気球

本物の気球を見たことがない
寒いから、ってだけの理由でバイトをサボった日
ぼくは一日中テレビを見ていた
なんとかフェスティバルとかいうものの特集で
たくさんの気球を見た
誰でも追いつけそうな速度で
誰にも届かないところまで
上昇していく気球たち
いや、映像だからゆっくりに見えるだけで
ほんとはそこそこの速さで飛んでいるのかもしれない
いいなあ気球
人類は楽しいこともするんだなあ
テレビを消すと真っ黒な画面にぼくの姿が映った
ぼくの首から上は気球にそっくりだった
そこそこの速さで上昇していくぼくの頭部
想像してみてほしい
ぼくの頬にどんなスポンサーのロゴが付いているのかを

気球

気球

詩誌『月刊ココア共和国 2023年2月号』(電子版)に佳作として掲載された詩作品です。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-28

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