砅らえ 藤月犀 憧憬と実存とが絶たれ その手つきがねじを巻く 川底に日々が堆積してつま先で触れるようになるまで 岩に張り付いた貝が息をして 殻のらせんに閉じ込めた、音が、遠のく先に 砅(わた)り 錐状に降りていく 対岸の燦くほうへ、しずかな朝を憶い出す 砅らえ