Actriz y geisha  邦題 女優と芸姑

Actriz y geisha  邦題 女優と芸姑

seriesお馴染みの遥かな創造惑星から来ている、雄二・綾子・夕子。


 デスクにいる時に三田綾子から折り返し連絡があった。
 尾上雄二は関西までの出張予定があったので、綾子には予め其の連絡を取っておいた。
 というのも、綾子は学生時代にミスコンで優勝し今はベテラン女優として活躍中だが、現在は京都太秦の撮影所で撮影中だと聞いていたから。
 其れで、東京の花街で一緒に住んでいる若井夕子も誘い京都駅で待ち合わせをし、一緒に綾子の撮影を見る事にした。
 雄二は法務担当役員で、出張は全国の支店等に依頼されて行くことが殆ど。
 指導もかなり前にマニュアルを作成してあるので、裁判所宛の各種書類作成などは各担当者に任せている。
 それ以外の交渉が必要で厄介な案件や、口頭弁論等で法廷に出向く事がある。
 九州や北海道なら航空機、それ以外は三時間以内なら新幹線を利用する。
 何方にしても座席に座っている時間は海外・欧州でなければ、そのくらいの時間が煩わしくない。
 京都駅からJRで太秦まで行き徒歩になる。この辺りには映画村や広隆寺などがあり、且つてはよく来たもの。
 綾子からは何人かの役者仲間を教えて貰ってはいたが今日は初対面の役者を紹介された。
 そういう連中と、撮影の終了後などに飲む事も偶にはある。
 其の役者は相当前に亡くなっている市川雷蔵にそっくりのようだ。
 今は時代劇は流行らないし、名役者もいなくなった。そんなご時世でよく彼のような容貌と演技の両方共備わっている役者を見つけたもの。
 



 三人で四条近くの料亭で食事をとった。この辺りではよく芸妓や舞妓を見かける。
 お座敷に出る途中なのだろう。三人で酒を酌み交わしながら飲んでは話をしているうちに、現在撮影中の時代ものの話題になった。
 女性二人共和服が似合う女性でスラっとして背が高い。夕子は芸者の師匠であるし。
「やはり、京都と言えば和服のイメージかな。案外、着物は誰が着ても様になるというものでも無いし、何か其れ相応の年齢でなければ着物姿は似合わない・・。昔の女優などは誰しも着物が似合う美女だったが今のタレントでは七五三並み。かと言い、どんなに美女だとしても白人女優には全く似合わないのも事実」
「雄二、芸姑さんなんて興味ありそうなんじゃない・・?」
 そう言いながら、二人が酒を注いでくれるのだが。
「実は先日写真で見たんだけれど・・確かに綺麗だが・・化粧が商売上濃いから素顔は。まあ、女性は化粧で御増しが聞く半面、素顔を想像すればどうだろう?ああ、君達のような美女とはまた趣が違い・・」
 そういう三人とも実際の姿は全く異なるが、人類では最も美女である姿をmodelにしており・・。
 雄二だけはそうとも言えないが。
 そんな話題から変わる。綾子に良き伴侶は見つかったのかという事だ。
 人類ではないのだから、伴侶とは相方(あいかた)の役者の事を意味し、そうであればなかなか存在しない事になるのだが。
 二枚目で性格も良いという役者は既に亡くなっているか八十から九十がせいぜい。
 其れが通じたのか、彼女の方から話を始めた。
「業界同士でというパターンが多いけれど、上手くいけば一生という事もあるし、離婚を繰り返す様な事もあるから・・」
 確かに且つては監督とおしどり夫婦などと言われている女優もいたが。
 若尾文子などは健在だが八千草薫は夫婦共亡くなっているし、岩下志麻は何かあるようだ。
 そうではなく役者同士だったり一般の人だったり。ところが、中には大原麗子のように波乱万丈な生涯を終えたケースもある。
 更に・・カツ乃の話が出た。
「ええ、カツ乃という人は郷ひろみを初めとし業界人やら何やらと常に噂が絶えない人だったようで結局は経営者と54歳でおさまったらしいね。噂程美人だとは思えないけれど・・」
 彼女達も同じ女性同士としての感覚で、やはりあまり好みでは無いという・・。
 話ついでに、雄二が気に入っている芸姑の話をしてみたが、どうしても芸者の師匠の夕子の姿に近づいてしまう。
「顔立ちも気になるけれど、芸妓達は顔のmakeが売り物でもあるし、美人だとしても素顔は見れなかったりして?・・」
「素顔を見るには、身受けでもしてみたら?」
「おいおい、きついなあ。そこ迄興味は無いよ。大体、人類の妻や妾を持ってもちょっと困るし・・。まあ現実問題とし無理だね。素顔は無理としても一度だけ拝見してみたいよね・・其れで終わってしまうが?」
 彼女達は、笑みを浮かべると、
「案外、女好きなのかもね?女優と比べたら・・何方が好み?」
 雄二はやはり美人女優で、其れも過去の大映の女優などが気にかかる。
「その他の社会には女性はいるがそういうレベルではないから・・。最近、無茶苦茶な差別発言を繰り返して来た杉田水脈などは、55歳で頭は悪いし写真でも顔の鮫肌のザラザラが窺えるけれど、岸田は一体何をどうするつもりだろう?」
「・・そう言う器量だから、アイヌや朝鮮人に同性愛者等を八つ当たりで差別しているのは分かるわね。問題は幾ら人材がいないとしてもそれ程精神的に醜悪な女性を辞職させないのは???あの人も二浪し早稲田大だから・・同じレベルなんじゃない?」
 同性にも此処まで徹底的にさげすまされる女性というのも、器量は度外視しても稀少価値と言える。まあ、彼等にも死相が窺えるのは事実だが・・。
 其処で綾子が再び、突然、話題を変えた。
 



「ねえ?今度の市川雷蔵さんなんだけれど・・あの人演技もしっかりしているしFaceも良いし・・」
「何?其れなら、共演したくて仕方が無いんだ?」
 夕子が笑いながら・・。
「・・いいんじゃない?思い切り共演すれば・・綾子だってお似合いのベテラン美女なんだから?」
 「眠狂四郎series」にはラブシーンは見られないが、文芸物の「歌行燈」なら山本富士子とのsceneが二か所でLastがハッピーエンドで抱き締める場面で終わる。
「一年に十本程度というハードスケデュールで撮影をしたくらい素晴らしく人気があり、ファン層の女性もミーハーではなく、intelligentsiaが多かったというから、今では見られない国宝級だな?其れなら綾子の気持ちも理解できる訳だな」
 



 撮影は順調に終了したようで、綾子としても満足がいく演技が出来たという。
 当時の二大スターと言われた一方の勝新太郎は結局、此れも雷蔵と共演していた同じく歌舞伎の父の娘だった中村玉緒と結婚をしたが、彼曰く「雷ちゃんは鼻の下で切っていたな・・」というくらいモテたのは間違いが無いが、残念ながら男女何れの役者も今の役者とは二味も違うのは非常に価値があると言える。
 また、雷蔵は大映の社長で権力があった男性の日本女子大卒の娘と結婚をしたのだが、或る作品では雷蔵の相手役に付き、雷蔵が「清潔っぽい若尾文子がいい」と主張し結局、社長を口説き落としたというエピソードもある一方、山本富士子については、どういう訳か社長から追放されるように、以後映画には出ず、TVや芝居に飲み出演するようになったのも、何か曰くありげで当時の役者しか知らない謎と言えるが、何にしても大もて男だったのは間違いが無い。
 綾子が・・。
「丁度、業界でお座敷があるから、二人も呼んで良いかどうか聞いてあげようか?」
 と言う。
「いいね・・しかし僕なんか呼んでくれるかな?」


 
(話は逸れるが「眠狂四郎series」で良く雷蔵扮する狂四郎が使う言葉がある。
 女性が身体で誘いをかけ狂四郎を騙し討ちしようとする事が多いのだが、そう言う時に・・。
「・・お前は男に抱かれ過ぎ・・」
 と言う台詞は少し猥褻なのだが、人類の日常の男女にも同じ事が言え、一つの目安とし乳首その他の部所の色素が沈着し過ぎ黒くなっている事で判断がつく。
 此れは黄色人種だからとも言え、白人女性はそういうことは当て嵌まらないから、同じ事は言えない。昔は町や乗り物などの中で、人前で乳房を赤子に含ませる場面に出くわす事が結構あったが、そういう時には当然乳首の色素が沈着し黒かった事が少なくなかった。この国でも、modelなど写真に写る女性はそういう点に気を使っているのかも知れないし・・地が違うという事もあるだろう。何も覗き見をするのではなく、外見からだけでも、言動からそういう事が見抜けることは多い。
 また、枕営業(まくらえいぎょう)~仕事をもらうために番組の上層部やスポンサーと寝ることと言うのも大部屋の女優などにはある。
 業界用語では意外と露骨に女性の局部を示す言葉があるし、乳首が立つなどはびーちくっぱ・乳房パイオツなどと使用するが、はだか、は意味が異なり、単身契約で出演する事。聞いた事があるだろうが、半面、卑猥でなくカメラワークを表現する時に、「なめる~被写体に寄った映像を、主に足元から全体を舐めまわすようにカメラアングルを変えて撮影すること。
抜く~背景を入れずに、被写体をアップにして撮影した素材。また欲しい素材だけを抜き出して保存しておくこと。抜け(ヌケ)~カメラのフレームの中で遠方の景色のこと。手前の空間に人物や建物などの視界を遮る物がなければ「ヌケのいい映像」が撮れる。」。)
 


 目の前で見る雷蔵と綾子の作品は素晴らしい出来だった。
「・・頂きました」がディレクターの口から・・。
(収録現場で重ねたテイクのうち、良い素材が撮れてOKが出た時のこと) 



 
 三人はマネージャーを伴い新幹線で東京の花街まで向かう。
 というのも、京都の芸妓とは若干異なるが、花街には慣れ親しんでいる夕子の弟子の美人芸者達が待っていてくれる。
 茶店に着くと早速、女主人が顔を出し、続いて芸者達が何人も美しい顔を見せてくれた。
 何時もの茶店の奥座敷で恒例になっている夕餉が催される。
 やはり、お馴染みの女性達の舞や姿は艶やかで着物もおそらくかなり高価なものであろう。
 京都の芸妓もそうだが、舞子と芸者が全く異なるのはその名の通り芸が見事だという事もあるし、年期が入っている分、見事な大人の艶が窺え・・実に美しい。
 夕子が・・。
「京都の舞妓さんも良いけれど、何時も見ているから灯台下暗しで・・案外お弟子さん達綺麗でしょ?」
 綾子が・・。
「どうだった?お目当ての美女は・・?」
 洋二は・・。
「やはり気の置けない連中の姿も素晴らしいね・・お座敷などで無く奥座敷で結構・・」
 夕子が再び・・笑いながら。
「そういう事もあるでしょ?」
 すると芸者が・・。
「おひとつ如何?」
 と手の甲を口に添え乍ら首を傾げる。
 今度は、雄二が笑いながら。
「まあ・・上等だね・・何処を見ても。君達二人はまた格別の美女だし・・酒が美味いよ・・」
 綾子と夕子は・・今更何言うのよ?と、京都の芸妓を見て女性好きになった雄二を見・・呆れ顔を通り越し大笑いをしている・・。
「やはり・・花街は落ち着くね・・京都の人間は鼻が高いと言われるが・・此処はそういうことは無いから・・」
 まあ、女性を並べてばかりでは・・そう良い事ばかり・・などある訳は無いのかも・・。
 続いてアトリエの二人の芸術家(写真家と絵描きのプロ)に漱石やら・・純文学の二人も現れた。
 何時の間にか、裏庭の夜空には大きな月が柔らかな光を漂わせている。
 元は置屋の女将だった・・主人手作りの今晩の料理や酒も、あれもこれも美味しいものばかり・・女達はやれやれと膝を崩す。と、鹿威しが・・トン・・と鳴った・・。



「自由な書を読み、自由な事を言ひ、自由な事を書かんことを希望いたし喉。夏目漱石」



「人間は時として、満たされるか満たされないかわからない欲望のために一生を捧げてしまう。
その愚を笑う人は、つまるところ、人生に対する路傍の人に過ぎない。芥川龍之介」



「金は食っていけさえすればいい程度にとり、喜びを自分の仕事の中に求めるようにすべきだ。志賀直哉」



「piano・boralent・E,piano by europe123」
https://youtu.be/N6mykOAclrI
 
 

Actriz y geisha  邦題 女優と芸姑

二人は京都での綾子の映画撮影を見ている。
時代物は今は廃れていて、名のある役者がいないのが現状。

Actriz y geisha  邦題 女優と芸姑

昭和の大映、美人女優・市川雷蔵のそっくりさん。 今日の街では芸妓や舞妓の姿を見掛ける。 何も京都だけではなく、東京の花街の茶店にも大勢の芸者が集まりお馴染み奥座敷での夕餉が催される。 何時ものメンバーが揃い、美しさに美味しさ・其れに芸術家・文豪たちの名台詞。誠に結構な宵が更けていく・・。

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-24

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted