邦題 広大な宇宙の生命体より
光の実地調査から始まった出来事。
Ex vita formae in mundo vasto
From life forms in the vast universe
邦題 広大な宇宙の生命体より(旧Title Le mécanisme du grand univers et de l'important petit univers 邦題 大きな宇宙と大事な小さな宇宙の仕組み)
社内で未決済ケースを空にすると、都内直帰と表示を変えElevatorに。
降りて来た篭には加賀京子が・・。
背文字は「S」新宿だ。片手を上げ了解を・・。
京子は人事部長だからこの度の異動には詳しい筈だ。同じ大学のミスコンで優勝をしたのだが、準優勝の宮野百合に業界入りを譲ったという経歴の持ち主。
その理由はいろいろあるが、二人で同じ会社に入社する事に決めたのが最も大きい。
二人の詳しい関係については社内でも誰一人知らない。契約先を回り最後の家で仕事を終えた。
広い邸宅で裏門から出た方が最寄り駅に近いような気がした。
広く芝が植えられているが、池や花壇も備わっている。池の前に和服姿の女性が立っている。
鯉に餌でもやっているのかと思ったのだが、近付くに連れ何か違和感を感じる。
女性は時々空を見ているが、光も思わず同じ空を見上げた。
薄らとだが、何かが浮かんでいるような気がした。雲なら流れていく筈だが、透明に近く大きな球形を描いているような・・。
肉眼で見るのは難しいようで、何も見えなくなった。
其の邸宅の契約は大きな工業機械のリースだった。
通常はpamphletがあり、こういうものだと納得させてから契約の締結に至る。
ところが、長年契約審査や管理をやっている光でも聞いた事のないメーカーの物のようで、我ながら勉強不足だと思う。
日進月歩では無いが、次々に新しいものが開発される。しかし、此処のところの構造不況などで経済界も落ち込んだまま。
其れなのに、新規での発注をすると言う事は相当優れた製品か何かなのかと思う。
社の連中や、似たような業界筋にも聞いてみたが、何処も其れが何であるかは分からないようだ。
唯一、社内の先端メカに詳しいセクションでも、何か最先端の・・まあ、推測だが・・そんなあやふやな意見を聞かれたのみ。
大体、社が請け負うようなlevelではない最先端技術のようであるから通常は社に縁が無い筈。
其れにしても、ちゃんとしたパンフや説明書が無ければ審査をしようがない。
金額の設定にしても果たして妥当かどうかも分からないのでは基準が無い事になる。
其処で、本日はペンディングという事で、資料が揃ったら連絡をして下さいと言う事だった。
この邸宅は、周囲は高級住宅だらけでだが、この邸宅は少し変わっている。
邸宅の構造も変わっているが、屋根の代わりに巨大な移動式の・・分割可能な金属が使用されている。
其の金属が何なのかは分からず、現存の金属では無く受注で生産したようなものに見える。
何もかもが未知だらけでは審査にもかからないとも思えるし、おかしな構造であれば、何か契約不履行が生じた場合に、換価できない事になる。
こういう案件は本来受けるものでは無いと言うのが原則。
其の邸宅の庭に見られる女性の姿が更に何かを頭に浮かべさせる。
おそらく契約は難しいだろうが、記録だけ残し以後の参考にしようと思った。
女性の背後を通過する時、女性が振り向きざま声を掛ける。
「・・何か難しそうな様子・・?」
着物が似合う美しい女性だが、今時珍しい程の柄と言い、値段は随分高価なのか。
光は、彼女に少しは何か言葉を掛けなければと思ったのだが・・。
「何か見えますか?邸宅の上からも見えそうですが?」
まるで、誰かにそう言わされたような、自らの口をついて出た言葉には意思が反映されていない。
女性は笑みを浮かべると・・。
「望遠鏡、と言ったらおかしいかも知れませんが。あの上からはそんなもので充分。其れだけでは無いのですが、貴方に見えました?」
光は女性の言わんとするところがよく分からない。天体望遠鏡を設置してある家は他にもあるが、何か其れとも少し違うような気がする。
其れに、見えますかと言われても一体何が見えますかなのか?
駅に向かい歩きだそうとした光。女性が、お気をつけて、と確かそんなふうに聞こえたのだが、振り返れば彼女の視線は庭に注がれたまま。
光は社に連絡を。何か用件でも?自分は直帰するからと。
部員の女性が受話器の向こうで大きな溜息を漏らしたような気がした。
京子との待ち合わせ場所である新宿まで車内の人に。車窓から見える景色に変わりは無いが、一つ。
空を覆っている雲が異常に速く流れ、夕刻の闇を引き連れて来たようだ。
早くも星々が流れ出しているようだが、単なる錯覚だろう?そんな気がする。
新宿の高層ホテルには光が先に着き京子を待った。 Elevatorのドアが開き、その内部の灯りを背にし影になっている京子が此方に。
窓際の席にテーブルを挟み座る。オーダーは大抵何時も同じものになる。
先ずはビールで乾杯をし気を落ち着けた光が。
「何か大きな異動でもあるの?」
京子は頷きながら。
「貴方よく知っているわね?役員がかなり交わりそうなの。其れが、大手の銀行からの出向だそうで、でも四季報にも掲載が無い、出向元でもそんな事が囁かれているそうよ?」
光はワイングラスを手元に置くと。
「経済界で何かあったのか?其れほど大きなニュースは聞いていないが、ひょっとしたら大規模な再建でも行われるのかも?」
京子の話。
「財界だけでなく業界でもスタッフや局の幹部が変わったりしているって、百合からの話ではね?」
大学の同期で新聞記者をやっている者がいる。山野哲。丁度彼からメールが光宛てに届いている。
「あらゆる業界や、特定の海外諸国でも組織の入れ替わりがあるそうだ。理由についてはよく分からないが?」
京子が念を押すように哲に電話をした。
「何か随分大胆な構造変革のようだけれど、其れに関する特ダネは無いの?例えば、予期していなかった天災が起きるとか?」
哲からは、何か掴めたら又電話をする、に留まった。
光。
「いや、実はおかしな事と言えば今日実調した契約先何だが、実におかしな邸宅でもあるし何より契約の物件の詳細が良く分からないって前代未聞?尤も契約については表向きだけで、実際は必要無いのかも知れないという?其れが、其の邸宅の庭で見掛けた女性。空を見上げているのに出くわしたんだが、一体何を見ているのか?その後車窓からも?」
京子は同じ法学部を出ているが、成績優秀なだけでなく幅広い知識を持っている。
其れも業界に行かなかった理由の一つだ。強いて加えれば光と同じ会社に入る事。
「ねえ?先日社員で頭痛がするからってMRIを受けたものがいたんだけれど、何も異常がないって?先端医学でも各種の画像でも原因が分からない。ああ、此れは信濃町の附属病院でも言われている事だけれどね、人類の医学は7割以上仮説の上に成り立っているのは周知の事実って」
光はワインを飲み干すと。
「医学だけではないよ。科学や薬学だって全て仮説じゃない。つまり空想の理論の世界という事。宇宙物理にしても、実際に宇宙で実証をした訳でもないのにやれ宇宙がどうとか?blackholeがとか、青い惑星と同じ様な惑星、NASAなど僅かにハビタブルゾーンなど称しているが、手探りも出来ない範疇で一体何が分かると思う?その場で見たのでなければ、全く宛にはならないと思うがね?僕の審査にしても現実に手に取るように目で見たものでなければ契約には至らないから。そういう意味では医学や科学などより堅実だと言えそうだね?」
二人の話は尽きないのだが、其れは、二人の関係にしても分からないのだから?と言う事も言える。
「若し、の話だけれど、巨大な惑星が突然空間から現れるなどになれば、勿論此の惑星ではどうする事も出来ないが。遥かに進化した文明が存在しているとなれば、重大な危機をどうやって防ぐのだろう?」
突然、光がおかしな発言をしたのは、案外あの邸宅の件があったからかも知れない。
仮に、巨大惑星が接近しているとでもなれば、大変な事になる。
防ぐ術(すべ)?すれ違えば問題はないのだとしても、其れでも異常な重力や引力の乱れ・質量の常識が崩れるなど宇宙空間・少なくとも太陽系程度は大きな影響を受けざるを得ないのかも知れない。
京子が。
「若し、すれ違いでなく衝突すれば青い惑星の損害のみだけでなく?当然、衝突を避けさせるためには、双方の惑星を跡形もなく消滅させる、その方が自然なんじゃない?そうすれば宇宙全体に対する影響は多重宇宙や多次元空間にまでも及ばないと思うんだけれど?その場合、太陽系程度までで宇宙空間に与える影響を防げるのかも知れないわね?太陽系から外の銀河にまで影響が及べば、宇宙全体に構造上のしわ寄せがくる。太陽(恒星)と同じ様なものは太陽系の外に幾つもあるのだけれど、其れも何かを暗示しているようね。広大で常に拡がり続けている宇宙。其れも実際には一重では無く多重な宇宙の存在が証明されて・・なんて・・面白いと思わない?」
二人の話は此処で終わるが、実際に仮説だらけの人類の知力では、何が起きようと対処のしようも無いばかりか、今までの全ての仮説に基づいていた宇宙物理などの理論が殆ど間違っているなどは事実。
光は京子と並んで歩きながら。
「大体、社内で二人の関係すら分からないんだから。まあ、何が確実とも言えない訳。何せ君が人事の元締めでは、二人に関する情報など開示されず、開示されたとし、惑星の出会い程度の驚愕の事実になる訳だから、今のところそんな事でと済ませれば良いというだけ」
口付けもしない二人だが、敢えて必要でもない。
其の事を知っているのは・・京子のお陰で業界に入れた宮野百合くらいだが、二人の無二の親友?実は其れだけでもないのだが?二人の事をよく知っている訳。
スマフォが振動した。
噂の百合からだ。
「ちょっと急だけれど、此れからお宅にお邪魔してもいいかしら?マネージャーに送って貰うから。ビッグニュースなのね。今制作中の物語、私達がmodel?それでいろいろありそうなんだ?まあ、人類のlevelでは何も分からないに等しい事になるわね?」
更にスマフォ。
「哲だけれど、ビッグニュース・・あれ?もう知っているの?まあいいや、此れから・・何?百合も来るの・・そりゃいいじゃない・・?」
京子は光の顔に目を遣りながら。
「そうね、彼も同じだって事忘れてた。こりゃあ・・ニュースもいいけれど・・皆・・当分控えめにという事かしら?まあいいのではない?学友なんだから・・連中・・うちの合鍵も持っているし・・ねえ?」
二人の笑い声は五感では感じられないのだが・・ディレイのように新宿界隈の空間に反響し続けていた・・。
「色を見るものは形を見ず、形を見るものは質を見ず。夏目漱石」
「懐疑主義者もひとつの信念の上に、疑うことを疑はぬという信念の上に立つ者である。 人類の世は地獄よりも地獄的である。芥川龍之介」
「取らねばならぬ経過は泣いても笑っても取るのが本統だ。志賀直哉」
「by europe123 」
https://youtu.be/N6mykOAclrI
邦題 広大な宇宙の生命体より
知的レベルの相違。