少年と風の国
黒髪少年のお話です‼どうぞ楽しんでください‼
ある日の日常
「白パンをください。」
幼い声が店内に響いた。
店員らしき若い女性が振り向くが、そこには誰もいない。
だが、店員は、ニッコリと笑って言った。
「あ、いらっしゃい‼」
と、カウンターの下を覗き込む。
なるほど、見えないはずだ。お客は幼い少年だったのだ。
「一人でおつかい偉いねぇ。ウィルくん」
店員は慣れた手つきで、白いパンを一つずつ丁寧に袋に閉じていく。
「子ども扱いするな‼」
少年は頬を真っ赤に染めて言い返す。
10歳くらいだろうか、綺麗な黒髪に灰色の瞳はどこか違う世界を見つめているかのようだった。
まだ幼いが、整った顔立ちをしている。育ちが貧しいのか服はボロボロだが。
「可愛いねぇ。はい、今日は一つおまけだよ。いつも来てくれてるからね。」
少年は、袋を受け取ると心から嬉しそうに微笑んだ。
「ありがと。また来るね。」
その無邪気な笑顔に、思わず店員も頬が緩む。
カランコロン♪
(ジャムにバター、チョコレートも買わないと…。)
少年は、買い出しの最中なのか町中を走りまわっていた。
(あれ…?)
目の前に人だかりが見える。
少年は何だろ、と純粋な好奇心で近づいてみる。
男と幼い子供が、言い争っているようだった。…いや、言い争っているのとは違う。子供が、男に脅されていた。
「貴様ぁこの俺様にぶつかったなぁああ!?一発殴らせろ‼」
「ごめ…んなさい…。」
子供は、今にも泣き出しそうな様子で謝っていた。
周りの人は、見ているだけで、助けようともしない。
少年は、思わず叫んだ。
「…やめなよ‼」
集まっていた人達が一斉に振り向く。
ゆっくりと、男が歩いてきた。
「誰だぁお前、殴られたいのかぁ!?」
男の片手が上がった。
皆、目を瞑った。その瞬間。
うわぁああああああああああああああああ
なんと男が、叫び声と共に倒れたのだ。
少年は片手を真っ直ぐ男に向けていた
「…おい見たか、今の。」
少年は魔法を使ったのだ。瞬間的に大量の風力を起こし、それを一気に男に浴びせた。
実は、この少年。町では”魔法の天才”と呼ばれていた。知る人ぞ知る風の魔法の使い手だったのだ。
まあ、この魔力には秘密があるのだが。
パチパチパチパチ…
辺り一面に拍手が起こった。
少年はその輪の中で一人にっこりと笑みを浮かべていた。
やがて見物客も一人二人と帰って行き、少年も歩き出そうとしたとき…。
「ウィル坊‼」
男の人の声がした。
振り返ると、少年のよく行くお店の人だった。気前が良くお父さん的存在だ。
「あ、調味料屋の…。」
「おう‼一部だが、さっきの見てたぜ‼ずいぶん派手にやってたじゃねえか。」
男は、顔の前でピースサインを作った。
「…まあね。」
「すごいドヤ顔だなあwwまあいいが。それよりなあ、さっきの男なんだが、ずっと俺の店でも盗みを働いていた奴でなあ。坊のおかげで助かったよ。
…それで、お礼といっちゃなんだが…。」
そういって、男は少年にたくさんのビンを差し出す。
「わぁ…。」
少年は、キラキラと輝く瞳でビンを見つめる。
綺麗な色の液体や粉が入っていた。すべて調味料だ。
「ありがとう‼大切にしまっておくよ‼」
「おう、けど賞味期限とかあっから…ちゃんとつかえよな…。」
そして、やがて夕方になり少年は家に帰る。
町からは結構離れていた。
「ただいま」
だが返事はない。
少年の母親も父親も、もうすでに他界していた。
少年は、目を閉じて、幸せだったころのことを思い出す。
「お母さん‼今日ね、悪い人をやっつけたんだ。そしたら村の人がお魚くれたよ‼」
「すごいじゃない‼一緒に食べようね。」
決して裕福な暮らしではなかったけれど、幸せだった。
母親は美しい人だった。
だけど、魔女だと疑われて追放されてしまった。
母親は死ぬ前に一つ忠告してくれた。
「ウィル、しっかりと聞きなさい。これはお母さんの最後の言葉よ。
貴方は”ローシェンの気まぐれ”なの
見つかれば殺されてしまうわ。」
ローシェンとは、魔力の核のようなもの。そのローシェンの働きによって、稀に異常なほどの魔力を持った子供が生まれてしまうらしい。
その魔力を持った人間をローシェンの気まぐれといい、人々の恐怖の対象になっている。
だから少年は外ではあまり力を使わないようにしていた。昼間の出来事だって、少年からしてみれば実力の半分以下の力しか使っていない。
力を使わなければ大丈夫。そう母親が教えてくれたから。
だからこそ、これからも平穏な毎日が続くと思っていた。
あの日までは
少年と風の国
少年と風の国どうでしたか?嬉し恥ずかし初投稿です‼これからもどんどん書いていきますので、チェックしてくださるとうれしいです(^∀^)
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