ネモフィラの鏤められる一季節

ネモフィラの鏤められる一季節

 皐月(ごがつ)にわたしは土より生れた、誕生の日は久遠の空白、
 かの蒼褪めた神秘の色した ネモフィラの花は皐月にひらく、

   皐月にわたしは命と登り、肉享け鮮血かよわせた、
   わたしにとり かの花の青は肉感なくて土と緑に置きたくないの、

 皐月にわたしはましろく生れた、それからの日々を黒々と塗った、
 神経的に完全な青 かの花皐月に閃き暗闇穿って久遠の夢幻を胸ひらく、

   皐月にわたしは死骸を模倣し 石張に横臥し安息をえる、
   わたしにとり かの花は白灰の大理石(いし)に息なく硬く冷たく咲くべし。

  *

 悲願。まっさらに剥がれた積雪のうえ、歌とし月光降るように、
 わたしの死んだ一季節には 完全青(クラインブルー)の花を落して──重たく硬い空の瞼へ。

ネモフィラの鏤められる一季節

ネモフィラの鏤められる一季節

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-19

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