ミレニアム

 ゆるやかな、じさつ。という行為の果てには、なにもないのだと、あのこはいう。まるで、しっているみたいに。

 千年、という時が経っていた。
 うしなったものはたくさんあって、やぶれた恋や、なげすてた愛も、かぞえきれないほど積みかさなって、船が、積載過多であっというまに沈むくらいに、千年、には重みがあった。人類の1,000年。生命体の365,242日。ずっと、ねむっていた。さっき目が覚めたばかりで、まだ、からだがいうことをきかないのだと、となりでねむっていたしらないだれかがぼやいた。幾度もの世代交代の末、いま、この施設を管理しているひとびとは、みんな、どことなく、千年前に思い描いていた未来感があった。朗らかに微笑む様子はすこしばかり、人形めいていもいた。

 あの海に残してきた、オルカのことが気がかりだった。
 同時に、オルカ、という存在を忘却していなかったことに、安堵した。
 まっすぐ歩こうとしているのに、こころもとなく、ふわふわと浮いているような感覚に、あらためて、いきている、という実感を噛みしめた。

 いまは何年の何月何日ですか。

 となりでねむっていたひとが、未来のひとにたずねている。

ミレニアム

ミレニアム

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted