Blue Bossa

Blue Bossa

ブルーボサが最初の一作目で魔女の溜息の元になった。それから「魔女には絶対服従」迄、4作程度変えて書いていると思います。

本作は第一作の Blue Bossaです。(同じストーリーの魔女物は他にも重ねたものがあります。「魔女の溜息」は二作目。「上等の魔女」は三作目更に「Obediencia absoluta a las brujas 邦題 魔女には絶対服従」が四作目で最新です。此れから、旧作を1作づつ載せていくかどうかは分かりませんが、このサイトでも載せた内容を変えているのですが、筋書きが多少変わっても、書く方としては拘りがあるからなのです。」。既にお読みの方には申し訳ありませんが。
 作家には同じテーマの小説に何度も拘る事があり、文豪で言えば「川端康成」が書き下ろした有名な作品で、既に誰もが読み終えていた「雪国」はそんな小説で、結局川端氏が亡くなる前でしたが、主役の駒子が心中をしたと書き換えていた原稿が約50年近く経って見つかった様です。)


JRの階段を下りながら田中道雄は、河合真理が前を歩いているのに気が付いた。
 二人はJRの田町から歩いて10分程の大学に通っている。
 道雄は法学部三年、真理は文学部四年。
 真理さんは道雄の下宿の隣の部屋に住んでいる先輩丸井武の同級生だ。
 武は仲の良い同級生が多いばかリで無く、同級生の他の大学の友達などともすぐに打ち解け飲みに行ったりする。
 下宿といっても、襖を隔てて六畳間が二つあるだけ。まあ、同居しているようなもの。
 だから、武が友人や妹弟が遊びに来ると必ず道雄に紹介してくれ、一緒に話を、酒をとなる。
 武は同級生の中で二つのグループに属しているくらい顔が広い。
 真理さんはその内の一グループで武以外の男性二人女性二人の一人。
 下宿にその四人が遊びに来た時に、道雄も仲間に入り話をし酒を飲む。
 サントリーのウイスキーなら角やオールド、道夫の親が送ってくれたブランディーVSOPなど。
 道雄は、武からその四人を紹介して貰った時に真理さんの瞳に吸い込まれる様に。
「・・凄い美女・・」
 後で武から聞いた話では真理さんはクラスでも人気が高いと言うが・・納得。
 道雄は一瞬こんな人と付き合えたらいいなと思ったが・・「いやいや先輩でもあるし、無理、無理」其れは当然。
 その憧れの真理さんが前を歩いている。
 道雄は足を速め真理さんに並びかけ声を掛けていた。
「二時間目授業ですか?」
「丸井君の下宿の人だったかしら?」
 二人並び東京タワーを右手に見ながら、桜田通りを渡り警備員の立っている前を通ればキャンパス。
 すれ違う学生達がそれとなく真理さんに視線を流して行く。
 道雄は小さく呟き。
「そりゃ・・美女なんだから」



 法学部は三年から専門課程だから講義は各種法律や政治など。
 最後の民法1が終わりキャンパスに出た時には、既に夕陽が芝生を赤く染めていた。
 また真理さんに会えないかなど思い、キャンパス内を見回すが最終授業後で学生の集団は皆幻の門に向かっていく。
 道雄。
「会えるわけ無い」
 大体此の人込みでは・・。
 その学生の中を男子学生に囲まれるようにしながら歩いている女性。
 道雄と同じ高校から入った竹内という女性。道雄に気が付いたとは思うのだが・・無視をしている。
 学生達に囲まれ女王の様にキャンパスを出て行く。道雄は、
「大した事ない、真理さんに叶わう訳無い」
 と思う。
 道雄は群れから離れ図書館の入口で警備員に学生証を見せ臙脂の絨毯が敷かれた階段を上がるとFloor。
 通路の右手に一列に並んでいる椅子に・・憧れの真理さんの姿が。
 先程まで会えないだろうかと思っていたのだが、何か一生懸命に本を見たりノートに書き込んだりしている。
 やはり邪魔しては悪いなと思いその後ろを抜けるように一番奥の開いている席に座った。
 道雄は宿題をやらなければならないから、普段あまり来ない図書館に来参考文献を調べた。
 参考になる部分を書き写し、最後に自分の見解をちょこっと書く事にする。
 その宿題もそんなに手の掛かるものでは無かった。
 刑法の未必の故意に関する事例と自分の解釈を書けばそれで終わりだ。
 15分程し、道雄は椅子を机の下にそっとしまい図書館の出口に向かった。
 階段を降りようとした時、丁度真理さんも用事を終えたようで鉢合わせになりそうになる。
 道雄は階段の手前で立ち止まり、真理さんに気付かれないようにと真理さんが図書館を出て行くまで待っていた。
 時間をずらし図書館を出る。
 その時間になれば陽も落ち、薄紫の闇に覆われたキャンパスが帰る学生達を見送るように佇んでいる。
 道雄は、桜田通りを渡り細長い仲通りを歩き始めた。
 本屋の前を通ろうとしたときだった。何と真理さんが店から出て来る。
 道雄は黙ったまま真理さんの後に付き歩き始める。
 突然・・真理さんが立ち止まる。
 そして、真理さんは振り返り。
「田中さんでしたっけ?」
 自分の名前を憶えていてくれたようだ。
「ああ、どうも・・いえ、今晩はでしたか?」
 真理さんはくすっと笑い、
「ね、田中さん急いでるの?」。
 道雄は何と言われたのかと?照れ臭そうに、
「いえ、急いではいませんが・・?」。
 真理さんは再び笑みを浮かべ、
「あなた、図書館にいたわね。調べ物でもしていたの?」。
 道雄は片手で頭を掻くと、
「宿題をしていたんです。あの・・真理さんがいたのは知っていましたが、邪魔をしては悪いと思い・・」
 真理さんは何もかも御承知の様な表情を浮かべ頷きながら、
「私、行きたい所があるんだけれど・・田中さんお暇?」。
 道雄にしてみれば憧れていた女性から思いもよらぬ言葉をかけられ・・其れは?
「ええ暇は、暇です。でも、行きたいところって・・?何方に行くおつもりで・・?」。
 真理さんは指を・・、
「あそこ」。
 道雄は真理さんの指が示している先を見、
「あそこって・・東京タワー?」
「ええ、そうよ・・」
「僕とタワーに・・行く?」
 道雄は流石に何をするんですか?とまでは言えない。
 道雄は内心はさておき、躊躇いがちに、
「ああ、僕はいいですよ。どうせ暇人ですから」。
「そう?じゃあ付き合ってくれるの?」
 道雄は真理さんと肩を並ばせメトロの駅まで歩く。駅の手前で、先程の竹内達・・に出会う。
 竹内を中心にし、周りを男子学生達が幾重にも取り巻いている。
 真理さんは・・そんな事お構いなしなのは・・当然。 高校時には美人だと言われた竹内でさえ、壁の様に囲まれている男子学生達の隙間から覗いている。
 道雄には一旦視線を流しただけで・・真理さんを凝視している。
 道雄は頷いてから、呟きを・・。
「・・これじゃ大女優の・・付き人?」
 そして・・思う。
「これ以上知っている奴に会わなけりゃいいが・・」
 地下鉄の芝公園駅からタワーまでは歩いて五分。
 其の時には、漆黒の闇に月を浮かべた様なプリンスパークタワーLoungeの照明が・・。
 その出来上がってしまっている美しさとし一見の価値はあるのだが。
 道雄は公園を歩きながら呟く。
「其れに付けても・・未知の美女・・」
 真理さんは美しい横顔のまま。
「何か言った?」



 エレベーターが上がって行くに連れ、眼下の街の灯りが次第に散りばめられていく。
 ドアが開くと・・薄暗い中にブルーの照明が映えている展望台から「東京」の夜景が一望に見渡せた。
 羽田から飛び立ち灯りを点滅させている夜間飛行の旅客機が腹を見せるように大きく旋回し海の向こうに消えて行った。
 道雄が手摺に手を掛けクリアガラスの外を見ている真理さんに、
「図書館で何か調べ物ですか?随分厚い本を捲っては見ていたようでしたが?」。
「・・卒論の準備をしていたの」
「へえ、テーマは何にしたんですか?文学部だから?」
 真理さんは小さな日比谷の灯りを見ながら、
「魔女裁判・・中世ヨーロッパの魔女狩り」
 道雄が街の灯りが横顔に映っている真理さんに、
「はあ、文学部で魔女裁判ですか?なかなか面白そうですね?」
「キリスト教にどうして魔女などと言う概念が生まれたのか、反ユダヤ感情と結びついたり、田中さんは法学部だから裁判は専門よね・・」
「いえ、裁判でも、魔女となると縁が無いですから。確か、Europe全体で15世紀から18世紀までに4万人から6万人くらい処刑されたんでしょう?」
 真理さんは図書館で見ていたものを思い出した様に、
「そう、おかしな事が罷り通っていたのね。理由がいろいろあったにしても今一つピンと来ないの・・ 金銭目当て説・異教説・女性医療師弾圧説・災禍反応説・ 宗派的角逐説・フェミニストの主張・社会制御手段説など。本当は恐ろしいと言われるグリム童話にも繋がっているのよ・・」。
 道雄が少し不思議そうに、「でも、真理さんと魔女か・・似合ってなさそうだけれど・・案外・・」
 真理さんは道雄を見、「案外・・何?私も魔女だって?そうかもね。冷たく見える?」。
 道雄はすぐさま首を振ると、
「そんな・・そういう意味じゃ無いんです・・」
 そこまで言って・・その後は言えなかった。
 二人はドリンクを飲みながら暫く話しをしていたが、 真理さんが、
「そろそろ帰ろうか・・」。
 道雄は魔女という言葉には少し驚いたもののもう少しいたいような気も・・とは裏腹に・・。
「そう・・そうですね・・帰りましょう?」

 



 浜松町まで一緒に歩きJR に乗った。
 真理さんの家は東横線の田園調布だと言う。道雄は目蒲線の洗足だから目黒まで一緒に行った。
 道雄は電車を降り、動き出した山手線の車窓から手を振る姿が見える真理さんに名残り惜しそうに手を振った。
 真理さんが、
「また会いましょうね」
 と言ってくれたのが唯一の救いの様な気がした。
 道雄は洗足の駅から下宿まで住宅街の夜道を歩きながら呟いた。
「卒論か。あと一年で卒業だものな・・」


 月が明るい割には・・いつもに比べ闇の密度が濃い夜だった。


 
「by europe123 trumpetが泣く出だしのoriginal」
https://youtu.be/WOd05LXYI2g
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Blue Bossa

少しづつストーリーは変わって来、最後の「魔女には絶対服従」では、一部を除きほとんど筋書きを変えており、最も内容は濃いとおもいますが、この作品も本日手を加えた懐かしい初代作品と言えるでしょう。

Blue Bossa

大学時に実在の先輩の女性を、modelにしたもので、全四作程度内容を変えていると思います。 其れだけ、拘るにはそれなりの事情があったのではと思います。 第一作を本日書き換えたこの作品と、一部を除き全く書き換えた「魔女には絶対服従」を比較して頂いても面白いと思います。

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-16

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