昨今のたそがれ

昨今のたそがれ

昨今の世界は?

 正に好景気が窺えていた時代にまさかのバブルの崩壊が発生した。
 金融機関や信販会社では思い掛けない不動産価額の下落に対処しようのない既存の契約が多く見られた。
 戸建てを建てたりマンションを購入し、そのローンを組んでいた契約者達はショックを隠せない。
 一億円で購入したばかりの邸宅が、あっという間に6000万に下落。
 ローンを組み担保として其の不動産に抵当権を設定していたのだが、金融機関等も担保の不足分の保全を懸念。
 ところが、契約者が其の物件以外に不動産を所有しているという事は先ず有り得ない。
 退職金を資金としてつぎ込んだ者や、新婚の若者夫婦は何れ価額が上がるだろうと期待し、利殖として購入したというケースもあった。
 ローンの返済を始めたばかりの契約者にとっては大きなダメージとなり、借金を増やす為に購入したことになる。
 此の国の経済上且つてない不況が更に、此れによってどん底まで拡がった事になる。
 不動産担保ローンを拡大しようとし、未だ決裁が下りていない会社は逆にラッキーと言える。
 其れでも、始めなくて良かったと幹部は胸を撫でおろした。
 不動産の下落は、新規購入者だけではなく、以前から所有していた家屋等の所有者にも打撃を与える事となった。
 住んでいる不動産の価額が下落した事により、そろそろ老朽化したから建て替えをしようと考えていた者も路頭に迷う。
 此の様な事は十年や二十年、あるいはそれ以上経ってから起きるからと油断をしていた者もいた。
 
国民の被害は相当なものだった様だ。
 その点、賃貸物件に住んでいた者達にとっては影響は無く、何れ持ち家を購入しようと考えていた者達は崖っぷち寸前で崖下に落ちるのを防げたことになる。
 明暗は大きく分かれ庶民や事業主に災いを齎す事になる。




 国民がそんな事をすっかり忘れている時代が到来した。
 長く続いた好景気に平和。世は其れに浮かれ過ぎとは決して思えないそんな時代が長く続く。
 当然、過去を知らない世代の連中は予期もしていなく、給与は上がっていくし、子供達も次第に小学校から中学校・大学と進み夢のような世界が開けると考えていた。
 経験した事が無いのだから、噂で聞く程度だけで気にも止めないのは当たり前。
 永久に好景気が続くものと考えてもおかしくはない。来たる時代がバラ色をしている様に思えても・・。
 


 其れがまさかの出来事で、安物のカーテンのように無残にも引き裂かれた。
 不況で賃金のベースアップをしたところで物価高の速度にはついていけないから、実質賃金は下がる。
 其のうち、企業の利益が予想外に減少した事により、人減らしが始まる。
 其処に、新たに学校を卒業し就職をと考えていた若者には青天の霹靂だった。
 就職先が少なくなり、非常勤労働者は真っ先に人員整理をされたが、法律上正規雇用社員の給料を減らす事は出来ず、賞与の減少だけに納まる。
 其れが、企業の経営が悪化してき倒産となれば事情は異なって来る。
 全ての労働者は、次の就職先を求め彼是と職を探して回った。
 当然ながらハローワークには大勢の人類が仕事探しにと訪れごった返している。
 且つての就職難を彷彿とさせる光景が至る所で見られる。
 第一次オイルショック。第二次オイルショック。バブルの崩壊・リーマンショック。
 しかし、今回の世界的な不況の原因は、且つての大東亜戦争の十年前にUSAのウォール街で起きた株の暴落。
 其れにも似たような・・異なるような・・。




 というのも、そもそもは二国の争いが人々の話題をさらった。
 其れだけなら他国に被害が及ぶ事は無く、例えばUSAが二国の間に入り仲裁をすれば、或る程度の損害だけで済んでいたのかも知れない。
 USAは其れと逆の事を世界各国に指示をした。制裁・支援で、兵器の供与や金銭の提供が其れにあたる。
 世界の人類は、其れは正義の為に行われるのだからと、USAの指示通りに従った。
 其処で、まさかの大逆転が起きた。大国が逆制裁を始めた。
 大東亜戦争を知る者にとっては、また同じ事を?と言いたいだろうが、今の世代はその歴史を知ろうともしなかった。
 あの時、世界中を相手にして戦ったのはITALYを除けばNazisGermanyと此の国。
 二国の技術力は世界でもトップだった。ヒトラーのプリパガンダに騙されながらも持てる技術力をフルに活用した。
 GermanyがEurope全体を我が物とし、アフリカやロシア迄侵攻をする。
 片や。此の国は大東亜共栄圏という広大なエリアに軍を侵攻させた。
 北は傀儡国である満州国から朝鮮半島を下り、東南アジア諸国を一掃し、南はUSAの西海岸やNew Zealandの辺りまで共栄圏を拡げた。
 ところが、New Zealandの近くのミッドウエイでの海戦が行われた時、此の国は空母を何隻も失った。
 其処からが敗退の一途であった。アッツ島玉砕・兎に角玉砕の文字が立て続けに並んだ。
 後に此れを分析した際、始めは「空軍が無く、制空権を奪われた事」「大鑑主義」に力を注いだ事が原因だと言われたのだが・・。
 実は違った。
 大国というものの特徴は「持てる国」であり「持たざる国」とは好対照。
 では、一体何を持っているというのか?
 「資源」「食料」これがその答えだ。
 島国やEurope諸国のように、その二つが持たざる国では、所詮大国には敵う訳が無かった・・と後から気が付く結果に至る。
 ところが、その反省が現在全く生かされずに同じことの繰り返しに至った。
 USAやその指示に従った西側諸国は既に世代が変わっていたから且つての反省をする余地も無く、失念をしていた。
 USAを初めとする西側諸国の判断では年末までに終焉を迎えるだろうが・・早計だとしか言いようがない。
 大国が逆制裁に出ると、世界中が不況に陥った。原則である、大国は「資源」「食料」に事欠かない。を失念し、既にそれを知る世代から知らない世代に変わっていた。
 其処で、USAは今度は仲裁に入るのかとも思われたのだが、全く逆の増々制裁・支援を世界中に指示した。
 兵器の供与が増えtank・Airplain・missileなどだが、果たしてその効果があるのかどうかとなれば疑わしい。
 というのも、大国はUSAに勝る核missileを所持している。
 恐らく、核戦争になっても完全に潰される事は無いと思われる。
 逆に核を持っているという事は、降伏などする訳がない事になり、USAを初めとする西側諸国の思惑は嵌らないと考える方が正しいだろう。
 其処へ持って来、資源や食料には事欠かなく、Indiaへ石油やChinaにも石油など。逆にイランやChinaから壁や弾丸を供与されている。
 其れに世界の大国と言えば三つで、東側諸国が二つを占める。
 何も業界ではないのだから人気争いは全く必要が無く、実力勝負という事が最後の決め手となる。



 さて、此の辺りで今後の景況感となるのだが、此の国は物価高に増税で不況になり十年程度続きそう。
 世界に目を向ければ、制裁をやめない限り、逆制裁で増々不況が進んで行く事になる。
 増してや今の世代は、知能指数が平均105とかで、長文を読まず、漫画animationにゲームが主食。
 其れにスポーツが人気があるのだが、サッカーの試合など見ていると、サポーターが問題を起こしたりと、感情に頼るのが人類の特徴と言える。
 戦争もゲーム感覚で、小国を応援している者も結構いそうな気がする。
 此の国の二年後くらいの不動産価額下落に災害の恐れ、其れに世界不況と重なれば、且つての時代以上に混沌を齎す事になるだろう。
 



 おかしな時代と反する様な好天気が続いているが、夜空に浮かんでいる衛星・月の色が赤みがかって見えるのは、何かを象徴しているかのようだ・・。



「糸子さん」と男は突然優しい調子になった。
「なに」と糸子は打ち解けている。
「藤尾のような女は今の世に有過ぎて困るんですよ。気をつけないと危あぶない」
 女は依然として、肉余る瞼まぶたを二重ふたえに、愛嬌あいきょうの露を大きな眸ひとみの上に滴したたらしているのみである。危ないという気色けしきは影さえ見えぬ。
「藤尾が一人出ると昨夕ゆうべのような女を五人殺します」
 鮮あざやかな眸に滴るものはぱっと散った。表情はとっさに変る。殺すと云う言葉はさほどに怖おそろしい。――その他の意味は無論分らぬ。
「あなたはそれで結構だ。動くと変ります。動いてはいけない」
「動くと?」
「ええ、恋をすると変ります」
 女は咽喉のどから飛び出しそうなものを、ぐっと嚥のみ下くだした。顔は真赤まっかになる。
「嫁に行くと変ります」
 女は俯向うつむいた。
「それで結構だ。嫁に行くのはもったいない」
 可愛らしい二重瞼がつづけ様に二三度またたいた。結んだ口元をちょろちょろと雨竜あまりょうの影が渡る。鷺草さぎそうとも菫すみれとも片づかぬ花は依然として春を乏ともしく咲いている。夏目漱石。虞美人草より」



「舞踏室の中にも至る所に、菊の花が美しく咲き乱れてゐた。さうして又至る所に、相手を待つてゐる婦人たちのレエスや花や象牙の扇が、爽かな香水の匂の中に、音のない波の如く動いてゐた。明子はすぐに父親と分れて、その綺羅きらびやかな婦人たちの或一団と一しよになつた。それは皆同じやうな水色や薔薇色の舞踏服を着た、同年輩らしい少女であつた。彼等は彼女を迎へると、小鳥のやうにさざめき立つて、口口に今夜の彼女の姿が美しい事を褒め立てたりした。
 が、彼女がその仲間へはひるや否や、見知らない仏蘭西フランスの海軍将校が、何処からか静に歩み寄つた。さうして両腕を垂れた儘、叮嚀に日本風の会釈ゑしやくをした。明子はかすかながら血の色が、頬に上つて来るのを意識した。しかしその会釈が何を意味するかは、問ふまでもなく明かだつた。だから彼女は手にしてゐた扇を預つて貰ふべく、隣に立つてゐる水色の舞踏服の令嬢をふり返つた。と同時に意外にも、その仏蘭西の海軍将校は、ちらりと頬に微笑の影を浮べながら、異様なアクサンを帯びた日本語で、はつきりと彼女にかう云つた。
「一しよに踊つては下さいませんか。」
 間もなく明子は、その仏蘭西の海軍将校と、「美しく青きダニウブ」のヴアルスを踊つてゐた。相手の将校は、頬の日に焼けた、眼鼻立ちの鮮あざやかな、濃い口髭のある男であつた。彼女はその相手の軍服の左の肩に、長い手袋を嵌はめた手を預くべく、余りに背が低かつた。が、場馴れてゐる海軍将校は、巧に彼女をあしらつて、軽々と群集の中を舞ひ歩いた。さうして時々彼女の耳に、愛想の好い仏蘭西語の御世辞さへも囁ささやいた。
 彼女はその優しい言葉に、恥しさうな微笑を酬いながら、時々彼等が踊つてゐる舞踏室の周囲へ眼を投げた。皇室の御紋章を染め抜いた紫縮緬ちりめんの幔幕まんまくや、爪を張つた蒼竜さうりゆうが身をうねらせてゐる支那の国旗の下には、花瓶々々の菊の花が、或は軽快な銀色を、或は陰欝いんうつな金色を、人波の間にちらつかせてゐた。しかもその人波は、三鞭酒シヤンパアニユのやうに湧き立つて来る、花々しい独逸ドイツ管絃楽の旋律の風に煽られて、暫くも目まぐるしい動揺を止めなかつた。明子はやはり踊つてゐる友達の一人と眼を合はすと、互に愉快さうな頷うなづきを忙しい中に送り合つた。が、その瞬間には、もう違つた踊り手が、まるで大きな蛾がが狂ふやうに、何処からか其処へ現れてゐた。芥川龍之介。舞踏会より」



「山の手線の電車に跳ね飛ばされて怪我をした、其後養生に、一人で但馬の城崎温泉へ出掛けた。背中の傷が脊椎カリエスになれば致命傷になりかねないが、そんな事はあるまいと医者に言われた。二三年で出なければ後は心配はいらない、兎に角要心は肝心だからといわれて、それで来た。三週間以上――我慢出来たら五週間位居たいものだと考えて来た。志賀直哉。城之崎にてより」




 「by europe123 orbit.」
 https://youtu.be/TibQnxeGdPc
 
 

昨今のたそがれ

一体何がどうなっているのか?

昨今のたそがれ

昭和の世代にはいとも無く解ける。 一体、何が起き、其れがどういう意味で? 結局どうなるのか? 其れが分かるのか・・は、広大な宇宙の文明だけなのか? そうではないだろう? 人類にも・・少しは常識というものがあるのだろうに・・?

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-02-06

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