償い

 陽にみずみしく照る 混沌に清んだ小河が
 畝りうねってひとけなき森の奥につづいている
 わたしはその 忘れられた畔に一人佇んで
 罪にいたむ掌 ひらいては閉じをし見つめている

 わたしは世界との結びをもたないと
 そのいたみを伝えるため ひとを疵つけてきた
 わたしは助けてくれといいたかったのだが
 その惨めさすらわたしは認められず いま此処にある

 有難いことに この期に及んでもわたしの元には
 小河を伝って無言のお便りとしての葉舟がとどくのだ
 そのかわゆらしい舟を丁寧にひらき あたたかみに触れ涙し
 また誰かの為になると希って わたしの結い方で綴じる

 わたしに結われた 久遠の生命の流れがとおくへ棚引き
 誰かの為になると 希みの歌を込めたそれ 遥かへ往く
 このほかに わたしは罪の償いをすることができぬのか
 ひたむきに わたしは命の営みの流れに淋しいわたしを侍らせる

償い

償い

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-02-05

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