大晦日の泣き笑い

  1
 大晦日 雪降る風景に一人ぼっちの少年、
 かれ 後ろめたげに壁を向き 背を折って、

 一人 忘れたくないものへの葬式ごっこを戯れる
 幼児は 精一杯の弔いの実感に 力なく微笑みて、

 しろく射す陽に はらり、と
 砕かれ泣く──壁から毀れる砂を我とみて。

 嘗てのあどけない愁しみは 濾過し清んで心象に射す、
 幼児期の風景。遅れをとり、産れる前──死を唄う児。

  2
 炎ゆり脹れ、苦痛と昇らんとしたがゆえでありました、
 ──ざらついた 冷然非情のアスファルトへと──

 終わった季節を堕ちて往きます 紅い葉でございます。
 漸く剥かれた積雪に ひねもす染まれず墜落し創と侍る。

 扨て 葬式ごっこは終わっていません──
 幾夜の月光は 死者を鎮めるオルガン曲、今宵はバッハ、

 わたしはわが淋しさに貌をくしゃと歪め泣いて、
 その惨めったらしい滑稽さにけたたましく嗤う。

  *

 わたしは逆流の結びつきの不思議な聖と俗のコインを描いたつもり、
 泣き笑いというモチーフには──まるで人間が宿ります。

大晦日の泣き笑い

大晦日の泣き笑い

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-31

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