わが家の茸
茸の未来小説です。縦書きでお読みください。
隣の家の奥さんがあわてて我が家に走ってきた。
「茸かして」
「どうしたの」
「昨日、夫がうちの茸のことをだらしないって言ったのよ、そしたら、三つともでていっちゃって」
「そう、ちょっとまってて」
居間に行って、ソファーの上からテレビを見ていた三つの茸にたずねた。
「おとなりさん、茸がみんな出ていっちゃったんだって、何でも、隣のご主人が、だらしないって言ったんだそうよ、かしてくれって奥さんが泣きついてきたの、ちょっとの間行ってくれる」
うちには赤青白の茸がいる。
テレビを見ていた白い茸がおきあがった。
奥さんの方に傘を向けてうなずいた。
「ありがとう、おねがいできるわね」
白い茸を隣の奥さんに渡した。
「白さんは、時代劇を見るのが好きなのよ、だいじにしてね」
「ええ、新しいのがきたらお返しするわ」
奥さんは茸をだっこしてあわてて家に戻っていった。
居間に戻って、残っている赤と青の茸に、どうして白はお隣に行く気になったのか聞いた。
赤い茸がテレビの画面で返事をした。
「隣の茸たちは本当にだらしなかったんだ、我々もつきあっていない、庭の見回りや家の中の見回りもいいかげんだし、ちらかしっぱなしだしね」
うちの茸は東北の山奥の茸の育成場で育ったのを雇った。相当の借料を育成場に払っている。
「隣の茸たちは九州の茸育成場のやつらだ、規律を守ることを教わっていない、だらしないやつらだ」
おそらく借料がやすいに違いない。
われわれの生活に茸は欠かせない。茸がいないと、野良鼠が家のコンクリートをかじってしまい、大変な損害になる。茸たちは特殊な周波数の超音波を出して、野良鼠に頭痛を起こさせる。それで野良鼠は庭にも入ってこれない。
鼠の育成場では礼儀正しい働き者の鼠が育っている。鼠はコンクリートをかじって食べ、街のいらなくなった古いビルを解体してくれる大事な働きをもつ生き物だ。
ところが育成場を逃げ出した鼠は野良鼠になって、人間の住むコンクリートの家に進入しコンクリートを食べてしまう。
茸はそれを防いでくれるわけだが、ちょっと気むずかしいところがある。育て方にもよるのだろうが、一緒に住む人間と折り合いが悪くなると、育成場に帰りたいといいだす。それだけならいいが、隣の家のように、いきなり出て行ってしまうことになる。家を出ていった茸は野良茸になって、野良鼠よりもっと悪さをする。あいつらは、夜になると歩き回って、野良鼠と手を組む。野良茸は家に雇われている茸たちが発する超音波を妨害する音波を出す。すると家に雇われている茸たちは一時だが寝入ってしまう。そのすきに野良鼠が庭の中に入り、コンクリートをかじるのだが、野良茸も野良鼠がかじった穴から家に入ってきてテレビを見る。
実は茸たちはテレビからでている光を吸収して栄養としている。だから茸を養うにはテレビを与えておく必要がある。
うちは岩手の茸の兄弟を三人かりているので仲がよく、一台のテレビをみんなで融通しあって楽しんでいるが、主張の強いのが二匹いると、二台のテレビを与えなければならない。しかも電気代がかさむ事になる。電気は宇宙ステーション太陽発電機から地球に届けられていて、家庭の支出の中で大きく占めるものとなっている。
ふつうの一戸建てだと、だいたい三人の茸がいれば十だが、大きな屋敷となると、五人も六人も必要になる。マンションでは、各家で一人いれば十分だが、マンション全体の管理のために何人者茸が必要になる。マンションの規模にもよるが、2,30世帯の小さなマンションでも十から二十、超高層マンションだと、何千人も雇わなければならない。
いつぞや月島の50階のマンションに住む友人の家にいったときだが、エントランスから、廊下から、いたるところに、茸がぴょこぴょこ歩いていた。マンションの防御のための見回りである。
人は野良茸を見かけたら交番にとどけなければならない、茸を勝手に捕まえて殺してしまうのは犯罪である。茸は人に直接危害を加えるようなことはしない。だから野良茸が直接襲ってくるようなことはない。一方、野良鼠はあぶない。とびかかってきて、コンクリートもかみ砕く歯でかみつかれたら、肉がえぐられてしまう。ただ鼠は肉を食べない。大けがをするだけだが、首のあたりでも噛まれたら動脈ごと食いちぎられ、死んでしまう。大事である。野良鼠は殺してもいいことになっている。
そういうことで、警察も茸をやとって、要人の警護に当たらせている。
隣の茸三人もどこかにいって、野良鼠と結託して悪さをしなければいいのが。
テレビに大変なニュースがながれた。
去年三千光年離れた星にいった探検隊が地球に戻り、茸と鼠を持ち帰ってきたのだ。驚いた星で、いろいろな生き物たちが混在していて、我々の星と同じように、人間が進化の頂点として生きていたが、まだ星間旅行をするまで科学が発達していなかった。
そういう星に行ったときには、我々の星のパイロットは相手の頂点にいる生き物とコンタクトをしない。向こうの星がパニックになるからだ。同じ程度の科学の発達している星とは、その星の主人の人間の性格を見極めて交流をする。ともかく、相手の星の生物たちの自然の発展を妨げたり、促進してしまったりするようなことはしないのが宇宙のルールである。
その星は自分たちの星を森球とよんでいた。森に覆われる星である。我々の探検隊は、そこで茸と鼠を発見した。我々の地球の生物は一度滅びている。新たにもう一度生物が生じ、進化が進行して、我々人間がまた頂点に立った。二次の地球の茸は全く別の生き物として進化し、鼠は動物として進化したが、コンクリートを食べる岩食動物になった。探検隊は森球の茸や鼠が一次地球にいた茸や鼠と同じ進化をしているものだったのでもってかえってきたのだ
森球の茸は激しく動かないし、鼠は動くがコンクリートではなく、肉や植物、それに茸を食べる。探検隊の隊長は森球の茸を我々の地星で増やして、人間の食料の足しにしようと思ったのと、森球の鼠に野良茸を食べてもらおうと思ったからである。
テレビに映っていた森球の茸の形は地球の茸と全く同じである。
アナウンサーが「この星はどうですか」とついつい持ってこられた茸に聞いてしまっていたが、森球の茸は神経系がなく、遺伝子の意志だけで生きているので、返事などするわけがない。アナウンサーはそれに気がついて苦笑いをした。
一方、森球の鼠は顎と歯の形が今の地球のものと違い、木をかじることはするが、コンクリートなどはとてもかめない。消化器系にはコンクリートを分解する細菌類がいないのでコンクリートは食料にならない。彼らはもっと柔らかいものを食べる。
昔の生き物たちの生態を知るためにも、昔の生き物を観察するにはとてもよい資料でもあった。科学者たちは早速、茸の培養と鼠の繁殖施設をつくった。
我が星の茸養育場では、言うことを聞かない茸が育つと、死刑に処す。死刑とはその茸を湿度20%の部屋に入れることで、茸は干からびて死んでしまう。ただ、少し時間がかかるので、その間は苦痛をあたえることになる。茸の愛護団体から、そういう茸を死刑にすることは反対しないが、苦痛を軽減するようにいわれていて、速乾性の部屋が開発されたが、その中に入れても、茸の水分が減っていくのには時間がかかる。愛護団体は森球の鼠にがぶっと食べてもらうのが一番苦痛が少ないだろうとも考えたのだ。森球鼠をはみ出し茸の死刑執行人に仕立てようとしたわけである。
隣の家では、茸がいなくなって2日後、秋田の育成場から新たに三人の茸を雇い、家が守られるようになった。そういって、隣の奥さんが貸した白い茸をかかえて持ってきた。
「ありがとうございました、いい茸さんね、うちも東北の茸養成所から茸をかりましたの」
と奥さんは茸を玄関先に置くともどっていった。白い茸は家に戻されて嬉しそうだ。何せ兄弟がいる。
「お隣さんではたのしかったかい」
主人が白い茸にたずねると、「一生懸命にもてなししてもらったよ、テレビを楽しんだし、ちょっと違ったところで暮らすのも良いもんだ」
と答えた。
「俺たちもいってみたいな」
残っていた赤と青の茸がうらやましそうだ。
「あの家に新しい茸がきたら、たまには遊びにいったり、遊びにきたりしてもらえばいいのよ」
家内がいった。
「そうだね、なぜいままで、そういうことをしなかったのだろう」
それを聞いた茸がこう言った。
「俺たちを人間が信用していないからだよ、野良茸になるのがこわいからさ」
「そう、でもあなたたちはそんなことしないわよね」
「うん、奥さんの言うとおり、俺たちは優等生だからな」
「そうじゃない茸もいるのね」
「隣の茸がそうだったじゃないか、あいつ等の養育場の教え方が悪かったんだな、もちろん遺伝的にだめなのもいるが、養育場の先生がだめなんだよ」
養育場で茸を育てるのは犬である。犬は元々家の守りの役割だったのだが、この星が何百万年もたったころ、コンクリートにおおわれて、コンクリートを壊す奴らから守ることが、家を守ることになり、犬の役割がなくなった。ほえるだけじゃ駄目だからな。ただ防御のための茸を育てる先生としては最も適した生き物になっていったわけだ。一次の地球ではウシや羊の先導者の役割をやっていたというのだから、その素質があるんだ。今は牛や羊や豚などの食料の家畜というものはいない。人間の食べ物は、すべて合成されたものである。食物工場で合成された肉や野菜など食料が作られ、毎日各家庭に運ばれてくる。
しばらくたってからのことだ。隣の家のご主人と奥さんが茸をつれてわが家をおとずれた。
「先日は、おたくの白さんをおかりして助かりました、白さんの話だと、岩手の育成場だということで、わたしどもも、岩手の方で探したんです、いいのがいなくて、秋田にちょうど三姉妹がいるということだったので借りることにしたのです。
黄色い茸が三人、隣のご夫妻の後ろに立っている。うちの三色茸よりちょっと小降りだがかわいらしい。
「この子たち、小柄だけど、とても頼りがいがあって、よく見回りもするし、整理整頓しっかりしてるの」
奥さんが、三人の茸の自慢をした。ご主人も嬉しそうである。
「今日はお宅の三色の茸さんと、お近づきにと思って、茸たちの好きな天然メープルシロップをもってきましたの、お宅の茸さんと一緒にどうかしら、私たちもおしょうばんしませんか、紅茶葉もてにはいりました」
「それは豪勢ですね」
うちの主人も私だって天然メープルシロップ入り天然紅茶が大好きである。あまりにも高価なので、年に一度飲むことがあるかないかである。
天然メープルシロップと天然紅茶は月の天然食品生産農場で作られているが、どちらも合成品は安く売っているが、やはり香りと味は天然のほうがいい。
「どうなさったの」
「主人の両親が静岡にすんでいるんですけど、結婚100年で、月の観光に行ってきたの、お土産にいただいたのよ」
月の上は一度滅んだ地球の状態を再現して、観光地としても運営されている。
現在地球人の平均寿命は、男女とも125歳である。だいたいはクローンで生まれてくる。地球の規則で、クローンは一体しかつくれない。なくなると、その個人がまた誕生する。しかし、もし突然変異が30%以上の遺伝情報におこったときには、あらたな個体と認められ、前の個体ももう一度クローンで誕生する。そう言うことで、地球上の人口は突然変異が起きた数だけ増加している。
人工的な突然変異を生じさせるのは禁止されている。
二次の地球は平和な世界である。
わが家の三色茸とお隣に新しくきた黄色の姉妹茸は仲良くソファーの上で、皿に入れられたメープルシロップにあたまを浸してなめている。
テレビは黄色の茸たちが好きだという、歌手のグループの番組をやっている。うちの三色茸はあまり音楽番組を見ないのだが、隣の茸たちが気に入ったのだろう、おとなしく一緒に見ている。
テレビの光は茸のエネルギーになるので、家の人たちと趣味が合うとテレビはとても便利なものになるわけである。
「お宅の三色茸、借りて何年になるのかしら」
隣の奥さんが天然紅茶を飲みながらたずねた。
「そうね、五年は過ぎたかしらね」
茸の育成場から借りた茸たちは、何年いてもかまわないし、違う茸とかえることはできる。
月々の借料をはらわなければならないが、もし新しいものと取り替えるときには、あらためてかなりの保証金を必要とする。だから、茸に逃げられると、家計は大変である。ほとんどの家庭では、一生同じ茸と暮らして、夫婦がなくなると育成場に返還される。
茸に寿命がないのである。ただ高層マンションから落ちてつぶれたり、野良鼠にかじられたりしてしまうと死んでしまう。
「相手がほしいなんて言わないのですか」
隣のご主人が聞いた。茸は個体によって違うが、子供を残したいといったん茸育成所に戻りたがるものもでる。そういうとき、新たな個体と交換するが、費用はかからず、むしろ茸育成所のほうから謝礼がもらえる。
家を守る茸は遺伝子操作で増やすことのできない生き物である。だから、育成場では茸同士のお見合いをさせ、運良く気があったカップルがいると、広い個室に住まわせて、胞子をつくらせる。雌と雄の茸がどのように交わって胞子を作るのか、人間にはいっさい見せない。彼らは見られているとわかると子供はつくらない。観察機器を設置しようなものなら大変だ。むしろ人間不信になって協力してもらえなくなる。彼らは家を守るようにとても勘のいい生き物になった。だからだまそうと思っても無理である。茸育成場では茸たちの好きなように生きてもらっている。
もし雌と雄の茸を借りると、本当に珍しいことだが、いつの間にか胞子をつくるのがいて、その胞子をもった茸を茸育成場にもどすと、宇宙旅行に行く費用がでるほどの高額の感謝金がもらえる。その養育場にとっても新たな遺伝子を持った茸を生みだすことがでるので大変な利益になる。
ただ、家を守ってもらうには雄だけとか雌だけの方が、まとまってうまく動いてくれるようだ。
「うちの茸はそういったことに興味はないようですね」
主人が答えると、向こうの奥さんが、
「もしうちの茸とうまくいったら、折半にしましょうね」と言った。
どうもとなりの奥さんは勘定高いようだ。
「まあ、茸しだいですから」
うちの主人はそう言う計算をこのまない。私もそうである。
胞子を作るのは雌だから、そんなこともあって、隣の家では雌茸を借りることにしたのだろう。
ともあれ、月の天然メープルシロップと紅茶はおいしかった。
それからしばらくしてからである。
真夜中、戸に何かぶつかる音がした。わが家の茸が寝室にはいってきて、隣の茸が玄関に来ていて入りたがっていると言った。
「どうしたのかしら」
夫も目を覚ました。
白い茸が、「どうも野良鼠に襲われたようだ」と言った。
夫が玄関の鍵を開けると、三人の黄色い茸が飛び込んできた。ぶるぶる震えている。
うちの三色の茸たちも玄関にきた。
「どうしたのだろう」
主人がきくと、赤い茸が、
「隣から逃げた茶色の茸が野良鼠と一緒になって隣の家に押し入ったらしい、茶色の茸たちの抑制超音波が強くて、この子たちの頭痛波が弱くなって、野良鼠が入り込んだらしい。しかも野良鼠は相当の数のようらしいよ、人間もあぶないな」
「どうしたらいいのかしら」
「隣に行ってみよう」
夫がでようとしたら、青い茸が「あぶない、もう遅いかもしれないかけど、110番したほうがいいな」
というので夫が警察に電話した。
黄色い茸たちの震えが止まらない。よほど怖かったのだろう。
「隣の茸さんたちを居間に連れて行って、テレビでも見せて落ち着かせてあげて」
そう言うと、三色のうちの茸はうなずいて「外にでないようにね」と、黄色い隣の茸を引き連れて居間に入っていった。
すぐにウーウーとパトカーが隣に到着した。ピポーピポーと救急車もきた。
かなりの銃声が響いた。警官が野良鼠を光線銃で撃っているようだ。
ボーという音もしている。これは火吹き銃だ。野良茸などをやっつける。
しばらくすると救急車がでていく音がする。
音がやむと玄関をたたく音がした。「警察官です」という声が聞こえる。
夫がでると二人の警官が立っていた。
「電話をくださったようで、ありがとうございました、野良鼠と野良茸は退治しました、もう大丈夫です、しかし残念ですが、お隣のご夫婦は野良鼠に噛みつかれてしまいまいた。病院に運ばれましたがお亡くなりになりました」
「そうですか、お隣の茸が逃げてきていますが、どうしましょうか」
「借りている養育場はこちらで調べます、もう遅いので、明日以降に向こうから電話をこちらにさせますので、今日はここにおいてやっていただけますか」
「はい、今うちの茸たちと居間にいます、来たときに三匹とも震えていました」
「野良鼠は三十匹もいたんです、怖かったでしょうね、もう安心です、お休みください」
警官はうちの電話番号を聞くと帰って行った。
次の朝、居間をのぞくと、茸たちは、白と黄色、赤と黄色、青と黄色と、隣の茸とペアーになってテレビを見ていた。
「もう大丈夫かしら」
私が隣の黄色の三人の茸に聞くと、こっくりとうなずいた。
「メープルシロップ用意したから、キッチンに来ない」
月のものではなく、いつも使っている奴だ。
そういうと、六人ともぴょんぴょことんでキッチンのテーブルに飛び上がった。
用意しておいたシロップの入った器に頭をいれえて、
「おいしい」と隣の茸も初めて声を上げた。
「今日、養育場から連絡が来ると思うわよ、そうしたら、車よんであげるから」
ここからタクシーで養育場まで帰る。当然、タクシー代は養育場で払ってくれる。
シロップをなめた茸たちはまたテレビを見に居間にもどった。
秋田の養育場から電話があり、警察から連絡があったことを言った。
茸たちにはもう一度メープルシロップを舐めさせ、タクシーをよんだ。
タクシーが来ると、うちの三人の茸たちも見送りに出て、黄色い茸が乗り込むまで頭を振っていた。黄色い茸も頭を振っている。茸同士の話は人間には聞こえない。
数時間で秋田の養育場から着いたこととお礼の連絡があった。
それから、二月ほどたった。
隣の家は更地にされ売りに出されていた。
隣の茸が戻った秋田の生育場から連絡があった。うちの三色の茸の個体ナンバーを教えてほしいということだった。教えると、「ちょっと待ってください」という声が聞こえ、すぐに、「岩手の養育場ですね、かなり高度な茸です、これはすばらしいですね」
と向こうの人がいった。意味が分からない。
「なんでしょう」
「黄色い茸が三人とも胞子をたくさんつくっているんです、話を聞くと相手はお宅の三人の茸だと言うことでした」
そう言えばとなりの家がおそわれて、一晩うちの茸と一緒にいた。そのときだ。
「すごいですよ、胞子は超一級品で、新たな茸が生まれると思います、胞子はうちの養育場とお宅の茸の養育場で分けることになります、お宅には国から感謝金がもらえますよ」
すぐにはのみこめなかったが、夫に話すと月ぐらいに行くお金がもらえるんだと言った。
ところが、国から支払われた金額はとほうもないもので、遠い星への旅行もできるほどだった。
「どうだろうね、地球と似ている森球にでもいってみたいね」
夫がそう言ってうちの三人の茸たちのために、新しいテレビを三つ注文した。白赤青の茸たちは、白は時代劇、赤は洋画、青はコメディーがすきで、お互い譲り合ってみていた。
性格がとってもいい茸たちである。
いい子供たちだ。
わが家の茸