年賀はがき
疲れてました。自覚無かったですけども。
疲れている時、自分のコントロール権を全部は握っていない。握れていない。
疲れている時、ある症状が出てしまう。簡単。疲れている時は町にある看板とかを口に出して読んでしまう。そういう症状。出てしまう。
「すき家。松屋。吉野家。なか卯」
とか、そういう看板。スターバックスとか、ココスとか、ドトールとか、ケンタッキーとか、マクドナルドとか。そういうのを見るたび、目に入る度に口に出してしまう。読んでしまう。なんでかはわからない。でも、そうなっちゃう。で、そうなってはじめて、
「あ、私、今疲れてるんだ」
って思う。わかる。そういうサインと言えば、聞こえはいいかもしれないけども、結構気が付くまでに時間がかかる場合もある。疲れてるから気が付くのにも時間がかかる場合があるんだろうな。でも、気を付けないといけないと思う。だってそこは街の往来だから。家に居る時じゃないんだから。一人の世界に入ってる時でも無いんだから。コロナの昨今と同じように、全開になってる状態。色々な部分が。窓とかドアとか。私の中の窓とかドアとか。そういうのが全開になってる状態での口開きだから。だから気を付けないといけない。
こないだ、それでちょっとしたことがあった。
「年賀はがち」
郵便局の前を通った時、口が勝手に開いて、言葉が出た。年賀はがきののぼりが出てたんだ。で、それが逆になってた。裏表逆に。年賀はがきが年賀はがちに見えた。きの字ってさ、なんであそこ繋がってるバージョンが存在するんだろう。私が習ったきの字は、三画目のあの滑走路と、四画目の最後の離島が離れてたよ。でも、世の中にはきの三画目と四画目が陸路でつながってるバージョンも存在する。星空文庫もそうでしょ。それでしょ。陸路でつながってるバージョンのきでしょ。ほら。き。ほら。
「年賀はがち」
だから、逆になった時、きとちの字を読み間違えたんだ。年賀はがちになってしまったんだ。自分の口から年賀はがちが出てきてしまったんだ。年賀はがちっていう音が。声で。
「んふふふふ」
その時、疲れてるという自覚をした。したし、あと、最悪だったのは、隣に、すぐ近くに、すぐ側に通り過ぎる女子高生のちょっとした小隊が存在したこと。そしてその小隊が私の年賀はがちを聞いた瞬間、笑った事。
「あ、やばい」
って思った。
瞬間的にまずそれが脳内に出た。ヤバイ。の字。やばいって。年賀はがち笑われた。って思った。やばいって思った。
「殺さなきゃ」
って思った。
恥ずかしい私のそれを聞かれたから。年賀はがきだったら別に笑われても構わなかった。と思う。年賀はがきだもんだって。年賀はがきののぼりだもん。年賀はがきっていうのは最悪の最悪別に間違ってない。でも、私が口に出したのは年賀はがちだったから。それを聞かれてしまったのだから。だから、
「殺さなきゃ」
って思った。
バイオみたいに180度ターンしてすぐに殺さなきゃって思った。聞かれた。キモイって思われただろうな。いやまあキモイけども。でも、とにかく殺さなきゃって思った。既に殺す気満々だった。首とか締めたら死ぬのかな。って。とりあえずおもっくそ頭とか殴りつけたら気絶するのかな。って。ニ、三人の女子高生。JKの集団。小隊。
殺さなきゃ。
殺さなきゃいけない。証拠を残してはいけない。
年賀はがちって言ったことを覚えてる人間は殺さなきゃいけない。
「ふふ、かわい」
でも、なんか、女子高生の集団が、その後すぐに、
「かわい」
って言った。あ、かわいいんだ。って思った。そしたらあっという間に殺意はなくなっていた。再び180度ターンして家に帰った。
「かわいいんだ」
家に帰ってからもその事を考えた。年賀はがきののぼりが逆になっていたから、年賀はがちって読んだ事、かわいいんだ。かわいいか。かわいいかなあ。でも、かわいいって言ってたしな。そんでその日はすぐ寝た。お酒飲んですぐ寝た。
人殺さないでよかったなって思う。
年賀はがき