奇想詩『義眼を拾った女』
わたし このまえ
目を拾ったのよ
そう 目 目ん玉よ
コンビニでタバコ買って帰ってるときよ
え? ああ そう じゃあ 義眼だわ
で それをさ
めちゃくちゃキレイに洗ってから
自分のアソコに入れてみたらさ
これがけっこうフィットしてさ
なんかイイ感じなのよ
わたし 子どものころから
タンポン入れてるときの感覚が
どうしようもないくらい好きでさ
生理でもないのに入れてたりしたのよ
けどね
その義眼はタンポンの比じゃないくらいピッタリなのよ
大きすぎず 小さすぎず
〝最初から入ってました〟
っていうくらい違和感がないのよ
それでね このまえ 義眼を入れたまんま
コンビニでタバコ買って帰ってるときにさ
変な男に声をかけられたのよ
真っ黒の帽子に真っ黒のスーツで
真っ黒のグラサンかけててさ
なんかジョン・ベルーシみたいな男だったのよ
それで そいつなんて言ったと思う?
「それは私の義眼です」
って私の下半身を見ながらそう言ったのよ
それからグラサンを外して
ぽっかり穴の空いた右眼を見せてきたの
気味が悪くて逃げようと思ったんだけど
足がすくんじゃってさ
しょーがないからそいつの目の前で
義眼をアソコから取り出してやったわよ
そしたらそいつがなんのためらいもなく
義眼を自分の右眼に嵌め込んだの
その日以来さ
まだ私の中に義眼が入ってるような感覚が残ってて
あのベルーシみたいな男にずっと
自分の内側を覗かれてるような気がするのよね
こんなのってほんと参っちゃうわよ
だから あんた
義眼なんて
絶対拾っちゃだめよ
奇想詩『義眼を拾った女』