知らないもの⑦
こいつはどMなのか、そう思ってしまう。
「いいか、お前は御子神にとって、そんなに価値のない人間だ。
だから、俺やお前は御子神のだめなら死んで当然なんだよ。」
そう冷たく言い放たれた言葉。
「あ・・・」
「良?」
「あ、妃雪さん、お久しぶりです。」
「そんな、敬語なんて、よして。」
にこりと雪妃ちゃんは笑う。
「よう、妃雪。顔色随分いいなあ。」
咲紀くんはにかっと笑った。
ほんとに綺麗な顔立ちだ。
「えぇ、咲紀のおかげよ。」
咲紀のおかげって。
「あまり彩奈ちゃんをいじめないでくださいね。私の大切なお友達なんですから。」
「けっ」
その言葉を聞いた咲紀くんが悪態をつく。
「まぁ、咲紀ったら!」
そういいクスクスと笑った。
「はぁ、そうそう、夏生、少しお話があるの。いいかしら?」
「あぁ、いいよ。」
2人は見えなくなる所まで歩いて行った。
「さっきの続きな、御子神には代々の言いつけがあるんだよ、それを俺らは全て暗記している。
御子神の者、護り者が全て他界したものなら、自害するべし。
御子神の者、生き抜ければ、都路を嫁・婿にとるべし。
御子神の者、自身の力を自身に使ってはならぬ。」
「御子神の者、巫を側に置き知能を与えるべし。
御子神の者、月神は遠へ置き神体を与えるべし。
御子神の者、御影を見つめ地位を与えるべし。」
「それって、どうゆう、」
「御子神の狐血を継ぐ者は、護り人が全滅してしまったら、有無問わず自殺しろ。
もし、長く生きれれば、都路の狐血を継ぐ者を、嫁または婿にとれ。
自身の神聖な力は絶対に自分の有益に使ってはいけない。
巫の狐血を継ぐ者は近くで見護られ、それと引き換えに知識を与えること。
月神の狐血を継ぐ者は遠くで見護られ、それと引き換えに類稀になるであろう身体能力を与えよ。
御影の狐血を継ぐ者は真正面より見護られ、それと引き換えにそのものの生きやすさを与えよ。」
改めて聞くと結構残酷なことも言い伝えられているようだ。
私たちが全員死んでしまったら、雪妃ちゃんはなんの関係もなしに死んでしまわなければいけないということだよね。
何もしていないのに、この家系に生まれたばかりに。
「これ以外にももっとたくさんある。これから先ははっきり言うとかなりきついものだ。
きっとそれを全て読み終えた時、お前はやっとあいつの凄さが分かるだろうな。」
知らないもの⑦