名無しの権兵衛/新作短歌

 この歳に なりても何を得たのやら
 問えどわからぬ 名無しの権兵衛

 指触れて 消える淡雪変わらねど
 はしゃぐ子等見て 老いのため息

 同じ種の 一桁数の者たちに
 数十億の人操られ

 指だけを 引いても人は死にはせぬ
 握る銃の弾が殺せり

 知ってるさ 僕の心は若くても
 君の瞳に映る姿を

 わが友は 寒風の中持ち来る
 里の土産の その温かさ

 本当にしんどかったと隣人は
 病の後に 声つまらせて

 圧政や戦火や飢えに苦しむを
 見ずに暮らせる土地は何処に

 降る雪は太古の昔に変わらねど 
 今や地上は 人に溢れて

 今年こそと 思えどすでに我はまた
 三日坊主の身を持て余すなり

名無しの権兵衛/新作短歌

名無しの権兵衛/新作短歌

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-25

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted