ミレニアム
ゆるやかな、じさつ。という行為の果てには、なにもないのだと、あのこはいう。まるで、しっているみたいに。
千年、という時が経っていた。
うしなったものはたくさんあって、やぶれた恋や、なげすてた愛も、かぞえきれないほど積みかさなって、船が、積載過多であっというまに沈むくらいに、千年、には重みがあった。人類の1,000年。生命体の365,242日。ずっと、ねむっていた。さっき目が覚めたばかりで、まだ、からだがいうことをきかないのだと、となりでねむっていたしらないだれかがぼやいた。幾度もの世代交代の末、いま、この施設を管理しているひとびとは、みんな、どことなく、千年前に思い描いていた未来感があった。朗らかに微笑む様子はすこしばかり、人形めいていもいた。
あの海に残してきた、オルカのことが気がかりだった。
同時に、オルカ、という存在を忘却していなかったことに、安堵した。
まっすぐ歩こうとしているのに、こころもとなく、ふわふわと浮いているような感覚に、あらためて、いきている、という実感を噛みしめた。
いまは何年の何月何日ですか。
となりでねむっていたひとが、未来のひとにたずねている。
ミレニアム