サボテン

サボテン

つぶれた納屋のよこに、雪に埋もれたウチワサボテン。
学校帰りのサーシャがちょっとおうかがい。
「寒くないのかな」
「寒くないよ」
「けど君の生まれはもっとあったかいところだろう?」
「だから生まれたくにのことを考えるのさ」

砂漠のイグアナに、陽で焼ける岩場の住み心地。
サボテンは占い師みたいに、つらつら故郷のお話し。

「ね、想像すると自然とあったまるだろう?」
「うーん……」

サーシャは生まれてこの方雪国育ちで、イグアナも、焼けるようなお日様もよくわかりませんでした。
冷たい風に吹かれながら考えていると、気になるリータから雪合戦のお誘い。

「ちょっといってもいい?」
「ああ、いっておいで」

ちょっぴり萎びるウチワサボテン

「ごめんごめん」
「汗をかいているね、冷えちゃうよ」
「僕は大丈夫、きみも雪に埋もれてしまって、冷えてないかい?」
「なんの、砂漠の夜はもっと冷えるよ。それに雪は水の塊だろう? 私にとってはごちそうと一緒にねているようなものさ」
「ふうん、そんなもんかなぁ」

スパイスと真っ赤な唐辛子、砂漠の夜は皆それを食べて体を温めるんだと得意げなサボテン。

「ね、お腹のあたりがあったまるだろう?」
「うーん……」

サーシャは辛いのがちょっぴり苦手。蕪と豚肉の優しいシチーが好物で、それを想うとお腹がすいて少し肌寒い。
するとどこからともなくシチーの匂い。日も暮れて気が付けばそろそろご飯の時間。

「ちょっといってもいい?」
「ああ、いっておいで」

ちょっぴり萎びるウチワサボテン

「ごめんごめん」
「息がまっしろだ」
「からだがあったかいと息がより白くなるんだって。スープを飲んできたから。君はどう? 冷たい風で息苦しかったりはしない?」
「私は平気さ、風通しがいいほうが調子がいいんだ。風はちょっぴり冷えるけど……」

ちょっぴり萎びるウチワサボテン

陽がすっかり傾いて、サーシャは上着をグッと着こみます。風も次第に夜の風で、家々の煙突から煙が昇って、もう皆は団欒の時間。

「ねえ、よかったら家にくる? 夜はもっと冷えるだろうから」
サボテンは大丈夫、くにを考えれば自然と温まるさ、と一言。
「確かにね」

サーシャは家の暖炉と部屋のベッドを思うと、なんだか気持ちが温まって、少し眠くなります。

「じゃあ、僕はそろそろ帰るよ」
「ああ、また明日」

すっかり萎びるウチワサボテン

「ねえ、やっぱり家にくる?」
「……」

サーシャはそっとサボテンを鉢に入れて、二人で立派な暖炉のあるお家へ。


「どう、あったかい?」
「ああ、ポカポカだ」

サボテン

サボテン

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-20

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