風、嵐それから行き



箒で掃いて、集めた砂。
部屋の中にある、いつもの事。
些細な量で、
血よりもさらさら。
風に遅れて、人を追いかけて、
悲劇を知らない、
純粋さ。
粒揃いに、ばらけて
意志を失くした、
今更の様に。
付いて、回って、不快にして。
捨て切れない、
階段と過去の回り道。
だから、
この世に要らない時計、
なんて酷いことを口にはできない。
それに
冷たい日差しの温もりは、いつも、
木目の隙間に住まうのだから。
屈んだ姿勢の人間は、
逆さまになった家守より知る。
丸くなった運命より
鋭い角を立てた、
希望の方が痛みと人を憎むのだと。
真っ赤に染まった手で、
古語の埃を払ったその代償。
きらきらと散る、
舞う世界は、瞼の蓋は、
喜ぶのだ。そういう愛を知って、声を知って。
爪、そこかしこの傷


感心、
神話の隣に眠るもの。


戻り、
冷たい声の便りを溶かす。


缶詰めよりも瓶詰めを、
大切にすることと同じくらい。
汗を拭って、床を磨く。
外で遊んで、靴を洗う。
ここにある風の自由は、今も、
向こうの海まで「届かないんだ。」
それを一つも「嘆かないんだ。」
ハミングする、
背中を預けた太い幹の木陰。
木霊より等しく
結(けつ)を合わせる。
見上げるよりもずっと頑張らなければ、
また。
手を伸ばす努力よりも無理を
重ねなければ、
もっと、と樹上の赤い実り。
あれを未来と呼べば
途端に、
濃く濃くなるのが葉擦れ。
それで
舞い散るのが砂状。
きっと、
もっと、
遠く、遠く。
リーン、ゴーンと、響き渡るまで


擦る指先と
そこからの火。
靴裏の方から火で炙って、
燃やし、焦がす方法。


狼煙は、
何一つ満足しなかった客人の要望らしく、
どこまでも真っ直ぐに、高らかに登って
早足で動かされる雲の、雲の、隙間を縫い、
青々と広がる、
砂に沈む、朝になる。
声になる。綺麗になり、だから、
美しかった。
全ては


扉を開ける前。


「不在を願う私のする事だ。
夕闇の手前で終わる作業に、
全てをかける命。」

「帰れなくさせる為ではない
(どうせ飛んで逃げる)、
殺されたものの為でもない
(あれもまた、どうせ帰って来る)、」


綴るより閉じること。
土汚れが付着して落ちなくなった、全ての愛着。
裸よりも酷い裸足になって、
またどこからか入り込んだ砂を巻き添えに。
灰色に近くなっていく
床の節くれだった痛みに流す赤々とした血を。
鎖付きの懐中時計、
それにクルクルと目を回すのは
時間を求めた人こそが、人こそがと惑うべき事態。
その意味を心得るのが私(わたくし)なのだと、
きっと
誰かが好む言葉は
吹き荒ぶもののことを忘れて、今。金色(こんじき)に


跳ねて、駆けて。消えて。
割れたお皿と。情の不思議は。

風、嵐それから行き

風、嵐それから行き

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-02-15

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