佐伯藩のお家騒動
昭和の大映映画の傑作のひとつで、今の世代にも分かり易く、純文学とは異なる娯楽もの。
遠州佐伯藩松平家の若殿源之助は家中の武士を連れ鷹狩り(徳川家康も此れが好きで・・という記録が、幼少時代に人質として今川義元の駿府に住まいを構えていた時に、よく鷹狩りを行ったと現在の静岡市の寺などにお触書の様なものに書かれている事が多いが、単なる遊びだけに過ぎず1、戦の練習として最適だった。2、領地視察を行った。3、健康維持に役立った。などの理由で好まれたと言われている。)に行き戻って来た。
其処には許婚(いいなづけ)である隣藩小田切家の息女・鶴姫の一行が陣を構え座っており、源之助はさぞかし自慢気に鶴姫に土産である鷹を渡す。
其処までは良かったのだが、鶴姫の前で家中の武士を相手に、剣を取っては家中一、である事を自慢しようとする。
次席家老・芝田という老人が気を利かせ、相手になる武士達に、「姫の前であるから手加減をして臨むように」と話せば、武士達も其のつもりで・・という事になった。
全員に打ち勝った源之助は、鶴姫に、「どうじゃ?拙者の腕は・・?」と自慢をした。ところが、この姫は美人であるだけでなくなかなか剣術に関心があるようで、
「お見事です・・でも、あれなら私でも勝てます・・」
と、皮肉を言われる。
「だって、武士達は皆御追従(お世辞~わざと。)負けでは無いですか?」
此れに腹を立てた源之助は、姫の藩では武道で右に出るものが無いという林主水に対する様にする。
ところが、姫に「お相手をして差し上げる様に?」と言われた主水は割と簡単に源之助を討ち取る。
場面は変わり、源之助は屋敷に戻ってから、自らの不甲斐なさに嫌気がさし、自分の本当の力をためそうと、お城を飛びだし江戸へ向い家出をする。
とはいうものの世間知らずの殿様ゆえ、飛び出したは良かったものの、まず先に駿府はずれの茶屋で団子を所望する。
如何に美味しかったとは言え、十皿も平らげた殿が帰ろうとすると、当然ながら茶屋の婆さんが、
「・・お勘定を支払って下さい?」
と・・。
殿は婆さんの言葉も分からず、やっと其れが金銭を支払えと言っている事に気が付くのだが、「お城へ参って受けとれ」。
オウヨウなもので婆さんからこっぴどく罵られ・・其れでも訳が分からぬという顔で立ったまま。
婆さんは殿の着ている物を置いて行けと迫る。其処に運良く通り掛かったのが、江戸の芸者達で中でも一番の小股の切れ上がったすらっとした美人である蔦葉が助けてくれると、彼は印篭を与え、再会を約した。
次に歩き出した源之助が丁度居合わせガラの悪そうな馬子と一悶着していると、其処に現れのたが、江戸の人入れ稼業(人足稼業と言い、今でいう人を雇って働かせてくれる人材銀行のようなもの)の大和屋弥七の従業員である与平次。与平次は面白い奴と源之助を拾った様に大和屋に連れて行く。
此れで、源之助の最初の職業は人足という事になる。
其処では男達に混じり主人の大和屋弥七の娘であるおみねに出会い、おかしな源之助に呆れながらもおみねは結局源之助に好感を感じるようになるのだが・・其れは後程。
其の頃、源之助の家でと知れれば大変な事になると、次席家老・芝田が息子の敬四郎に若殿のあとを追わせ、顔中ホータイだらけの身代りをつくり、疱瘡で寝こんだことにしておく。鶴姫は源之助の失踪を知らず、疱瘡だと聞き見舞いに伺うが、合わせてくれないからと却って怒り出す。
佐伯藩の内部は実は次席家老・芝田は源之助の忠実な家老なのだが、何処の藩も地元に城がある一方幕府の指示で江戸家中にも屋敷を構えるのが常識。
其処で、江戸家老・安藤は若殿重態の知らせに喜んだ。というのも、常々源之助一派の事を快く思っておらず、機会あれば源之助にとって代わり自分達が藩を仕切る事を考えていたから。
源之助は大和屋に奉公するうちに、剣術の練習の場を設けられ、仲間と木刀を振り回し次々に仲間を倒す。
油断した源之助が弥七とおみねを笑顔で見ている隙に、後ろから仲間に頭を叩かれる。怪我をした源之助はおみねに手当をして貰っている時に、弥七にどうしてやられたのだろう?と問いかける。
弥七が即座に、
「そりゃあ、お前の剣術は道楽で、後ろから狙った仲間は捨て身だから」と諭され、其処で源之助も鶴姫に馬鹿にされた理由が読めて来、剣法を会得する。
更に、ちょうど安藤の供人足にやとわれていた時、安藤の行列に立ちはだかった連中・旗元達と剣を交わす事になる。
行列をさえぎる悪旗本をやっつけた事が認められ、源之助が実は自らの若殿だとは知らぬ安藤に、士分・若党の身分として召しかかえられた。
ところが、江戸家老・安藤は若殿疱瘡(ほうそう)の知らせに喜ぶと共に、源之助の父で大殿が江戸藩邸で病床にあるゆえ、できれば亡くなり、息子の采女に跡目をつがせ、鶴姫と祝言をあげさせて、お家乗っとりをたくらんでいた。
源之助は仲間の中でも親しいが少しレベルの低い与平次から安藤の家中での勢力とその陰謀を知らされる。
あくまでも、源之助にしてみれば自らの身分を知れずに、其の謀略を暴き出し父と共に藩を治める事が狙いに代わって来た。
そんな時、鶴姫が江戸へ現れ、源之助との縁談を断りに藩邸へやってきた。一時は破談と思われたのだが・・姫は元より剣法にこだわりを持っており、剣術で強いものを望んでいる。
安藤の息子の采女が藩では強いと取り敢えず主張する・・此れは姫との縁組を考えての事。其の采女が、御追従の藩の武士には勝てても、結局、且つて源之助を破った主水に簡単にやられてしまう。
其れを見、呆れかえった姫がもう帰る・・といいだした時、安藤は・・実は屈強なものがおりますから、今其のものを連れてまいりますと・・。
連れて来られた源之助。今度はものの見事に主水を打ってとる。思わず手を叩いた姫も一瞬横を向き「ふん!」。
安藤はまさか源平と名乗っている源之助の正体には気が付かず、
「・・いや、天晴、我が藩の面目を・・もそっと此方に・・」
と呼び、源之助に三両二人ぶちの身分を賜った。此れで武士に戻る事が出来た事になる。
安藤はいよいよ悪だくみを実行に移し出した。先ずは、藩の中でも大殿の身を案じる武士を屋敷内の廊下で腹心の悪役の部下に殺させる。
続いて、二手に分かれ左安藤の邪魔立てをしようとした二人の内一人を街道で・・。次に
すっかり頼りがいがある奴だと信じ切っている安藤が、次に源之助に命じたのは・・源之助の腹心の部下であり父を次席家老に持つ敬四郎を斬り捨てる事。
源之助は指示には従うが、相手を打ってとる前に相手の顔を見細工をする。丁度近くに鈴ヶ森の処刑場がありそこで亡くなっている罪人に刀を通し、恰も自らが敬四郎を斬り捨てたように見せ、近くにいた悪役に、
「・・刀を見せろ・・本当に切ったようだな・・御苦労・・」
と言わせしめる。
敬四郎と共に江戸屋敷に向かい、二人で話をしている最中に・・障子の向こうに人の気配が・・。
「誰だ・・?」
何と、お茶を持って来たおみねであり、部屋に入れると・・。
「源平さん?私何でもするからお役に立ちたいのです・・?」
「そうかおみねさん、見方になってくれるのか?」
早速おみねは屋敷の腰元とし働き始めるのだが、先ず、采女に近づき、采女と鶴姫との政略結婚の計画を聞き、更に、大殿に飲ませている薬が害薬だという事を知り、屋敷の庭で源之助に其の事を話す。
次に安藤は源之助に使者として鶴姫の元に出向き、采女との婚姻の旨を姫の父である小田切の殿に、その旨が掛かれた手紙を届けるように命じる。
源之助は全て承知の上だが、素直に使者を勤める。小田切の殿は、一瞬源平の面を見、
「・・おお、久し振りじゃな?・・」
と源之助と間違える。
姫も一度源平と源之助が同一人物である事を確認しているから・・殿が首を捻る・・。
姫が、人違いの旨話す前に、源之助が姫にサインを送り、ウインクをする。
全てを悟った姫が。
「父上・・其れはお人違いです・・?」
と、話を合わせてくれる。
だが、手紙を読み始めた殿の顔が一瞬驚きの表情に代わり。
「・・何と?采女を姫の・・たった江戸家老の息子ゆえ・・お前には佐伯十五万石の嫡男である源之助君がおられる・・」
と、怒りの表情で使者である源之助を睨むのだが・・源之助は・・物事には裏と表が御座います・・と、殿に頓珍漢な説明をすると・・。
姫も・・
「私の事を・・采女様が・・女冥利に尽きます・・」
と援護する。
殿も・・分からなくなり、
「・・まあ、若い者同士・・」
とその場を立つ。
源之助が大きな声で、偉い・・で、慌てて手で口を抑え。
「・・老いては子に従え・・」
場面が変わり。
其の頃、お峰が大殿のところに薬を持って行き。目の前で薬を捨てる。大殿は一体何?という表情だったが、おみねは源之助から手渡された手紙を大殿に渡す。
其の後のsceneは映さず、いきなり、発狂した大殿はおみねを追いかけていく廊下のscene。すっかり気違いに扮している大殿の芸を見て、安藤親子が・・。
「・・此れで佐伯十五万石は・・我らのもの・・此れは抜け殻だ・・」
と、大殿を見ながら笑う二人。
更に、安藤の企みが知れる。
まだ源之助に気が付いていない安藤は、離れの間に仕掛けれた「釣り天井」の仕掛けを確かめ見せる。
其れを知った源之助は、与平次に話を持ち掛け。
「・・離れの下から庭まで穴を掘ってくれるか?」
何も感づかない与平次は言われた通り穴を掘る。
そんな折、鶴姫と采女の婚姻のお祝いの席が催される。
藩の家臣が揃う中・・芸者達の踊りや酒の酌で賑わいを見せるかのようだが・・。
筆頭の芸者は冒頭で団子の代金を払ってくれた美人である蔦葉なのだが・・宴席の中をきょろきょろ見回している蔦葉に、安藤が。
「何時見ても・見事な蔦葉・・何だ?想う人でも探しておるのか?」
そう言われ彼女は・・。
「そんなんじゃないんですよ・・返さなけれならないものが・・?」
と、印籠を取り出す。
安藤に渡そうとしないのだが・・思わず手から離れた印籠は・・悪人武士が受け取り安藤に投げる。
安藤は其の印籠をよく見ていると・・。
「此れを持つ者は只一人・・佐伯藩若君。誰から貰ったのだ?」
彼女が。
「源平さんですよ・返して下さい・・」
其処で。
「・・ええい、女達皆下がれ・・」
女どもを皆宴席から出した安藤には・・既に、源平が源之助である事が分かった。
いよいよクライマックスに・・。
大殿と源之助が一緒にいる部屋の・・釣り天井が落ち・・壁が狭まり・・遂に悲鳴と共に二人は助からなかった・・。
舞台は変わり佐伯藩の武士を全員集めた部屋で安藤が・・事の次第を・・。
「大殿は大川に身を投げられ・・目下捜索中にも拘らず行方知らず・・源之助君は行方知れず・・」
と、次席家老が・・。
「其れは・・誠の事か?広義に知れたら・・?」
安藤が・・。
「佐伯家はおとり潰しになる・・各々方・・この上は我が息子である采女を佐伯家の養子とし・・其れで異存ないだろう・・?」
一同・・賛同する。
安藤が次席家老にも・・手にして居る連判状に判を押せと迫る・・。
其の連判状にいきなり・・小さな刀が突き刺さる・・。
「・・おのれ・・何者じゃ?」
皆が勢ぞろいし座っている真後ろの・・襖がさっと開き・・若殿の装束で現れたのは・・。
「・・その様な事・・まかりならぬ・・御一同世の顔を見忘れたか・・?」
源之助が部屋の真正面に・・打ちかかった逆臣を膝で押さえたまま・・格好良くたすきをかけていく源之助・・流石に歌舞伎役者の出・・本物だ・・。
其処からは逆臣ども数十人を相手にし源之助の殺陣が冴える・・。
バッタバッタと切って行き・・次第に庭での戦いになる・・。
暫くしてから・・門を突き破る連中の姿が・・大勢・・。
与平次その他・・且つての仲間がなだれ込んできた・・。
与平次も・・。
「若殿・・御無事で・・」
其の時、大きな声が・・。
「・・源之助天晴じゃぞ・・老中名代小田切但馬守・・ここにしかと・・」
其の横には大殿ばかりか・・鶴姫や美人腰元の姿も見える・・。
「与平次・・穴再び埋めておいてくれるか?」」
此処で与平次が面白い事を・・。
「・・するってーと・・掘り賃と埋め賃で二倍になりますぜ?」
「おお・・其れに・・酒は飲み放題を許す・・」
「此れはありがてー・・昼行燈~ひるあんどん(かつて若殿など・・巷の歌では・・昼行燈と歌われていると言った事・・。)など・・誠に申し訳なく・・奉ります・・」
画面は一転し・・馬に乗った源之助や姫に家臣が一斉に走り出す前に・・。
「・・どうじゃ姫・・此れで御追従で無いと分かったであろう・・鶴の負けじゃ?」
姫は一旦頷いたものの・・気の強さを言葉で表したものの笑顔・・。
「・・いえ?鶴の勝ちです・・」
「・・鶴は強情だぞ・・」
「・・負けるが勝ちだと申します・・」
馬を駆っていく鶴姫の後から。
「・・はしっ・・」
源之助が馬に気合をいれると・・一同馬を走らせて行った・・。
終
近作品は白黒だが、市川雷蔵主演・亡き八千草薫・鶴姫・その他名役者ばかりだが・・原作からでは無く脚本からでは無いかと思われる。
八千草薫は宝塚出身だが、その同期に蔦葉役の阿井実千子が降り、宝塚では男役。90歳でまだ・・実に多くの映画や演劇・TVにも出ている。
やはり、当時の役者は素晴らしく、美人揃いが映画冥利に尽きる・・。やはり、女性の代表・・。
おみねはやはり雷蔵と同じ様な、歌舞伎の父などを持つ中村玉緒。
佐伯藩のお家騒動
ただ、出演者が素晴らしく、今の役者では見られない豪華且つ美女の仕種や、どんな役もこなすところが・・今のタレントとは全く比較に値しないと言える。
今日は、粗筋的に書いてみたが、原作者がおりその作品からのものと、現代ではNHKの大河も原作者不在で、脚本家が書いている実情が大河ドラマなどが貧層である理由と言える。
粗筋を書ければ、脚本もかけ、強いては原作も書けるというのが作家の特徴である。今は、大河の藤原道長も焦点がやや狂っており、本来は藤原基経が、平安時代最強と言われ、此の国で初めて天皇傀儡の関白初代といえる。
私の作品では基経の影武者が実際の基経より優秀だったという筋書きになっている。大河の原作が無ければ・・書いてあげても良いが・・。
一つは世界中に言える事で、世代のlevelが低過ぎるという事。知能指数はあまり参考にならず訓練によっても数値は上がるが・・かといい、ニュース記事のように此の国の知能指数が105というのは真似したくても不可能といえる。作者は生まれた時に128だったと言うが、存後140までは上がったそうである。かと言い、180だから優れているとも言えず、特に芸術面で「創造力」については関連は無く、如何に「感性」が鋭く豊かなのかが最も最も求められ・・一番無能に通じるのが「感情」に頼り過ぎる事と言える。人類は皆「感情」の動物だと言える。