Poem 太陽系の転結は、青い惑星が速度を上げていくと仮定すればすぐに分かる筈・・。
神社の祭りで・・。
Poem The convergence of the solar system should be readily apparent if we assume that the blue planet is speeding up...
太陽系の転結は、青い惑星が速度を上げていくと仮定すればすぐに分かる筈・・。
派手な模様に文字の入った提灯が並んで吊り下げられている。
お囃子も聞こえ、神社の境内は浴衣姿の男女で一杯だ。
幾つも連なったような出店では、滑らかな口上の香具師が様々なものを売っている。
という風情を本来は見れそうなのに、境内には見渡す限り人の姿など窺えず。
秋といえば祭りが彼方此方で開かれるという通年なのだが・・少し様子が違うようだ。
其れでも、如何にも涼しげで柄が映えている浴衣を着た百合は誰も座っていない畳張りの長椅子に腰を掛け、片手には花柄の団扇を持ちしきりに表通りに面した鳥居の方に目を遣る。
夏祭りは、幾らでも汗を掻きそうな酷暑が感じられる夏の代表的な催しであり、人々でごった返した光景に其れらしい勢いを感じさせるもの。
夏は人ばかりか、木々には蝉などが止まり、僅か一週間ばかり精一杯鳴き続け、やがて鳴き声の音色も変わっていく。
其れに蝶や羽のある昆虫や玉虫などが色を添える様に加わり、実に賑やかな一生を見せつけては消えていく。
ところが、今年はそれ等の姿も見られないまま、何時の間にか時が移り、涼しげな風と共に季節の交代を象徴する様に木々の葉も色を変え衣替えか。
鮮やかな紅葉が木々を彩っているが、やや物侘びし気な境内の早すぎる様な秋は其れなりの味わいを感じさせる。
そんな静けさの中を、玉砂利を踏みつける音をさせ、百合が待っていた幼馴染の菊の着物姿が近付いてくる。
「待たせて御免ね・・野暮用で・・」
何か裏侘しさが満ち溢れている空間の中で菊の元気そうな表情が窺えるだけでも心強く感じられる。
「・・ううん・・貴女が来てくれれば・・其れだけで充分だから・・」
二人は何時ものように笑顔を見せあいながら菊が百合に。
「何か、何時もより涼しく感じられるわね・・」
百合は菊を待っている間に考えていた事を。
「私達もそろそろ手配をしないといけないわね?」
「うん、少し早過ぎない?手配だけをしておくという事なの?」
二人がそんな事を話している間に、一瞬、冷え切った空気が感じられ風花が舞い始める。
「異常気象とは言え落ち着かないわね?」
そう言うと百合が、
「クスッ」
と笑った。
その笑顔がはっきり見えていたのも束の間、夕陽が慌てながら山の背後に隠れる。
菊が・・。
「・・こういうのもまだ始まりなんじゃないかな?私達はこういう事に慣れ親しんでいる幼馴染なのだから、それ程気にする必要など無いのでは?」
妙にざわざわとしているような夜空が何かを運んできそうな気がする。
二人同時に・・。
「・・やっぱり早過ぎるわね・・衛星や煌めく星々がキラキラと色を変え乍ら西から登場し落ちる様に東に」
二人以外誰もいなくなった青い惑星。
かなり早い速度で、太陽の惑星軌道か脱け出そうとしている様に見受けられる。
其の事を知っていたから二人は神社の祭りに顔を出した。
「何時までも仲良しでいようね」
「勿論、二人だけの・・内緒・・とは言っても?」
「ええ、そして誰もいなくなった・・のだから・・」
二人の愉快そうな声は宙に響き渡っていたのだが・・重力・引力異常など・・乾いた夜空が目まぐるしく回転しだし・・どうやら太陽系からはぐれていきそうだ。
百合も菊も名こそもっともそうなのだが・・人類が力の限り背伸びをしたところで・・所詮・・大宇宙の法則など理解すらできない・・。
其れでも・・其れでは二人が寂しかろうと・・彼女らを隣の長椅子に座り見守っているのが・・東洋の予言者・・と且つて呼ばれていた・・生命体・・。
「何かあれば・・二人の面倒を見なければならぬが・・心配は無用・・」
「世の中に片付くなんてものは殆どありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変るから他にも自分にも解らなくなるだけの事さ。漱石」
「苦い笑みを微かに頰に含んで下を向く。平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」」</span>
「by europe123」
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Poem 太陽系の転結は、青い惑星が速度を上げていくと仮定すればすぐに分かる筈・・。
二人の少女がいる風景。