寒九の雨
山羊の角をもつ、きみ。雨に濡れたアスファルトに、信号の色が滲んで。しらないあいだに、この国はすこしずつ、病んでいるのだと、だれかがインターネットで発信して、拡散されて、じわじわとほんとうに病んでいっているようだ。街は危険がいっぱいだと、わにさまが言っていたのを思い出して、山羊の角をもつ、きみが、おびえながら街灯テレビをみている。となりの街は、無人となったビルに植物が群生し、日々、ジャングルめいてきている。わにさま、という存在が、いまも、ぼくときみのなかで生き続けていることが、まるで、時代遅れみたいに、世間は、つぎつぎとあたらしいものにとりつかれている。遠くの景色がときどき、霞んで見えるのは、森林破壊がすすんで、空気が澱んでいるせいだろうか。きみのような半獣人が殖えてきていることは、でも、わるいことではない。
午後九時。
インフルエンサー的なひとがとなえる、愛と平和。
寒九の雨