Twilight death
警察はプロだ。
安部氏の捜査は終わった。後は検察の主張と弁護士団との腕比べ・・其れに判事が何処まで酌量をみいだせる?
安部氏の事件。
警察の調べでも容疑者の動機に一貫性が窺えるのだが、さらに余罪を付け加える事で罪を重くする事が目的だとも思われるのだが・・。統一教会と自民党との長い付き合い。それにも拘らず政府が未だに厳しい措置をとれないのは、自ら達の殆どが事に正義を感ぜず只管金銭供与のみを望んできたからである。国葬に反対するデモを大人しく行ったのは殆ど高齢者たちだった。故意に行って来たという事実を認めたく無いし国民を欺く事を何とも思っていないから誤魔化しの為に国税を使ったと言えるだろう。しかも、未だに参列者の名を一切公表しないのはどういう神経なのか?殺人罪は凶悪犯罪で絶対に許されるものでは無いのだが、罪を憎んで人を憎まず・・は、法律の根本であり、容疑者の目的は安部氏を介して世に訴えられたとも言えそうだ。仮に死をもって償えと言うのなら、目には目をのハムラビ法典の再来となる。現在、死刑制度が許されている国はUSAと此の国くらいのものだと言えよう。UKの女性議員が一人だけ此のことに触れ、此の国は死刑制度を廃すべきだと公表している。予言者は約二年前に事件を予知している。其れはそうなる運命をも予知していたからであり、更に二日前に念を押したようにTV画面に映っていた彼の全身に死相が浮かんでいた事は事実である。現在も世界中に多くの死相が浮かんでいるが死相は消える事もある・・だが二日前では消す事も出来ない致し方ない事である・・。安部氏の死を大事にするのであれば国葬などでは無く、自民その他の統一教会に関わって来た者達全員が、我が身を清める事でしか償えないと言えるだろう。第二の犠牲者が出る前に統一教会に然るべき措置を取るべきである。
Twilight death
Sマンションは、殆ど高齢者ばかり居住していて、それも一人住まいが多くを占める。
N駅からバスで五十分以上も乗って行った先にある五階建ての建物だ。
各階の戸数も二十程、エレベーターを真ん中にして、北側に十戸、南側に十戸。(北の端が1号室、エレベーターを通り過ぎて南側の端が20号室だ)
バスの本数は30分に一本だが、渋滞や天候によっては遅れる事もある。
陸の孤島と言ってもいい様な状況だ。
どうにか、スーパーと郵便局に喫茶店が一軒ずつあるだけで、それ以外の店舗などは、N駅の近くの繁華街にあるから、そこまで行くか、折り込みチラシを見ながら電話で依頼しないと、買い物も出来ない。
こんな不便な立地条件でも、居住者がいるのは、彼等は定年退職後、退職金で安いこのマンションを購入したからだ。
子供達は、とっくに独立して働いているから、他の駅の近くの便利な住宅に住んでいるか、遠方に住んでいる。
昨今、巷で言われる、「高齢者の孤独死」は、此処でも問題になっている。
管理組合は一応存在するのだが、なにせ、高齢者ばかりだから、管理会社が「見守り」チームをつくって、巡回に来る。
近隣から、「何か様子がおかしいから来て貰いたい」とか、そうで無くても定期的に回っている。
訪問が、早朝や深夜になる事もあるので、チームは二十代の男女で管理課に所属している足立徹と安田美香の二人で、担当してから二年程になる。
今日も二人は、会社のあるD駅から電車とバスを乗り継いで訪問を。
N駅は、私鉄の二社が乗り入れているから、鉄道の便は悪くは無い。
今日は一月十日の金曜日で、二人は大体週に三回のペースで来ているが、二人の休みは不定期で、場合によっては休日でも呼び出される事もある。
先ず、二人は定期的に訪問する部屋を廻った。
偶には、出掛けて不在の時もあるが、大抵は部屋にいる。というのも高齢者だから。
徹と美香も、なるべく出掛けそうな時間帯は外して訪問するのだが、不在の事もある。
大抵は、スマホで連絡が取れるから、喫茶店で時間を潰したりして再度訪問する。
現在まで、始めてから特に問題は無く見守りは続いていた。
勿論、病気で入院したり、運悪く亡くなったりすることはあったが、自然死だ。
極稀に、自殺者が出る事があるが、それはどうしようもない事。
午後四時頃、二人が五階の廊下を歩いている時に、いきなりドアが開いて、老女が飛び出して来た。「あなた方、見守りの方達だわね。ちょっと、話があるんだけれど・・」
その老女、5019号室の畑山光江が言うには、隣の5020号室の佐々木武夫の姿を昨日から見ていない。買い物に行く気配も無いから心配だという事だった。
二人は、何度かチャイムを鳴らしてみたが、確かに反応が無い。
ドアポストからは、何か大きな物音なのか話声なのかが聞こえる。
ドアを何度か叩き、一階まで降り外から窓を確認したりしたが、窓にはカーテンが掛かっていて中の様子は分からない。
管理人室には合鍵があるから、管理人立会いのもとに中に入る。
いきなり・・ドアノブで首を吊っている佐々木を発見。
詳しい事は分からないから、救急車と警察に連絡を。
救急車が最初に来佐々木を運んで行くと、暫くして二人の警察官が到着し、更に連絡を取ったのか、鑑識の人間に刑事もやって来た。
室内で警察の作業が行われている間に、二人は他の部屋の訪問を全て済ませ、再び5020号室に戻って来る。
白い手袋をしている刑事が光江・管理人・二人に質問を。
警察は余計な事は言わないしどんな状況かは分からないが、質問の内容から推測し、どうやら佐々木が自殺を図ったと判断しているように聞こえる。
血痕は見つからなく、暴行されたような形跡も無く他人とのいさかいも無かったという事のよう。
大きな声や音が聞こえたのは、佐々木は耳が悪いので、TVの音量を上げたままにしていたのではという事のよう。
最近はドアノブを使った首吊りが増えているとも聞く。
光江と佐々木は隣同士として長年の付き合いだから、毎日の互いの習慣も知っているよう。
光江の話では。
「佐々木は三食きちんと食事を取っており、朝は冷蔵庫の物で間に合わせる事も偶にはあったが、昼食と夕食は必ずスーパーまで買いに行く。何度か一緒になった事があり、行きも帰りも一緒という事も」と。
警察も取り敢えずは自殺と判断したようだ。
見守りの二人にとっても自殺という事は残念だが、意外に少なくはない。
翌日、社内で徹が美香に。
「良くある自殺のパターンだけれど、ひょっとしたら自殺では無いのかも知れないという事、考えられないかな?」と、手にしていたペットボトルの飲料を飲む。
美香が首を傾げ乍ら。
「どうして、そんな風に思うの?徹さんもちょっとした天邪鬼かも知れないわね?」
徹が美香の顔を見。
「あそこの部屋は密室では無いけれど、オートロックになっているから、中にいたとし出掛ければドアはロックされるよね。音が聞こえた事も、TVの音だと言ってしまえばそれまでだけれど、争っていた際の声だと疑ってみる事も全く確率が無い訳ではない。例えば、ドアノブで自殺に見せかけるために、腕力のある者なら強引に首を吊らせる事も・・?」と、スマホで何やら検索を。
美香が少し表情をこわばらせ。
「それじゃあ、徹さんは殺人だと言いたい訳?」
口を尖らせる。
徹が首を横に振り。
「いや、断言してるわけじゃあ無いんだ・・何となく気になっただけで。明日は訪問日だから、あそこに行ってみよう?」
翌日、二人はマンションに向かい、予定通り仕事を済ませた後光江を訪問。
徹がチャイムを鳴らすとすぐに光江が顔を出した。
徹はドアに手を掛けながら。
「お忙しい所済みません。ちょっとお聞きしたい事があるんですが宜しいでしょうか?」
光江は表で立ち話も何だから中に入ってと。
「変な事をお尋ねしますが、佐々木さんは親族とは全く付き合いは無かったんでしょうか?お子さんとか、それ以外にも親族の方などと・・。それと、他人と口論になり揉めるというような事など無かったんでしょうね?」
光江は二人が椅子に座るなりお茶を入れてくれ。
「お答えが質問と逆の意味になってしまうけれど、そりゃあ、佐々木さんはこの辺りでは付き合っている方もおらず、私くらいかしら。ああ、そう言えば、実は、お子さんの事なんですけれど、二人いらしたようですが、佐々木さんが言うには、金が無いからなどの連絡が頻繁にあるような事を漏らしてましたが・・。こんな事を言っていた事がありました。どういう理由か孫や家族と会わせてくれないのには腹が立つ。もう一人の息子さんは更に頻繁に連絡をしてくるとか?
「まるで俺の事を銀行だとでも思っているのか?始終連絡はあるが、俺はまだすぐに死ぬわけでは無いから、金は必要だし、何かと子供と喧嘩をする事が多い。金はちゃんと金融機関に貯金をし、俺が死なない限り子供に相続される事はない・・」
二人は光江に礼を言いマンションを後にすると、肩を並べて歩いていたが徹が突然立ち止まる。
鞄の中から資料の様なものを出しそれを彼女に見せながら。
「此れは、警察庁の統計及び総務省統計局の資料なんだけれど、『昭和54年から平成15年までは、ほとんどの年に親族以外の面識者に関わる事件が、親族の係わる事件よりも多かったけれど、16年以降は逆転し親族の関わる事件の方が多くなっている。親族率は平成16年から上昇傾向にある(23年は52.2%)。』という事。それと、厚生労働省が関係している、寄り添いホットラインに掛かって来る電話の悩み事の内容には、『老後の親と子の金を巡るトラブルが多い』となっている。まあ、今更、経験豊富な警察の取り調べを覆す事など・・確証も無ければ・・若し、本当に自殺で無く殺されたんであれば、本当に可哀想だと言うしか無いよね?でも、どうも可能性は完全に否定できない。相続は大金が手に入るわけだし。疑えばキリが無いが、偶々金の工面の交渉に来た時にそんな事が起きたのかも知れないなど考えてしまうんだな?まあ、先程の光江さんの言葉から窺えた様に、本人がまだ死にたくは無いと言っていたという事は最大の矛盾で謎?」
二人がバス停のベンチに座るや否や、美香が徹の顔に目を遣りぽつんと。
「そうだね。亡くなった方は憐れだという事になるかもね。それ、徹さん警察には話さないんでしょう?・・勿論よね。何があったにせよ被害者が生き返る事は無いんだし、何れ歳を取り病気か何かで亡くなるのが早まったと考えれば・・御免!そんな事言ったらいけないわね?」
ようやくバスがやって来る。
事の真相は二人の胸の中にしまったままで事実がどうなのかは謎のまま終焉を。
バスが駅に近づいた頃には、車窓の向こうは既に用意されていた様な漆黒の闇・・。
「三億円事件や、グリコ森永事件の様に、「未解決事件」というものは、今までもあったが、警察がそんな単純な調べをするとは思えない・・其れでも、絶対という事も無いのじゃないかな?幾らプロだとしても、勿論、子供達の聴取は充分としても・・僕達の方が居住者については又異なる見方をしていたとしても・・決しておかしくはないんでは?其れで無きゃ、仕事は単なる給料だけの為にという事で、居住者の気持ちを分かってあげられる事を一番主としているのだから?別の意味のプロ根性位なければ、同じ人類として情けなくなる・・?」
彼女は既に相棒と二人で真剣に仕事をしているのだから例え警察だろうと?・・そう確信をしたようだ。
二人にとり、意味合いの異なる黄昏(たそがれ)が、曠漠(こうばく)とした世の中にありながら、如何にも孤独そうに震えているような気がしてならなかった・・。
「真面目とはね、君、真剣勝負の意味だよ。夏目漱石」
「人生は地獄よりも地獄的である。芥川龍之介」
「彼は悲しい時、苦しい時に必ず『あの客』を想(おも)った。それは想うだけで或(ある)慰めになった。志賀直哉」
「by europe123 pianoの叫び」
https://youtu.be/N6mykOAclrI
Twilight death
如何なるミスもあり得ない。