人類が喜ぶもの

人類が喜ぶもの

雄二が思いがけずアプリで経験した事。


 最近の人類の働き方は、死ぬまで働くが多くなってきている。
 其れも女性の間では働いていない男性とは結婚をしたく無いとの心理的な変化が生じてきている。
 そんな折、ひょんな事から格好だけでも出会い系アプリに登録をしてくれと頼まれた。
 そう言うご時世で何の反応も無いのは至極当然。
 其れも働く者の年齢は限りない様。家を持っていようが何だろうが働く事が生甲斐のようなのは預金が無い?
 そんな事が流行っているのだから尾上雄二は幾ら頼まれたとは言え人類の女性は苦手。
 若井夕子と共に女優の三田綾子が撮影中のスタジオを訪れる事にした。
 というのも、実は嫌々頼まれて入会したアプリでいきなりリクエストが送信されてきた。
 勿論人類の異国の女性なのだが、普通の女性では無く三枚の写真はどう見ても素人には見えない。
 年齢は27歳・・雄二とは20も年齢差がある。しかも、衣装からしタレントとしか思えない。
 綾子が撮影を終え二人の待つTV局内のカフェに。
「此れなんだけれど・・?」
 夕子も同じ文明の生命体であるから、其れがなんであるのかはある程度は理解している様なのだが。
 綾子は業界人だからと、同じプロの目で見て貰おうという事。
 三枚の写真を見ていた綾子が。
「そうね、間違い無くこの衣装は街で手に入るようなものでは無いわ。衣装係が揃えるようなmodel・タレント用のモノとも少し違う。女優のタイプでは無いし、宝塚歌劇団で使用しそうな・・勿論娘役で」
 娘役のタカラジェンヌたちは、日本の女性アイドルのように女の子らしいふっくらとした印象ではなく、海外のお人形のように美しい細身のスタイルを維持している。この魅力も、宝塚歌劇団の娘役が美人と言われている一番の理由。
 宝塚歌劇団は特徴的なメイクの影響で、見た目が苦手という人も少なくはない。
 しかし、娘役たちの細身のスタイルに関しては、宝塚歌劇団に否定的な女性も美人だと認めざるを得ないだろう。
「それにしても何かおかしいわね。宝塚は躾も厳しい事で有名・・雄二、何か餌撒かなかった?」
「何?その餌って?」
「いや・・其の人類が好む物とか」




 三人はマネージャーの車で花街の茶店に向かう。
 何時も通り奥座敷に茶店の主人の手料理やら飲み物を並べ夕餉が始まる。
 先程までの話を続けていると、漱石や芥川が志賀直哉も連れて来た。
 勿論花街の芸者達は勢揃い。アトリエの画伯に大物写真家も顔を出し賑やかな会話が飛びかっている。
「三千万程・・家に置いてあったものをアプリの写真として載せたけれど・・?」
 綾子と夕子が同時に。
「其れよ。私達にとっては価値が無い者でも人類には・・結構必要なものだから・・」
「・・まあ、それにしても・・此れで取り敢えず謎は解けたじゃない?」
 後は、何時もの夕餉が盛り上がっているのだが、奥座敷から見える庭には既にオレンジを惑星の彼方此方に振り撒くようにしていた夕陽も東に落ちて行き、入れ替わりにオリオン座、ペテルギウス、シリウス、プロキオンで結ぶ冬の大三角形など、1等星が星座を並べた冬の夜空が自慢気に現れた。
 漱石が三人の話を聞いていたのか。
「三毛子はこの近辺で有名な美貌家びぼうかである。吾輩は猫には相違ないが物の情なさけは一通り心得ている。うちで主人の苦にがい顔を見たり、御三の険突けんつくを食って気分が勝すぐれん時は必ずこの異性の朋友ほうゆうの許もとを訪問していろいろな話をする。すると、いつの間まにか心が晴々せいせいして今までの心配も苦労も何もかも忘れて、生れ変ったような心持になる。女性の影響というものは実に莫大ばくだいなものだ。杉垣の隙から、いるかなと思って見渡すと、三毛子は正月だから首輪の新しいのをして行儀よく椽側えんがわに坐っている。その背中の丸さ加減が言うに言われんほど美しい。曲線の美を尽している。尻尾しっぽの曲がり加減、足の折り具合、物憂ものうげに耳をちょいちょい振る景色けしきなども到底とうてい形容が出来ん。ことによく日の当る所に暖かそうに、品ひんよく控ひかえているものだから、身体は静粛端正の態度を有するにも関らず、天鵞毛びろうどを欺あざむくほどの滑なめらかな満身の毛は春の光りを反射して風なきにむらむらと微動するごとくに思われる。吾輩はしばらく恍惚こうこつとして眺ながめていたが、やがて我に帰ると同時に、低い声で「三毛子さん三毛子さん」といいながら前足で招いた。三毛子は「あら先生」と椽を下りる。赤い首輪につけた鈴がちゃらちゃらと鳴る。おや正月になったら鈴までつけたな、どうもいい音ねだと感心している間まに、吾輩の傍そばに来て「あら先生、おめでとう」と尾を左ひだりへ振る。吾等猫属ねこぞく間で御互に挨拶をするときには尾を棒のごとく立てて、それを左りへぐるりと廻すのである。町内で吾輩を先生と呼んでくれるのはこの三毛子ばかりである。夏目漱石・吾輩は猫である第二章中段」


「古人は神の前に懺悔した。
今人は社会の前に懺悔している。芥川竜之介」


「そして、Aは鮨屋に入って先に勘定を済ませ、「私は先へ帰るから、充分食べておくれ」と言って逃げるように去って行きました。
 仙吉はそこで3人前の鮨を食べます。店の人は、「お代はまだもらっているから、また来てください」と言いました。
 一方で、Aは変に淋しい気持ちでいました。人を喜ばせるのは悪いことではないのに、Aは悪事を働いたあとのような後味の悪さを感じました。
 そして、小僧は悲しい時や苦しい時にAのことを考えました。小僧は、いつかまたAが思わぬ恵みを与えてくれると信じていました。
 作者は、ここで筆をおくことにしました。実は、作者は「小僧がAの書いた住所をたずねたとき、そこには家ではなくて小さな稲荷の祠(ほこら)があった」と書こうとしました。しかし、それでは小僧がかわいそうなので、ここで書くのをやめたのです。志賀直哉・小僧の神様」    
 


 「by europe123」
 https://youtu.be/N6mykOAclrI

人類が喜ぶもの

随分若い女性からいいねが来た。

人類が喜ぶもの

その理由は・・ひょっとしたら・・人類が好きなものでしょう? 好きなものとは、三千万?

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-30

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