一月の夕暮れ

 みている。あれが星に蔓延る害悪だと、だれかが主張する。こどもたちがにこにこ笑っている傍らで、ちいさな怪獣たちが泣いている。水平線の向こうで、くるしんでいるひとたちがいることを、だいたいのひとたちは、わかっていて、わかっているのだけれど、わかっているだけ。それ以上は、なく。
(ないわけではなく、けれど、易々と海を越えることはできずに)

 デンパが、煙草に火を点ける。
 煙草を銜えて、ライターで火を点け、さいしょの煙を吐くまでにも、さまざまなひとたちがそれぞれに、よろこび、怒り、かなしみ、たのしんでいるのだと想うと、生きている、というのは不思議なものだと感じる。ぼくが、そういうことを考えているのだと知ると、デンパはいやがるのだけれど。

 十七時。
 とつぜん強く吹いてきた、風。
 暗くなるにつれて、明るくなってゆく街。
 とくべつなことはなにもない、平凡な日だった。
 それで、よかった。

一月の夕暮れ

一月の夕暮れ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-01-09

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