薬缶を火にかけて
夜を減らしていく時間が好きだ
今日は「黙」という言葉を覚えた
もだ
私は人と話すのが好きでも嫌いでもないが
一日に発する言葉は少ない方がいい
そう思っている節がある
パートは人とほとんど話さなくていい仕事を選んだ
昼休憩は取らない
六時間、黙々と作業を続けるのだ
もくもくと、もだもだと
黙という言葉を知って
日々、胃の中に溜まってくる何物かに
やっと名前が付いたような気がした
もだ
私はいつか
私のことをこの黙ごと愛してくれる人と
結婚しようと思う

詩誌『月刊ココア共和国 2023年1月号』に「投稿詩傑作集Ⅲ」の内の一篇として掲載された詩作品です。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-28

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