何処までも拘れば・・そう遠くない結果が訪れる

何処までも拘れば・・そう遠くない結果が訪れる

しつこい人と、いい加減けじめをつけた人では。

 世界各国は気球騒ぎで明け暮れている。
 特に此れといって目的も考えられない気球のくせに浮遊しまくっている。
 考えようによっては気球を徒に浮遊させては世界各国の反応を見ているとも思える。
 頭上の脅威という潜水艦と駆逐艦の戦いが映画になっていたが、頭上の気球は何の為?
 あんなんで偵察を図るというのもお粗末すぎ、どうやら気球の目的はよく分からないまま。
 其れが次第に気球の種類が増え、よくある気球を上げる大会の様な様相に至って来た。
 というのも、同じ様な気球だけでは詰まらず、落とす方もわざわざステルスを使用して迄撃墜する意味合いも無くなって来た。
 大東亜戦時の高射砲でも落とせると思われ、次第に落とす方もいい加減面倒になって来た。 
 カラフルな気球が続々と浮かび上がっていき、撃ち落とす側も聊か競技大会の体を真似しているような錯覚を起こし始める。
 片や、気球を上げる方にも一国だけでなく、素人気球マニアの姿も見られる。
 此れが、戦闘機なら緊張を感じるのだろうが、カラフルな気球の様々な形状にも地上から見ている者達の関心が注がれている。
 東側の気球なら領空侵犯だが、西側のものとなれば必ずしもそうはならない。
 其れが多数混じり浮かんでいるのだから、落とす方も恰も射的をやっている様な気分に。
 更に気球の姿は増え続けている。終いには見上げる空はほぼ空間が窺えない程に密集している。
 そもそもは偵察用の目的だったのだが、カラフルで奇抜な形の気球はどうやら落とされた時の事を各人各様にかんがえるようになっていく。
 気球の内部に胡椒を注入させたり、霧の様な水分を含んだもの。
 其れにも色が付けられ、気球が破裂したら、色とりどりの気体や噴霧上の液体に、遂に巨大なぬいぐるみの様な物まで内蔵されている物まで。
 そうなると、地上で見ている大人だけでなく子供達も胸をときめかせ・・次は何だろう?
 更に気球は風の気分で何処に飛んでいくのかは分からない。
 折しも戦闘状態に陥っていた地域まで気球が流れ込んでいく。
 ミサイルが飛び交い砲弾も気球を避ける様な工夫をしながら発射される。
 戦場の子供達にお土産が届く事もある。其れがぬいぐるみだけにあらず、キラキラ輝く砂や星屑の様な物、はたまた子供達にはそれが何なのか分からないおかしな形をした物。
 どうやら宇宙から飛来したもののようでもあり、青い惑星では入手できない様な希少品まで。




 この時点で最早ステルスの登場の余地は無くなっていた。
 子供達の間では気球が割れ落ちて来るものが何かが専らの話題になっている。
 更に子供達の夢は膨らんでいく。自分達も気球に乗り大空をゆっくりと遊覧してみたいなど。
 真昼を少し過ぎた辺りで、巨大な気球・・と言うより飛行船のようなものが姿を現した。
 飛行船はゆっくり降下してくると、地上付近で子供達を吸い上げる様に船内に案内する。
 飛行船は次第に高度を上げ成層圏から宇宙空間に出て行くが、途中で青い惑星を取り巻いていた人工衛星に接触。
 衛星は機能不全に陥っている。USAは監視衛星攻撃の目的と結論を出し飛行船を攻撃に。
 ところがそこまでになるとステルスでは飛行できない。
 大気が無い辺りを航行するにはロケットやmissileで撃ち落とすしかない。
 ところが、実際に攻撃をしてみたのだが、飛行船にはダメージを与えられず、ゆうゆうと惑星の周囲を。
 地上ではGPSも効果が無くなった結果、車のナビが使用できない。
 至る所で交通事故やら迷い子だらけでsmoothに移動できなく渋滞が発生。
 結果、全ての衛星は機能不全に。
 其れ迄地上を監視する目的が不可能となり、地上の人類も大混乱。
 しかし、考えてみれば昔はそんなものだったのだから同じ様な事になった訳。
 



 やがて、空の色が変わる様な気配がしてき、良くは見えないのだが透明な何かが・・其れも太平洋から大西洋まで覆い尽くしそうな巨大な何か。
 太陽の輝きも其れに反射するような、ベクトル状態になり各種の光線を・・誠に美しい光があちらこちらを目掛け放たれていく。
 相当賑やかで鮮やかな空間のキャンバスが出現をした。
 青い惑星の様相が大きく変わっていく。其れに不思議な事に重力過多の上空気抵抗も無くなり、航空機は飛行できない。
 全世界が凍り付いた様に動きが取れなくなっている。増してや地上にても方角が分かり辛くなってきた。
 そうなると、人類のあらゆるものは地に這いつくばったように、昆虫の様に蠢く事しか出来ない。
 全ての地上軍が動きが鈍くなっていく。そして、まるで吸い上げられていく様にマグマが地上に噴射し始める。




 此処で、時間が止まった。
 青い惑星の凡てのものが動きを止めたまま動かない。
 しかし、其れが本当に時間が止まった訳では無い。
 恐ろしく動きが遅くなっているという事で、マグマが地上の至る所を覆い尽くしていく。
 




 子供達は相変わらず気球を見上げていたが、大きな移動する船の様な物が彼等を乗せてから・・遥かな上空を超えまだ上昇して行く。
 やがて・・青い惑星の真っ赤な姿が見えた時には遥かな宇宙空間を折り畳むように・・光速を遥かに超え・・見えなくなる。
 ブラックホールが見えたのも・・ほんの一瞬であった様に・・窺えたが・・。
 特筆すべきことは・・全ての人類が消滅したのではなく・・北の大地に蠢く影が非常に多く見られた・・。



「世の中に片付くなんてものは殆どありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変るから他にも自分にも解らなくなるだけの事さ。夏目漱石」

「人類は地獄よりも地獄的である。芥川龍之介」

「金は食っていけさえすればいい程度にとり、喜びを自分の仕事の中に求めるようにすべきだ。志賀直哉」


「杜子春の体は岩の上へ、仰向けに倒れていましたが、杜子春の魂は、静に体から抜け出して、地獄の底へ下りて行きました。
 この世と地獄との間には、闇穴道あんけつどうという道があって、そこは年中暗い空に、氷のような冷たい風がぴゅうぴゅう吹き荒すさんでいるのです。杜子春はその風に吹かれながら、暫くは唯木この葉のように、空を漂って行きましたが、やがて森羅殿しんらでんという額がくの懸かかった立派な御殿の前へ出ました。
 御殿の前にいた大勢の鬼は、杜子春の姿を見るや否や、すぐにそのまわりを取り捲まいて、階きざはしの前へ引き据えました。階の上には一人の王様が、まっ黒な袍きものに金の冠をかぶって、いかめしくあたりを睨んでいます。これは兼ねて噂うわさに聞いた、閻魔えんま大王に違いありません。杜子春はどうなることかと思いながら、恐る恐るそこへ跪ひざまずいていました。
「こら、その方は何の為ために、峨眉山の上へ坐っていた?」
 閻魔大王の声は雷らいのように、階の上から響きました。杜子春は早速その問に答えようとしましたが、ふと又思い出したのは、「決して口を利きくな」という鉄冠子の戒いましめの言葉です。そこで唯頭かしらを垂れたまま、唖おしのように黙っていました。すると閻魔大王は、持っていた鉄の笏しゃくを挙げて、顔中の鬚ひげを逆立てながら、
「その方はここをどこだと思う? 速すみやかに返答をすれば好し、さもなければ時を移さず、地獄の呵責かしゃくに遇あわせてくれるぞ」と、威丈高いたけだかに罵ののしりました。
 が、杜子春は相変らず唇くちびる一つ動かしません。それを見た閻魔大王は、すぐに鬼どもの方を向いて、荒々しく何か言いつけると、鬼どもは一度に畏かしこまって、忽たちまち杜子春を引き立てながら、森羅殿の空へ舞い上りました。
 地獄には誰でも知っている通り、剣つるぎの山や血の池の外にも、焦熱地獄という焔ほのおの谷や極寒ごくかん地獄という氷の海が、真暗な空の下に並んでいます。鬼どもはそういう地獄の中へ、代る代る杜子春を抛ほうりこみました。ですから杜子春は無残にも、剣に胸を貫かれるやら、焔に顔を焼かれるやら、舌を抜かれるやら、皮を剥はがれるやら、鉄の杵きねに撞つかれるやら、油の鍋なべに煮られるやら、毒蛇に脳味噌のうみそを吸われるやら、熊鷹くまたかに眼を食われるやら、――その苦しみを数え立てていては、到底際限がない位、あらゆる責苦せめくに遇あわされたのです。それでも杜子春は我慢強く、じっと歯を食いしばったまま、一言ひとことも口を利きませんでした。
 これにはさすがの鬼どもも、呆あきれ返ってしまったのでしょう。もう一度夜よるのような空を飛んで、森羅殿の前へ帰って来ると、さっきの通り杜子春を階きざはしの下に引き据えながら、御殿の上の閻魔大王に、
「この罪人はどうしても、ものを言う気色けしきがございません」と、口を揃そろえて言上ごんじょうしました。
 閻魔大王は眉をひそめて、暫く思案に暮れていましたが、やがて何か思いついたと見えて、
「この男の父母ちちははは、畜生道ちくしょうどうに落ちている筈だから、早速ここへ引き立てて来い」と、一匹の鬼に言いつけました。
 鬼は忽ち風に乗って、地獄の空へ舞い上りました。と思うと、又星が流れるように、二匹の獣けものを駆り立てながら、さっと森羅殿の前へ下りて来ました。その獣を見た杜子春は、驚いたの驚かないのではありません。なぜかといえばそれは二匹とも、形は見すぼらしい痩やせ馬でしたが、顔は夢にも忘れない、死んだ父母の通りでしたから。
「こら、その方は何のために、峨眉山の上に坐っていたか、まっすぐに白状しなければ、今度はその方の父母に痛い思いをさせてやるぞ」
 杜子春はこう嚇おどされても、やはり返答をしずにいました。
「この不孝者めが。その方は父母が苦しんでも、その方さえ都合が好ければ、好いいと思っているのだな」
 閻魔大王は森羅殿も崩くずれる程、凄すさまじい声で喚わめきました。
「打て。鬼ども。その二匹の畜生を、肉も骨も打ち砕いてしまえ」
 鬼どもは一斉に「はっ」と答えながら、鉄の鞭むちをとって立ち上ると、四方八方から二匹の馬を、未練未釈みしゃくなく打ちのめしました。鞭はりゅうりゅうと風を切って、所嫌きらわず雨のように、馬の皮肉を打ち破るのです。馬は、――畜生になった父母は、苦しそうに身を悶もだえて、眼には血の涙を浮べたまま、見てもいられない程嘶いななき立てました。
「どうだ。まだその方は白状しないか」
 閻魔大王は鬼どもに、暫く鞭の手をやめさせて、もう一度杜子春の答を促しました。もうその時には二匹の馬も、肉は裂け骨は砕けて、息も絶え絶えに階きざはしの前へ、倒れ伏していたのです。
 杜子春は必死になって、鉄冠子の言葉を思い出しながら、緊かたく眼をつぶっていました。するとその時彼の耳には、殆ほとんど声とはいえない位、かすかな声が伝わって来ました。
「心配をおしでない。私たちはどうなっても、お前さえ仕合せになれるのなら、それより結構なことはないのだからね。大王が何と仰おっしゃっても、言いたくないことは黙って御出おいで」
 それは確たしかに懐しい、母親の声に違いありません。杜子春は思わず、眼をあきました。そうして馬の一匹が、力なく地上に倒れたまま、悲しそうに彼の顔へ、じっと眼をやっているのを見ました。母親はこんな苦しみの中にも、息子の心を思いやって、鬼どもの鞭に打たれたことを、怨うらむ気色けしきさえも見せないのです。大金持になれば御世辞を言い、貧乏人になれば口も利かない世間の人たちに比べると、何という有難い志でしょう。何という健気けなげな決心でしょう。杜子春は老人の戒めも忘れて、転まろぶようにその側へ走りよると、両手に半死の馬の頸くびを抱いて、はらはらと涙を落しながら、「お母っかさん」と一声を叫びました。…………
芥川龍之介。杜子春第五章より」


「by europe123 test10」
 https://youtu.be/eVMQH16oLQA
 

何処までも拘れば・・そう遠くない結果が訪れる

広大な空間は・・遠くから見つめているが。

何処までも拘れば・・そう遠くない結果が訪れる

あまりに愚かであると思えば、 不思議な事ばかり起きるようになる。 其れが、先見で窺えるものもいるが指一本だけ。 多くの気球に覆われた時・・初めて気が付いても時すでに遅し・・。 動物から少しだけしか進化していない者達に・・予言者はいとも簡単に・・降りかかる事が見えている事になる・・。

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-02-13

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