ちいさな懺悔室

 ランドリーのかたすみ。何十年前かの漫画雑誌と、置き去られた空き缶。ノイズまじりのラジオから流れてくる懐メロとともに、奥底に沈んでいた記憶が浮上して。午後十時。怪獣たちも、眠る頃。だれかを一瞬でも、憎いと思ったあとの、からだにのこる、いやな感覚。滞留する。あのこがかかえる、さびしさを、わかってあげられないで。プレゼントには、つめたい花を束ねることしかできない。(ごめん)
 すべてが、宙ぶらりんのまま、分解されて。
 ごおうん、ごおうん、と呻るばかりの、乾燥機。
 こんな夜でも、みんな、洗濯ものを乾かしている。
 生きるために。

ちいさな懺悔室

ちいさな懺悔室

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-21

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