1回の嘘から始まる物語

村は年越し前の準備で大忙し。
雪が降ると町に出かけるのも大変なので、今のうちにと、藁で作ったブーツやらかご、野菜など、それぞれ作ったものを売りにでかけています。
とある家の少年は風をひいてしまって寝込んでいました。
夕方まで家には人気がないので、この時期を狙って家のものを盗む人がいました。
「よし、今日はあそこの家にしよう」
そういって一人の男が家に入り、金目のものを袋につめていると少年の声が聞こえました。
「おじさん、だぁれ?」
誰もいないと思って油断した男は驚きました。何とかしてごまかさなくてはととっさに
「おじさんはね……あれだ、子供にプレゼントを配っているんだよ」
「プレゼント!?」
「この白い袋に、村の子供にあげるおもちゃが入ってるんだよ。君にはこの藁の馬をあげよう」
「ありがとう」
男のついたこの1回の出来事は、あっという間に村中に、そして世界中にのちのち噂が広がったのである。
「おじいちゃん、そんなの嘘だよ。僕の知っているえんとつから入るプレゼントくれるおじいさんと違う人だよー」
「はっはっは、そうだな、プレゼントもらえるように、もう早く寝なさい」
「はーい、おやすみなさーい」
もうこの物語は既に男のものだけではなくなっていた。男にとっても、この出来事をきっかけに心を入れ替えて幸せに暮らしたのだ。
夢物語として多く広まった話が有名だが、この男の先祖の子孫は今も密かに本当の話をこの時期になると話して聞かせているのだ。

1回の嘘から始まる物語

1回の嘘から始まる物語

昔話風です。 クリスマス過ぎてしまいましたが、過去に書いたものをリメイクしました。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-28

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