一月の夕暮れ
みている。あれが星に蔓延る害悪だと、だれかが主張する。こどもたちがにこにこ笑っている傍らで、ちいさな怪獣たちが泣いている。水平線の向こうで、くるしんでいるひとたちがいることを、だいたいのひとたちは、わかっていて、わかっているのだけれど、わかっているだけ。それ以上は、なく。
(ないわけではなく、けれど、易々と海を越えることはできずに)
デンパが、煙草に火を点ける。
煙草を銜えて、ライターで火を点け、さいしょの煙を吐くまでにも、さまざまなひとたちがそれぞれに、よろこび、怒り、かなしみ、たのしんでいるのだと想うと、生きている、というのは不思議なものだと感じる。ぼくが、そういうことを考えているのだと知ると、デンパはいやがるのだけれど。
十七時。
とつぜん強く吹いてきた、風。
暗くなるにつれて、明るくなってゆく街。
とくべつなことはなにもない、平凡な日だった。
それで、よかった。
一月の夕暮れ