落日

私が東京で暮らしている間、地元で色んな店が閉店していた。
昔若かった人が齢を取り、若い人は外部からはなかなか来ないので(移住の意味で。観光はあっても。)そういった町はそうなっていくものなのだろう。それを劇的にガッカリしたりはしない。
かつてよく行っていた美味くも不味くもないケーキ屋があって、そこのチーズケーキをよく食べていた。でもそれから色んな店のチーズケーキを食べたかと思うけど、そこのチーズケーキよりも美味しかったということもなかったので、けっこう美味いケーキだったのかもしれない、今思うと。
そのチーズケーキは全体がスポンジで、どのへんにチーズが入ってるかよく分からなくて(うなぎパイみたいなことか?)上にはオレンジソースがぬられていた。
それは私の誕生日ケーキとして買われていて、自分で選んだわけじゃなかった。
そのケーキ屋が閉店していた。(多分30年くらいは、やっていたのではないか。)それをやはり劇的にガッカリしたりはしない。ただ、何かじわりとした悲しみのようなものがあった。
自分が劇的に好きなものは執着しているから自覚があるけど、そうではないものは、好きか?と問われてもすぐには分からない。でもそれを失うと、じわじわと身を失くしていっている気がする。

落日

落日

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-24

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