ハンマーライト

ハンマーライトっていうライトがあるっていうのを知ったらもう、それ知ったらもう

ドコモのスゴ得コンテンツにクーポンがあったので、水族館に行きました。
「水族館なんていつぶりだろうなあ」
地元に帰省した際、姉の要望で男鹿のGAOに行った時以来かなあ。私たち家族の前に居たご婦人たちのグループがGAOに居る豪太という名の白熊を、
「豪太さん豪太さん」
と呼んでいたのが、印象的だった。
「豪太さんは今日も元気ねー」
「そうねー」
みたいな会話をしていた。豪太さんの観覧エリアには豪太さんとカラスが一羽いた。そのカラスは豪太さんをおちょくるようにそのエリア中を跳んだり跳ねたり時には羽ばたいたりしていた。
「前に居たカモメは、豪太さんが捕まえて殺しちゃったけどねー」
「カラスは頭がいいから捕まえられないみたいねー」
そんな事をご婦人たちは話していた。
その時以来の水族館だなあ。多分。水族館は水族館というだけあって、色々なお魚がいた。何とか言っていう魚とか、なんとかっていう魚とか、なんとかっていうクラゲとか。なんとかっていう海老とか、蟹とか、ナマコとか、色々といた。
「あー」
「はー」
「へー」
そんな水族館内を私は、あーとかはーとか、へーとか言いながら回った。
そんな中に一つ、魚の紹介紙っていうのかな、紹介ディスプレイでいいか。紹介ディスプレイが無いものが一か所、一つあった。
「何だこれ」
その水槽の中には、小さくなったハンマーヘッドシャークの様な形の魚が泳いでいた。一匹。一匹しかいないこれ。これだけ。可哀そう。いや可哀そうかどうか知らないけど。魚が孤独を感じるのかどうか知らない。前にどっかの水族館の大水槽で飼育した、しようとしていたマグロかカツオかだっけか、そういうのが鬱になって死んだとかそういうニュースは以前ヤフーかライブドアで観たことあるような気がするけど。
「この魚は新種なんですよ」
その一匹だけの、小さいハンシャ―みたいなのが一匹だけの水槽を食い入るように見ていたからなのか声をかけられて、振り向くと係の人らしき人が立っていた。水族館の制服みたいのを着てた。だから多分職員の人だと思う。魚の帽子もかぶってたし。
「新種ですか」
「はい。ハンマーライトヘッドシャークって言います」
「ハンマーライトヘッドシャークですか」
「はい。ハンマーライトヘッドシャークです」
なんかバブルヘッドナースみたいですね。いや、まあ、ハンマーヘッドシャークのままでもバブルヘッドナースみたいだけど。どっちかっていうとそっちの方がバブルヘッドナースに近いかな。ライトがあれだよね。過剰っていうか。加積。
「これは、ハンマーヘッドシャークとチョウチンアンコウのアイノコなんですよ」
「えええ」
衝撃。衝撃の。衝撃のやつ。ハンマーで殴られてみたいな。
「ハンマーヘッドシャークとチョウチンアンコウのアイノコぉ。そんな事あり得るんですか」
「愛の力でしょうねー」
「はあああ。だって住んでる水深っていうか、そういうのも違うんじゃないんですか」
ハンマーヘッドシャークとチョウチンアンコウって。
「愛の力でしょうねー」
愛いいい。
「大きさだって違うでしょうよ」
馬鹿な私だって知ってますよ。チョウチンアンコウのオスってメスに吸収されるんでしょう。
「愛の力でしょうねー」
愛。愛かあ。
「あ、見てください」
その人に言われてハンマーライトヘッドシャークの水槽に向き直ると、ハンマーライトヘッドシャークのハンマーの部分が光っていた。ハンマーライトじゃんって思った。ハンマーの部分が光っている。ハンマーライトじゃん。ジュラシックワールド炎の王国のオープニングでインドミナス・レックスの骨を回収するためにラグーンの中を捜索していた小型の潜水艇みたいじゃん。
「まだ、はっきりとはしてないんですが、ロレンチーニ器官を受信機として電気を溜めて、それを発光バクテリアと一緒に放出してるんです」
「へー」
「凄くないですか」
すごいですね。
「凄いと思います」
「愛の力ですよ」
愛かあ。愛ってすげーな。あと、あれだ。いやらしいなあ。いわゆる、いわゆる異種姦でしょ、これって。いわゆる。いわゆるさ。それってさ、いやらしいなあ。いやらしいなあ。愛の力って。いやらしいんだなあ。

ハンマーライト

ハンマーライト

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-13

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