ネモフィラの鏤められる一季節
皐月にわたしは土より生れた、誕生の日は久遠の空白、
かの蒼褪めた神秘の色した ネモフィラの花は皐月にひらく、
皐月にわたしは命と登り、肉享け鮮血かよわせた、
わたしにとり かの花の青は肉感なくて土と緑に置きたくないの、
皐月にわたしはましろく生れた、それからの日々を黒々と塗った、
神経的に完全な青 かの花皐月に閃き暗闇穿って久遠の夢幻を胸ひらく、
皐月にわたしは死骸を模倣し 石張に横臥し安息をえる、
わたしにとり かの花は白灰の大理石に息なく硬く冷たく咲くべし。
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悲願。まっさらに剥がれた積雪のうえ、歌とし月光降るように、
わたしの死んだ一季節には 完全青の花を落して──重たく硬い空の瞼へ。
ネモフィラの鏤められる一季節