奇想詩『口角泡先生』
口角泡先生についてお話ししようと思います
口角泡先生はとっても心の優しい人です
けれども先生なので生徒を叱るときもあります
口角泡先生は叱るときにしゃがんで
ぼくたちの目線に合わせてくれます
でも口角泡先生の身長は2メートルもあるので
しゃがんだところでぜんぜん目線が合いません
目線の話はどうでもよくて
口角泡先生の口の両端には
いつも白い泡がついていました
ある日ぼくはどうしても九九が言えなくてテキトーに答えていたら
口角泡先生が近づいてきてぼくの目の前でしゃがみました
どんなふうに叱られたのかはもう覚えていませんが
口角泡先生の口もとの泡ばかり見ていたことは覚えています
いつこっちに泡が飛んでくるのか分からず
ぼくは少しハラハラしていました
どうしても気になったのでぼくは何も言わずに
ポケットティッシュを取り出して
口角泡先生の泡を拭いてあげました
そしたら口角泡先生の目玉が左と右でバラバラの動きをして
変な方向をむいてしまいました
「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」
そう言いながら口角泡先生は
両手を小さくパタパタさせて教室をうろうろしました
クラスメートのみんなが騒ぎ始めたので
隣の教室からマッティ・ペロンパー似のレニングラード先生が
鬼みたいな顔で走ってきました
「口角泡取ったん誰や!また転任せなあかんくなるやろがい!」
親切なことが人に迷惑をかけることもあるんだなとぼくは学びました
レニングラード先生についてはまた今度お話ししたいと思います
どうもありがとうございました
奇想詩『口角泡先生』
月刊ココア共和国2021年3月号掲載作品(佳作集)