奇想詩『おっさんと人形』

奇想詩『おっさんと人形』

おっさんはいつも人形を持ち歩いていました


それはきったないロシア人形で


どこへ行くにも一緒でした


公園 市役所 競馬場 居酒屋 ソープ 雀荘 


コインランドリー パチンコ コンビニ ソープ 雀荘 


雀荘 雀荘 雀荘 雀荘 雀荘 ソープ 雀荘


おっさんはだいたい雀荘にいました


きったないロシア人形の中には


麻雀牌がたくさん入っていたので


麻雀仲間からはイカサマ師だと揶揄されましたが


おっさんはイカサマなんてしたことはありませんでした


やがておっさんは麻雀とソープのせいで破産して


高架下で野垂れ死にました


はたから見ると


ただ浮浪者が路上で寝ているだけのように見えたので


おっさんは死体のまま二週間ほど


そのままにされていたそうです


検死解剖の結果


おっさんの遺体の胃の中から


麻雀牌が出てきたそうです


清老頭(チンロウトウ)の役満だったそうです


おっさんの遺品は空になった


きったないロシア人形だけでした

奇想詩『おっさんと人形』

月刊ココア共和国2021年5月号掲載作品(傑作集)

奇想詩『おっさんと人形』

月刊ココア共和国2021年5月号掲載作品(傑作集)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-13

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted