わらないよ」
雷那がすがりついてくる。
「はいはい。それより、手を動かそうね」
「楽しそうだね。何してんの」
急に声がして振り返ると転校生がいた。
「今、秋月君の話してたの。秋月君は何しにきたの?」
転校生の方を見ながら雷那が答える。
雷那の顔はルンルンしてる。
「僕は忘れ物を取りに来たんだ。 あれ、それって課題?」
転校生が机を覗き込んできた。
「そう。雷那が今日までにやってこなかったから、手伝いしてるの」
雷那が、何で余計な事言うのって眼で見てる。
「へえ、手伝ってあげようか」
「もう終わるから」
私はそっけなく答えたつもりだった。
「それなら一緒に帰ろう」
え?
「ボディガードがわりにはなるだろ?」
たしかに外はもう薄暗くなっているけど・・・・。
「送ってってくれるの?嬉しい」
私が答えるよりはやく、雷那が答えた。
ま、いいか・・・。
「でね、冷夏ってね・・・」
雷那の家は、私の帰り道の途中にある。
雷那は、その家までずーとしゃべり続けていた。
「あ、私の家ここなの。じゃ、また明日ね」
雷那が別れ際、私に耳打ちした。
「彼って素敵よね」
って
つまり、『手を出すな』という事か。
・・・・・・・・・・・・・
二人っきりになったらシーンとなってしまった。
家に着くまで何もしゃべる事がなかった。
「あ、家ここだから。じゃ」
パシ
家に入ろうとした私の手を転校生が、しっかりと捕まえていた。
「なに?」
「忘れてしまったの?約束」
彼の悲しい目が私をとらえる。
子供のようなその瞳。
そう、この瞳。見た事ある――。
いつ?
いつだったかしら?
サアァァァ
風が、通りぬける。
その風の中に、すい込まれていきそうな彼の姿。
消えてしまうのかと思った。
「ごめん」
そう言って手を放した。
「じゃ、また明日ね」
彼は、笑って風の中をかけていった。
私はいつ、彼に会ったのだろう――。
夢を見た――
妖精の夢。
小さな私がいる。
そして、妖精も
「キャハ、・・・フフフ・・」
「ク・・・スク・・・ス」
――――――――――――― !!
目が覚めた。
涙が止まらない。
ああ、そうだ
妖精は・・・・
なぜ、忘れていたのだろう。
窓から月明かりが入ってくる。
その中に人影がうつる。
私は窓に近づいた。
キィ
窓が開く。
開いた窓から彼が見える。
庭の木の枝にすわって、月の光をまとう。
人とは思えないほどキレイ
あの時と同じ・・・
だから、私は妖精だと思った。
人とは思えなくて
まるで、この世のものではないように思えた。
「思い出した?」
彼が私を見た。
「まだ、みたいだね」
彼の瞳が、悲しそうにゆれる。
まだ?
何が?何を思い出すの?
ザアァァァァ
風が、樹をゆらす。
風に溶けるように彼の姿が揺れる。
彼の姿が消える・・・
「まって」
聞こえなかったのだろうか?
彼はそのまま風の中に消えていった。
「いつまで寝てるの。いい加減に起きなさい。」
お母さんの声で目が覚めた。
夢?
妖精の事も?
すべて・・・・・・・?
「いつまで勉強していたのか知らないけど、いい加減にしなさいね」
「うん。わかってる」
ボーとした頭で答える。
私の頭のなかは、昨日の夢の事でいっぱいだった。
なぜ彼が今、目の前に現れたのだろう。
約束って何?
子供の頃、妖精と何をして遊んでたっけ?
妖精の名前は、なんだっけ?
教室でボーとしながら外を見つめていると、
「おはよん」
うわっ
ルン と、した雷那の顔が、目の前にぬっと現れた。
「何よ、そんなに驚く事ないじゃない」
ちょっとムッとしながら、雷那は顔を私にぐっと近づけて来た。
「昨日、彼と何かあった?」
「え?何が?」
私が目をパチクリさせると、
「何とぼけてるのよ。彼、さっきから冷夏の事見てるよ」
え?
振り返るとたしかに転校生がこちらを見ていたようだ。
「彼、結構気に入ったのに」
まずい・・・。
この様子だと転校生と私の間に何かあったって誤解してるらしい。
「気のせいじゃないの?昨日はずーと黙っていただけだよ。」
「ホントに?」
疑わしいって目をして雷那は私をじっと見た。
「ほんとだよ」
私も、雷那をじっと見た。
「なぁーんだ。そう言えば冷夏ってば人嫌いだもんね」
何とか、わかってくれたみたいだ。
雷那は、きゅうにニッコリした顔になって、
「ね、冷夏これ教えて、今日あたるの」
そう言って雷那は私の机にノートをひろげた。
( 本当はこれを聞きに来たのね )
「どれ?」
頭の上で声がした。
ひょいっと顔を覗かせたのは、あの転校生だった。
「教えてくれるの?」
雷那は嬉しそうに言った。
「ああ、そのつもりだけど」
「あのね、ここなんだけど・・・・」
「ここは・・・・・・・・」
私はそんな二人をボーッと見ながら、昨日の事を考えていた。
転校生は昨日の事は何も言わなかった。
彼は妖精なんだろうか?
こうして見てると普通の人みたい。
【風の中】
あれから、なぜか3人で帰る事が多くなった。
「冷夏、帰ろうよ」
雷那がいつものようにそう言ってきた。
「あ、ちょっと待っててくれる?日誌を書いて、職員室に持っていくから」
黒板を消し終わった私は雷那の方を見ていった。
雷那は私の席に座っている。
「日誌は書いてあるよ」
「ありがと、雷那」
私は、なるべく急いで職員室に行った。
雷那は教室で待っててくれてる。
「水城」
急いでいたのに先生に、呼び止められてしまった。
しばらく先生とお話タイムになった。
いつ、職員室を出たのか覚えていない。
「おそーい。何してたの?」
気がつくと、雷那が怒った顔をしていた。
雷那の隣には転校生がいる。
「先生に、呼びとめられてて・・・・」
ボーとした頭で答える。
「どうかした?元気がないみたいだけど」
え?
そう言ったのは転校生の方だった。
「先生に何か言われたの?」
雷那も心配そうに言ってきた。
「別になんでもないよ」
にっこりと笑って答えた。
「そう?じゃ、帰ろ。ハイ、冷夏のかばん」
雷那は私にかばんを差し出した。
「ありがと」
先生、なんて言ってた?
夢を見た――
妖精の夢。
幼い私がいる。
そして、妖精も・・・・。
私が妖精を呼んでる。
「・・・・・ム・・・。フー・・・。フゥー・・・ム」
――――――――――――――!!
目が覚めた。
涙がこぼれ落ちる。
フゥーム・・・・。
あの頃読んだ童話の中の名前。
その名前で妖精を呼んでた。
今夜も月が出てる。
窓を開けてみた。
キィ
かすかな音がした。
妖精はそこにいた。
月の光の中で、こちらを見ている。
樹の枝に妖精はもたれていた。
あの頃と同じ、子供のままの姿で・・・・。
「思い出した?」
妖精は、哀しげな瞳で私を見つめる。
私は何も言えなかった。
「まだ、みたいだね」
妖精の瞳が揺れる。
まだ?
何?何を思い出せばいいの?
ザアァァァァ
風が樹々達を揺らす。
また、消えてしまうの?
妖精が、月の光に溶けていく。
「待って、待ってよ!!フゥーム・・・」
彼が消えてく瞬間こっちを見たように思えた。
それは、気のせいだったのだろうか?
フゥーム―――
パタパタッ
風にカーテンが揺れてる。
朝の光が入り込んでくる。
夢?
フゥームの事は?
あっ
フゥーム?フウム・・・ふうむ・・風夢・・・・風夢!!
私が気づくように?
あれは夢じゃなかったの?
なぜ子供のままの姿をしていたんだろう?
妖精は何を待っているんだろう?
【約束】
しばらくは何も無かった。
妖精の事など忘れていた。
夢も見なくなっていた。
期末テストが近づいていた。
「冷夏、あたりそうな所教えて」
雷那が、いつも通りすがってきた。
テストが近づくと、いつもこれだ。
「雷那、人をあてにしないでたまには自分で頑張ったら?」
私は意地悪っぽく言った。
「ひどーい。この時期にそんな、余裕あるわけないじゃない」
「どんな余裕がないの?」
彼が、話に入ってきた。
「風夢、冷夏ってすごいのよ。いつもテストに出そうな所がわかるの」
雷那は、転校生の事を『風夢』と呼ぶようになってた。
「そんなの、先生の話を聞いてれば、だいたいわかるよ」
「えー、そんなこと無いよ」
「僕も、知りたいな。テストに出る所」
う゛っ
二人して『教えて』の目をして私を見る。
「わかった。教えてあげるわよ」
「サンキュ。冷夏」
あまり自信無いんだけどな・・・。
この前もあまり―――。
終業式が終わった。
外で、セミが鳴いている。
「明日から夏休みだ―――」
教室に戻ってきた雷那が、背伸びをしながら言った。
「そうだね」
蒸暑い教室で、下敷きをパタパタしながら答える。
「夏休み予定ある?」
雷那が、聞いてきた。
「別にないけど」
「それなら、家の別荘に来ない?」
え?
「別荘なんてあったけ?」
「親戚の人に、今年だけ貸してもらえるの。くる?」
別荘かぁ。どうしようかな・・・。
「海のそばで、眺めもいいよ。風夢も来るって」
「いこうかな」
ガラリ
先生が入ってきた。
「ほんと?じゃあ、夏休みになったら、連絡するね」
雷那は慌てて席に着いた。
予定なんかないから、いいか。
ざわざわ
先生が成績表を配り出した。
「冷夏どうだった?」
雷那が、自分の成績表を見ながら聞いてきた。
「・・・・・・」
私は、成績表を眺めたまま何も答えなかった。
「冷夏?」
雷那が、成績表から目を上げた。
「え、あ、まあまあかな」
成績表をしまいながら答える。
「まあまあか。私はだめ」
ため息を吐きながら、雷那は言った。
「次は、もっと頑張れば?」
後ろで話を聞いていたらしい、彼が話に加わって来た。
「そう言う、風夢はどうだったのよ?」
「僕?前と変わらないよ」
ニッコリとそう言って、成績表を見せてくれた。
え?
順位の所に『1』と書いてある。
「ちょっと、これじゃ、上がりようがないじゃない」
雷那がピキッて切れそうなのがわかる・・・。
「そうみたいだね」
ニッコリとしてる彼を見て、雷那が切れてしまった。
彼の胸ぐらをぐっと掴んでぶんぶん振った。
「何へらへらしてんのよ!!私と一緒に冷夏に聞いてたくせに、どうしてこう違うのよ」
「自分で頑張らないと、よい結果はでないんだよ」
雷那が、ピタッと振るのをやめた。
図星を指されて何も言えなくなったのだろう。
ぷいっとそっぽを向いてしまった。
「嫌われたかな?」
彼がつぶやいた。
「大丈夫よ。明日になれば忘れてるから」
私は、それとなく答えた。
夢を見た―――
妖精の夢。
子供の私がいる。
そして妖精も
夏の日差しの中、二人で遊んでいる。
あれは、引越しする前の日だった?
「やくそく?」
私と妖精、二人で・・・。
「うん。約束」
約束をした。
―――――――――――――――!!
目が覚めた。
涙が溢れ出る。
そうだ、あの日・・・
妖精はこれを待っていたんだ。
私が約束を思い出すのを
だから、妖精は私の前に現れた。
約束のために―――
月が出てる。
キィ
窓が開く。
トンッ
妖精が、部屋の中に入ってきた。
今度は、今の姿で。
「やっと、思い出した?」
私を見つめるその瞳は、昔と変わらない。
「うん。約束したよね」
あの時、二人で交わした約束・・・・。
『僕を呼んで。君が望むなら、―――』
「迎えに行くよ」
そう言って、妖精は私に手を差し伸べてくれた。
止まりかけた涙がまた溢れてくる。
「連れてって!!ここはもう、いやなの!!お願い!!連れてって!!!」
泣きながら叫ぶ私を、彼は静かに抱きしめてくれた。
なぜだろう?ほっとする。
彼の腕の中が心地いい。
コンコン
ハッとした。
「冷夏?どうしたの、大きな声だして」
お母さんの声だ。
カチャ
慌てて、ドアを開けた。
「なに?」
「何って。今大きな声がしなかった?」
お母さんが不振そうに部屋の中を見渡した。
「あ、ラジオだよ。ちょっと間違えてボリューム大きくしちゃったから」
「そう?それならいいけど・・・。早く寝なさいね」
「はーい」
お母さんは、部屋に戻っていった。
パタン
振り返るともう、妖精はいなくなっていた。
「フゥーム?」
呼んでも返事はない。
あれから、何度か妖精の夢を見た。
昼も夜も関係なく。
でも、暑くてすぐ目が覚めてしまう。
夢の中でしか、妖精に会えなかった。
目が覚めると、そこに妖精の姿はなかった。
私が呼んだ妖精。
連れてってくれるよね?
約束守ってくれるよね?
私が望めば、連れてってくれるって約束したもの。
【バイバイ】
ザン ザザァ
涼し気な波の音が聞える。
「ねっ、結構いい所でしょ」
雷那が別荘を指差しながら言った。
「風夢は来れなくて残念だけど、二人で思いっきり楽しもうね」
明るい声の雷那。
「うん」
「部屋に行ったら着替えて、海に行こう」
二人で泳いで楽しんでいるうちに、日は沈みかけてきた。
夜の海辺。
二人で静かに座っていた。
「冷夏、夢がある?」
沈黙を破ったのは、雷那の方だった。
「私ね、夢があるの」
空を見上げながら、雷那が言った。
そう言えば、前にそんな事を言っていたような?
「冷夏もあるでしょ?」
「別にないよ」
雷那がはっとしたように、私を見た。
「冷夏。どこかへ行かないで」
雷那が消え入りそうな声で言った。
「え?なに言って・・・」
「あ、ごめん。変だよね。冷夏が、消えてしまいそうだったから」
私が消える?
「戻ろうか?」
雷那が別荘の方に歩いていった。
「ただいま」
別荘から帰って、家に着くと誰もいなかった。
そのまま部屋に行く。
ザアアァァ
開けたままの窓から風が入ってくる。
何かの紙がバラバラになってる。
パタン
窓を閉めて、紙を集める。
何の紙だっけ?
紙に目をやってはっとした。
私の夢だったものを見つけた気がした。
夢を見た―――
妖精の夢。
過去の私がいる。
夢の妖精も
夏の光の中で・・・
かくれんぼをしていた。
「どこ?フゥーム」
「レイ。こっちだよ、早く見つけて」
―――――――――――――――――!!
目が覚めた。
涙が頬をつたう。
私と遊んだ妖精。
私を迎えに来た妖精。
私が見つけた妖精。
月明かりが入ってくる。
人影がうつる。
キィ
窓が開く。
トンッ
妖精が入ってくる。
「おいでよ。一人では、さみしすぎる」
差し出されたその手をつかめば、きっと行ける。
夢の中。苦しみも、悲しみもない世界に
行きたい!!
だけど・・・
「ごめんなさい」
行けない。
「あなたと行ければ、よかった。だけど、見つけたの。私の夢。だから、行けない」
妖精が哀しい瞳で見つめる。
わかってる。
妖精が、わたしだけをまっていたの。
私のために、ここに来たの。
「ごめんなさい」
その言葉しか出てこない。
涙が落ちる。
「なぜ、泣くの?嬉しかった。僕を呼んでくれて・・・」
サアァァァ
風が舞う。
妖精の姿が消えていく。
もう、引き止める事はしない。
「さよなら」
風の中で妖精がそう言ったようにおもえた。
「バイバイ」
過去の夢・・・。
私の悲しみが妖精を呼んだ。
夏休みが終わった。
始業式が終わって教室に戻ってきた。
「どうだった?夏休み」
雷那が聞いてきた。
「楽しかったよ。ねえ、そう言えば秋月君の姿が見えないけど?」
私はなんとなく気になっていた。
「秋月君?誰それ?」
え?
「1学期に転校してきたじゃない」
「夏休みボケ?そんな人いないよ」
そうか、彼は妖精だから、戻ったんだ。
夢の空間に
初めから、いるはずのなかった人だから・・・
【夢の終わり】
妖精を夢見ていたのは私だった。
だから、彼を見つけることが出来た。
たぶん、これからも妖精の夢は見るだろう。
だけど、妖精には会えない―――――
15歳 ・ 冬
サマードリーム