旅人
草原
旅人は草原にいた。
見渡す限りの明るいみどり色、少し見上げると太陽の光をめいっぱい吸い込んだ白い雲と、青空がどこまでも終わりなく広がっている。
遠くのほうには、ほとんど緑に飲み込まれた古い建造物が地面からちらほらと顔を覗かせ、かつてそこにあった大きな町の痕跡を残している。
時折り心地よい風が吹き抜け、あたりがサワサワと音を立てる。
その場でごろんと横になれば、日の暖かさと草の匂いに包まれてすぐに眠ってしまいそうだ。
長旅で色の薄くなった靴は草をかきわけ、急ぐでもなくのんびりと進む。
力の抜けるような陽気に思わず口元も綻んだ。
旅人