宇宙人。神。古代文明。貴方達はどれを信じますか?
現代を生きている主人公の『坂部 輝明』。
とある事から宇宙人にさらわれてしまう?
しかし。
さらったのはライラと言う古代人だった。
その意図とは?
輝明は現代人がミステリーそしている事をライラから知らされる事となる。
その真相とは?」
宇宙人。神。古代文明。貴方達は何を信じますか?これはとある青年の生涯の物語・・・。
・コンセプト。
UFOと言う概念。
そして。この主人公の住む町はUFOが度々目撃されている。
UFOは宇宙人なのか。
空をあり得ない様子で飛んでいるのだから飛行力学からして宇宙人に決まっている。
その様な固定概念。
でも。それを証明する術はない。
では人間がそれを行ったとすれば。
何処かの超大国。
それが秘密裏に行っている超科学だとすれば。
それでも説明はつかない。
もしくは、古代である人類が生き残っていたとすれば。
アーティファクトが発見された遺跡。
それらは地球上の遺跡を繋ぐように点在している。
ナスカの地上絵やピラミッド。歴史的観念からしても時間的に数万年的な相当なズレがある。
それが何故繋がるのか。
UFOは過去の遺産であり今でも現存しているテクノロジーなのでは。
それを今の人類はUFOを宇宙人だと思い込んでいるのでは。
UFOを神だと思う人もいる。
人類はUFOと言う宇宙人を起源。もしくは神として産まれたのではないのかと。
そう思う人も多い事も確かだ。
・謎の声達
とある時系列。
集まった人物達が項垂れる事になっていた。
「このままじゃ・・・。この星の未来は・・・」
「我々は良かれと思い文明を栄えて来ていた」
「だがしかし。この先に待っているのは争いと紛争の世界だ。そして己の力による絶滅」
「土地を奪い合う争いか・・・」
「そして力を誇示し合う『武器』の見せびらかし合いか」
「勘違いしている様だが『核』という物を絶対の超絶兵器だと思っているようだな。何て原始的で愚かな。何がニュークリアーだ。破壊の限りを尽くして放射能をまき散らし、死の大地を作り上げるだけの兵器じゃないか」
「それが兵器の美学と思っているのだろう。野蛮人共め。見方を変えれば、破壊だけで見ればこの宇宙を一瞬で破壊する兵器等もあるが。この先の人類にはそれを見出す事も期待できないし、それを見出させてはいけない。・・・どうする?」
「文明を超越させ過ぎたか・・・。このままでは我々も危ない。長き眠りにつくしかないかもしれんな・・・」
「確かに・・・。我々は文明を授けたこの星の行く末を守人としての責任があるのではないのかな?」
「・・・。見ろ。既に培った科学を兵器とし、人殺し用として開発し、他の土地へ攻め入っている部族がいる。・・・哀れな。これが我らが望んだ文明なのか」
「同じ天体に住む人々なのにな。何故この小さい土地で奪い合い、憎しみ合う様になってしまったのか」
「・・・我らの責任か?」
「解らないわ。でも。このままでは私達も危ない。『今回の人類も自分の利益の為に争う者』になってしまったのは否めない。このままでは私達の『ソーサリア』も巻き込まれてしまうわね」
「姿を消して見守る。そして可能性があれば更生の道を」
「とは言え地上は既に支配されている。何処へ?」
「我らの力をもってすれば空中。もしくは宇宙へですね。彼らは地上を離れる術は持っていません。ロケットとやらの力を持って地を蹴り上げる力はあるようですが、我々の力には遠く及ばず・・・」
・通常生活(物語を告示する主人公)
一人の青年が歩いていた。
学生服を纏い帰宅途中の様だ。
「あ~。暇だな。帰ったら何をしよう・・・」
呆けた表情を浮かべながら青年は歩んでいた。
彼の名は「坂部 輝明」。
近所のややしれた名門高校に通う男子生徒だった。
「バイトも禁止されているからなぁ。この間買ったゲームでもするしかないかな」
輝明は欠伸をしながら空を見上げる。
すると。
その視界の先には二つの光点が現れていた。
「ん?UFOじゃないのかっ!これは撮影しなければな。ここら辺じゃ当り前の光景だが・・・」
輝明は興奮しながらスマホを取り出し撮影を試みる。
「この・・・。動くんじゃねぇよ・・・。スマホじゃズームに限界があるんだからよ・・・」
輝明はスマホを構え脇を押さえながらも、光点を押さえようとしていた。
「あ・・・。消えやがった。これじゃあなぁ?}
輝明は今撮影した動画を確認する。
それにはズームボケした動画と、焦点が合っていない光点が写っているだけだった。
「ちっ!UFOを撮影するには三脚とデジカメ必須かよ。そんなもん持ち合わせていないっつーのっ!折角SNSの動画にアップして話題を集めたかったのに。これじゃ、偽動画って言われても仕方がないじゃないか」
輝明は今しがた撮影した動画を確認すると残念そうな表情を浮かべる。
「ま・・・。仕方が無いか。帰ってゲームして寝るか」
輝明はUFO撮影を諦めたのだろう。
自宅に帰る事になる。
自宅の扉を開ける輝明。
両親達はまだ仕事なのだろう。帰っている気配はなかった。
共働きである輝明の両親。
「あ~あ。母さんが帰ってくるまでまだ時間はあるな。今日の宿題でもしながら適当に時間を潰すか」
輝明は自室に入るとカバンから教科書とノートを取り出し、宿題に取り掛かっていた。
そして。宿題を終える輝明。時計を確認していた。
時計は午後8時を迎えていた。
「遅っせぇな。残業か?いい加減に腹が減ったよな。いいや。インスタント食品で晩飯を済ますかね」
輝明は台所に足を運ぶと、適当な食材を手にしてレンジで加熱していた。
それを平らげる輝明。
「ふぅ。まともな飯じゃないが、親父達も忙しいのは仕方が無いしな。これで我慢するしかないか。さて・・・。ゲームで遊んだら寝るとするかね」
輝明は部屋に戻るとゲーム機のスイッチを入れる。
輝明が遊ぼうとしているのはオンラインゲームの様だった。
「昨日はやられちまったが、今日は必ず勝って陣地を奪い取ってもっと領地を広げてやる。俺には必殺アイテムがあるからな」
輝明はコントローラーを持つと、笑みを浮かべゲームのログインを待っていた。
その刹那。
輝明の部屋に強烈な光が差し込んでいた。
「あぁっ!?何だこの光はっ!眩し・・・。雷じゃ・・・ない。これは・・・?」
輝明はカーテン越しに差し込まれる光に困惑していた。
しかし。光源が理解出来ない輝明。
カーテンと窓を開けると、その正体を確認していた。
しかし。輝明はその正体を確認する事は出来なかった。
目の前には目を瞑らないといけないほどの光源があった。
姿形を視認するのには不可能なほどの光源。
その途端。輝明の意識は闇に落ちて行った。
・拉致?
程なくすると。
輝明は目を覚ます事になる。
「ん・・・。俺は寝てしまったのか・・・?」
輝明は体を起こすと、辺りを伺う。
そこにはよく知っている自分の部屋ではなく、機械的とは言いにくいが、金属的な壁に囲まれた部屋にいる事に気が付く事になる。
「なんだよ。ここ・・・」
自身が横たわっていた所を確認する。
一応ベッドらしき物だが、掛け布団やマットレス等無く、寝ていた所その物が軟らかく弾力があり暖かい。未知の感触だった。
「夢・・・か?」
輝明は立ち上がると、ベッドらしき物や壁等を触れていた。
壁は固く。なのにほのかな弾力があり、しかも光を放っている。
輝明は自身の頬を抓ってみる。
「痛い。これ、本当に夢か?」
恐る恐る室内を歩く輝明。素足の輝明。床からは軟らかく心地よい暖かさを感じる事が出来た。室内は8畳程の広さだろうか。さほど広い事はない。
そしてよく確認すると、扉らしき物を理解出来た。
室内全体が発光しているので、良く見ないと解らないかもしれない。
その扉に近づく輝明。
「扉・・・。だよな。どうやって開けるんだ?」
扉らしき物には、取っ手も無く押すのか引くのか。はたまたスライドさせるのか。開け方が理解出来ないでいた。
するとその時。
輝明が格闘していた扉から一人の人物が現れる事になる。
「あらぁ?目覚めたみたいね」
声を発した人物は、扉を開ける事無く輝明の目の前に現れていた。
「うぎゃあぁぁぁっ!?」
突然の出来事に輝明は悲鳴を挙げる。
「だ・・・。誰だあんた!化け物っ!?」
輝明が卒倒するのも無理はない。
目の前に現れたのは、人間に似ているとは言え、眼が吊り上がって黒目しかなく。そして肌の色は青色で。さらに体毛も全く生えていない人物だったからだ。衣服は纏っているとは言え、それはほぼ布一枚に近い格好だった。
その容姿からは、女性らしい雰囲気を感じる事も出来る。
「あ・・・。あ・・・。あ・・・」
輝明は言葉を失うしかない。
それを理解した相手。
「驚くわよね。あんたから見れば私は化け物。取りあえず自己紹介といきましょうかね。私はライラと言うの。あぁ、貴方の事は解っているわよ。坂部 輝明ね」
ライラと名乗る人物。無表情のまま輝明を見つめていた。
「・・・は?理解が・・・追い付かない・・・。これ、夢なんだよな?だとしたら面白いかも・・・」
輝明は現実逃避するかの表情を浮かべていた。
「ゴメン。これ残念ながら現実なの」
ライラは意地の悪そうな表情を浮かべると輝明を見つめていた。例え容姿が違えど、その表情を輝明は理解する事になる。
「宇宙・・・人?俺はモルモットにされ実験材料にされるのか?嫌だっ!死にたくない!」
ライラは恐怖に支配される輝明を見ると呆れた表情を浮かべると呟いていた。
「あのねぇ・・・。混乱するのはわかるけれど。私があなたにコンタクトしたのはそんな物騒な話じゃないのよ」
「・・・。解らない。解らない事だらけで頭が爆発しそうだ。俺は何で宇宙人にさらわれた?何で言葉?日本語が通じる?俺は死ぬのか?家に帰る事が出来るのか?嫌だっ!助けてくれっ!」
輝明は身を丸めると防御姿勢を取っていた。
それを見ていたライラ。
「はいはい。取りあえず怖がる必要はないわ。私は貴方に危害を加える事は絶対にない。それを信じるか信じないかは貴方の勝手。そして何より。私達は宇宙人ではない。地球人よ。言葉が通じるのは私達の科学力で克服しているから」
ライラは混乱する輝明を宥めるかのように質問に答えていた。
「落ち着け落ち着け落ち着け俺・・・。夢でも現実でもパニックになったらお終いだ・・・。そうだ。夢でいい。このあり得ない現実を楽しもうじゃないか。夢の中なら死んでも問題はないしな」
そう言うと輝明は自身の両頬を拳で殴ると不思議な表情を浮かべていた。
「痛ぇ・・・。これ本当に夢なのかよ・・・」
余りの痛みに困惑する輝明。
「馬鹿ねぇ・・・。これが現実だって言っているじゃない。痛い思いをしてどうするのよ」
ライラは呆れ顔を輝明に送っていた。
すると。
「一応・・・。落ち着いた。現実逃避は出来そうにないな」
輝明は諦めた表情を浮かべるとライラを見つめていた。
「・・・ま。及第点は差し上げるわね。この様な事態になれば誰でもパニックにはなるのだけれども、輝明は予想より早く冷静さを取り戻したみたいね」
現実を納得した輝明に、ライラは満足げな笑みを浮かべていた。
「で?俺は何でここにいる?あんたが俺を連れて来たんだろう」
輝明は現実を理解した故に、自身の在りかをライラに問いかけていた。
「そうね。その質問になるわよね。・・・答えは簡単。あんた私達の船をカメラとかやらで撮影したでしょ。その記憶の抹消の為ね」
ライラは数刻前に輝明が撮影した自身達の事を話していた。
「あ・・・あぁ。つか、あれって君達だったのか。でも殆どピンボケだぜ?撮れたって言うにはほど遠いが・・・」
ポケットにスマホは入っていたのだろう。輝明はそれを証明するためにその画像を見せていた。
すると。
「あぁ。必要ないわ。貴方に限らず私達の情報を記録した者全てに記憶除去の処置をしているからね。それでも私達の情報を残す者達は後を絶たない。殆どイタチごっこよ。貴方の記憶を除去しても、他の人間達が私達の情報を記録する。まぁ、いつもの事ね?」
ライラは両手を上げるとふざけた視線を輝明に送っていた。
「訳わからん。何故隠す必要がある?俺達にはあんたらが宇宙人にしか見えないんだが。地球人だって言っていたよな。今の時系列の人種とは思えない。何処から来た?」
その質問にライラは答える事になる。
・宇宙人・古代人とは?
「私はソーサリアと言う所から来たの」
ライラは輝明を見つめる。
「はぁ?ソーサリア?」
「人々は私達を神と呼んでいるけれど、それは大きな間違い。神なんて存在しないのよ。強いて言い換えれば、貴方達が思っている神とは私達。思っている神とは違うのよ」
ライラは輝明を見つめる。
「訳わからん。ソーサリアって何なんだよ?」
輝明は瞬きを繰り返しながらライラを見つめる。
「・・・。私達は地球創生後に産まれた頃からいる地球人。そこで築き上げた超文明を世界を私達はソーサリアと呼んでいた」
ライラは落ち着いた様子で輝明に説明する事になる。
すると。
「突っ込み処満載なんだが。まず第一に。あんた宇宙人っぽいんだけど。つかそのまんまか?人間に似ているが目は真っ黒だし、髪の毛は無いし一般的に言われているグレイと言う宇宙人そっくりだ。正直怖いんだが。容姿は女性っぽく綺麗に見えない事もない・・・か?そして二つ目だが、過去にそれだけの文明を築いていながら、それが何故今に継承されていない?UFO?なのか?それが今の時代にはミステリーとされている。人類は猿人(アウストラロピテクス)→原人(ホモ・エレクトス)→旧人(ホモ・ネアンデルターレンシス等)→新人(ホモ・サピエンス)へ進化したと聞いている。超文明を持っていたのであれば、この退化は理解出来ないんだが」
輝明は学校の授業を思い出しながら、ライラの矛盾に突っ込みを入れる事になる。
「答えるわ。まず一つ目の答え。綺麗と言ってくれたのは嬉しいわね。でも、これじゃ答えにならない。私・・・達の見た目。それは地球創生後は、まだ成層圏のオゾン層が弱かったから。それ故に太陽からの紫外線が強烈だった。それ故に私達の皮膚は紫外線から守るために青くなり。そして目を守るために黒目が大きく発達したの。髪の毛も紫外線により直ぐに抜け落ちてしまう。だから頭皮のみが紫外線から守る為に発達し、私達の髪の毛は無いのよ。今の時代に生きる貴方達には不気味に見えるでしょうね。でも我々は数億年の時を経だちながら進化を遂げ、ソーサリアを築き上げた。超文明と言える世界をね」
ライラは真面目な表情で輝明の質問に答えていた。
「訳わからん・・・」
輝明は室内を見渡すと、自身が知りうる科学力を理解しながらも、現状を理解出来ないでいた。
室内は無音で、それでも壁や床が光を発している。輝明が知る様な、蛍光灯やLED照明や有機EL・導光板等の面発光照明等は存在しない。
輝明やライラが発する言葉も反響する事無くお互いに届いている様だ。
「そして輝明が言った進化の過程。人類は進化を何度も繰り返し。そして絶滅を繰り返してきた。私達はそれに巻き込まれない様に、その度に姿を隠してきたの。私達を神と勘違いしている人類を残してね。私達はキーパーヒストリーになる事を決めた。歴史の番人になる事により、絶滅する度に新しく産まれた人類の未来を示唆する為に、色々な技術を授けたの。でも・・・。人類は与えた技術を兵器として転用し、憎み・争い・殺し合い・奪い合い。そして何度も絶滅してしまった。私達が過去にいた理想郷であるソーサリアを再建する事は出来ないのかもしれないわね・・・」
ライラは輝明の質問に答えると、寂しげな表情を浮かべていた。
例えその容姿が今輝明が知る人類とは異なってはいても、輝明はライラの感情を窺い知る事が出来た。
「その・・・。その話が本当であれば。俺達の未来も破滅が待っているという事か?」
輝明はライラの説明を信じた訳ではないが、不安げな表情を浮かべている。
「そうよ。また同じ破滅が待っている事でしょうね」
ライラは輝明の発言に溜息をついていた。
「ともあれ。解らない。そもそもソーサリアってなんなんだよ」
輝明は今いる現状も理解できていないのだろう。ライラから伝えられた情報に困惑していた。
「ソーサリア・・・。私達の原点とも言える桃源郷ね。戻る事は出来るけれど・・・。それは過去に遡っての現実逃避でしかない。私達は人類を何度もここまで導いてきた。それを見守り粛清する義務がある」
「だからっ!それじゃ解らない。ソーサリアって何?」
輝明は要領の得ない説明を返すライラにイラついている。
「私達の原点。オリジンと言った方がいいわね。貴方達の言語で言う英語。Originよ。私達が求めているのはそこ。なのに人類は再生と絶滅を繰り返す。いっそのこと、完全に絶滅させて私達がこの地に戻った方がいいのかも」
ライラは悲し気な表情を浮かべる。
「冗談じゃない。絶滅なんて・・・」
輝明は言葉を失う。
「ま。今日明日のお話ではないわよ。貴方達の時系列で言う数世紀後のお話でしょうね。その時。貴方は既に死んでいるわ?言い方を変えれば、文明の特異点を迎えた時点でまた人類は絶滅。英語の方がいいかしら。シンギュラリティ。Singularityね。前回は宇宙に飛び出してワープ技法を編み出した時だったかしら。それを兵器に転用して自滅。その前は禁忌である時間転移を編み出して、やはりそれを兵器に転用して自滅。その前は・・・何だったかしらねぇ・・・?あぁそうそう。空間転移ね。地球と火星を瞬時に移動出来る扉を作り出して、それがワームホールに繋がり地球上の物全て一瞬にして何処かの宇宙空間に吸い出されて絶滅。はぁ・・・。他にも数え切れない位あったけれど、何度絶滅を繰り返すのかしら。どうせ、今回も私達の努力空しく絶滅するんでしょうね・・・。輝明が生きているこの世界も、もう長くはないでしょうね」
ライラは苦笑を浮かべる。
すると。
「待ってくれ。君・・・達?は数億年前からこの地球を支配している様だ。未だに理解は追い付かないが。貴女・・・ライラ・・・さん?が古代人であるならば、何故歴史からその姿を消した?超文明を持っているのであれば、そのまま現存して今の世界に顕現していてもいいんじゃないか?何故今の俺達の文明とリンクしない?何故分かれた?産まれた文明であればそれが何故俺達の文明と別れたんだ?何故一緒じゃない?」
輝明はライラの説明を理解しながらも興奮した様子を浮かべている。
「それは・・・」
答えるライラに輝明は言葉を続ける。
「それに。人類が創生して?滅びるまで?何万年かかると思っているんだ。その間。あんた達はずっと見続けていたと?あんた達何歳?いくら超文明を持っていたとしても。普通は寿命で死ぬだろ。超文明故の不老不死なのか?」
輝明はライラを見つめると困惑していた。
「そうね。あんたの言う通り。私達は不老不死ではない。でも厳密に言うと、それは不可能ではないわ。ただしそれは人口爆発の原因になるので厳しく管理されている。・・・。要は私達も寿命が来れば普通に死ぬのよ。だけれども・・・。私達の平均寿命は1万年。でも解る?数億年の歴史を見守る中では1万年なんて瞬き一瞬なのよ。貴方達から見れば途方もない時間なのでしょうけれどもね?」
ライラは現実の見解の違いを輝明に示していた。
「はい?寿命が1万年?あんた。本当に人間か?やっぱり宇宙人だろ」
輝明はライラが示す現実に理解が追い付いていない。
「さっきも言ったけれど、私達は地球人よ。宇宙人なんているのかしら。宇宙は広いからね。何処かにはいるのかもしれない。これは肯定も否定も出来ないわね。いくら文明を超越している私達でも解らないのよ。勿論私達は宇宙の何処に行く事も出来るわ。この宇宙を一瞬で破壊する事もね・・・。当然そんな事はしないわよ。貴方達猿同然の野蛮さは持ち合わせていない」
そのライラの言葉には輝明は憤慨する事になる。
「猿?俺達を猿だと言うのか!?あり得ないだろうっ!」
「ほら。それが証拠よ。直ぐに激高し、相手を攻撃する態度を見せる。・・・今はいい。御免ね?私は貴方を試す為に挑発する言葉を使った。でも、それはソーサリアの世界ではあり得ないしあってはいけない。多少の口喧嘩くらいはあったとしても、貴方達がよくある殴り合いや武器を使っての争いになる事は絶対にない。それは過度の争いは自滅を招くと皆理解しているからなのよ。だから私達は争いを拒む。でも貴方達は争いを好む人類になってしまった・・・」
ライラはわざと挑発した輝明を見つめている。
「話が逸れてしまったわね。そう。私達の寿命のお話。疑問に思うわよね。貴方達の寿命は、どう頑張っても130年位。今のありとあらゆる医学をもってしてもそれが限界。でも、私達の時代は・・・。さっきも言ったけれど、倫理を無視すれば不老不死は可能。それどころか死んだ人間どんな状態になっていても生き返らせる事も可能。だけれども、それは人口爆発を起こし死ねないが故の食料不足での飢餓の世界が待っている。それが実現されれば正に地獄絵図になってしまうのよ。飢えながらも死ぬに死ねない。だから、私達の医学の限界を迎えた時には素直に死を迎え入れる。とは言え、寿命1万年程度だけれどもね」
ライラは話の理解が追い付かない輝明を見つめている。
「それでも。お世辞にも私達の寿命は長くない。疑問に思っているでしょう。数億年からたった1万年程度の過去の私達が何で何度も再生と絶滅を繰り返す人類を見ていられるのかと。幾ら寿命が長い私達であっても、数億年の時間に耐える事は出来ない。だから。私達は長き眠りを繰り返しながら人類を見守る事が出来るの」
「コールドスリープって奴か・・・」
輝明はライラの黒い瞳を見つめる。
「ちょっと違うけれど・・・。まぁ、今の貴方達からすれば似た様な見解ね。私達は自分の時間を止める術を持っているの。それを交代で使いながら人類を見守って来たわ。起きている時間は100年。私達の人口は約200億人。この時代の人口である倍以上の人数ね」
「はいっ!?200億?それが今でも現存?何処に?」
輝明はライラの言葉を受けると言葉を失う。
「うふふ・・・。今の貴方達には解らないわよ。正に『次元が違う』のですからね。でも、その次元にたどり着いて。正にシンギュラリティの世界に達した時。それでも足りないけれど。・・・はぁ。またあんた達は絶滅しちゃうんでしょうね。また再生?メンドくさ・・・」
ライラは輝明に苦笑を浮かべていた。
しかし輝明には新たな疑問が浮上する事になる。
「やっぱり訳わかんねぇっ!でも。古代人さんよ。最初の疑問に戻るが、あんた達なんでその文明を今の時代に残さなかったんだ?何故撤退して新しい文明を見守る事になる?せっかく数億年かけて進化させた超文明なんだろ?俺は解らないが、漫画や映画で建物どうしでチューブ内を自動で動く車とか、宇宙の何処にでも行ける宇宙船とか。そんな物があったんじゃないのか?それがなんで撤退した?」
輝明はライラの腕を取ると問い詰める。
輝明の手には、青い皮膚ののっぺりとしたライラの腕が確認出来たが、人間と同様の温もりと軟らかさを感じる事が出来た。
「・・・」
思わずライラの腕を取った輝明。その人間と同じ感触に言葉を失う。
「このスケベ。あんた達から見たら、私はグレイと言う化け物でも同じ人間の女性なのよ。手を離しなさいな?夫のダルバスに誤解をされてしまうわ?ま、今は時間の中で眠っているけれどね?時代を超えた浮気?ある意味それも面白いかも。ま、それはあり得ないわね。DNA的にも無理があるわ?」
ライラはクスクスと笑うと、輝明の手を優しく離していた。
「その疑問に答える必要があるわね。それは、私達が貴方達と同じ『過ち』を犯したからなのよ」
ライラは輝明の瞳を見つめると、不敵とも悲しみとも言える表情を浮かべていた。
黒い瞳しかないライラ。それでも、輝明はその意を理解する事になる。
「うん・・・」
「私達は超文明を持っていた。それに奢ったのでしょうね。私達の祖先はその力を持って宇宙に進出を始めた。植民地を作るためにね。さっきも言ったけれど、私達以外の地球外生命体はいないと思っていた。当然それはいなかった。太陽系。それ以外の恒星系。幾多の銀河系にもね。あらゆる探索をしても、人類が生存できる星は見つからなかった。テラフォーミングが可能な惑星はあったけれども、膨大な時間がかかる。それで諦めて地球に帰ろうとした時だった。イレギュラーが発生した。帰り道に木星の衛星であるエウロパを探索したの。最初は所詮衛星と見向きもしなかったんだけれども・・・。探索したら生命の根源を見つける事が出来た。それは水。そしてバクテリアや未熟ではあるが魚類・両生類等。祖先達は狂喜乱舞した。こんな身近に生命が存在していた等とは。木星の衛星エウロパは太陽から遠く離れた天体。その衛星に生物が存在していたなんてね。そして・・・この後どうなったと思う?」
ライラは意地の悪い笑みを浮かべると輝明を見つめる。
「さぁ?新しい発見にお祭り騒ぎか?」
輝明はその場を理解するのが難しいのだろう。複雑な表情を浮かべていた。
「まぁ。ある意味合っているわね。お祭りと言う名の戦争ね。正に盛大なね」
「はい?争うのは止めたんじゃないのか?」
輝明はライラの言葉の矛盾に首を傾げる。
「それは今の私達。ご先祖様はそれを持ち合わせていなかった。だから新しい発見を争い、奪い合い、憎しみ合い。最終的に地球上の全面戦争となり、私達は一度絶滅した。それでも、また長い年月を経て私達は文明を取り戻したの。そして理解した。争い程醜く愚かな事は無いと」
ライラは静かに輝明の瞳を見つめている。
「何故ライラさんは滅びたはずなのにここにいる?やっぱり超文明の恩恵?」
輝明は既に時系列が解らなくなっているのだろう。呆けた表情を浮かべるしかない。
「ライラでいいわよ。輝明。あのね。今話しているのは私達のご先祖様のお話。今の時代から数十億年前のお話なのよ。当然私は産まれていないし。時間が突拍子もなく飛んでいるお話なので、輝明も混乱しているんでしょうね」
混乱している輝明をライラは宥めるしかない。
「そうね・・・。貴方達の歴史学者。その人達は過去の人類や文明。そして生命誕生等。それらを研究してそれを発表している。その過去のお話に何故輝明がいないのかと言われれば・・・。解るわよね。いるはずがないじゃない。私が話しているのはそれと同じ事」
・UFOとは?
すると。
「あ~もぅっ!理解出来ない事ばかりだっ!ともあれ今理解しているのは、古代人であるライラがここにいて。俺らが言うUFOの中にいる。UFOだからな。空だか宇宙にいるんだろう?そしてライラは古代人のダルバスって言う旦那がいる。そして俺は今すぐライラに殺される事は無い。これはあっているか?」
輝明は頭を掻きむしると、取りあえずの現状を理解しようとしていた。
「えぇ。合っているわよ。唯一違うとすれば、この乗り物は5次元に存在する飛行物体。貴方方が言う宇宙船ね。UFOとは呼ばないわ?それと・・・」
ライラは含み笑いを浮かべている。
「な・・・なんだよ」
輝明はライラの表情に緊張している様だ。
「私が貴方を殺さないと言うのは本当。傷つける事も絶対に無い。・・・でも。ここでの記憶は完全に消させて貰うわ?」
ライラは意地の悪い笑みを輝明に送っている。
「・・・え?」
ライラが伝える現実に、輝明は言葉を失う。
「考えてみて?貴方がここで得た知識と情報を今の人類に伝えたらどうなると思う?殆どの人が戯言(ざれごと)や虚言(きょげん)と一笑に付すだろうけれども。一部の情報機関の人達は貴方を逃さない。私達の存在をなんとなく理解している機関もあるようだわ。貴方を捕らえ、その情報を兵器開発の為に使う事でしょうね。最悪私達の存在を捉え・捕まえ。その技術を我が物にする為にね。だから私達は身を潜めているのよ。既に地上は貴方達の物。また絶滅しても、私達はこの地上を取り返す等しない。私達がするのは、産まれてくる人類の手助けをしながら、またソーサリアを再建する事。それが出来た時。初めて私達は地上に戻ろうとしているのよ。・・・理解を得るのは難しいでしょうね。私達にとっては遠い遠いお話になるの。貴方達がいい子ちゃんであれば簡単なんだけれどもねぇ?」
古代人の壮大な計画をなんとなく理解したのだろう。輝明は恐る恐る問いかける。
「解った様な気がする・・・。でも、この乗り物は過去の遺物って考えでいいのか?ここ・・・。宇宙なんだよな?」
取り敢えず自身に危害が加わらない事に安心したのだろう。輝明は周りを見渡す余裕が出来た様だ。
輝明は窓から外を眺めていた。その眼下には地球を見る事が出来ていた。
「すげぇ・・・。俺、宇宙にいるじゃん。嫌だ・・・。この光景を忘れたくない・・・。でも、地球って本当に綺麗なんだな。ガガーリンが言っていた言葉を思い出すぜ・・・。『地球は青かった』・・・か。これが絶滅してしまうってのかよ・・・。何度も・・・」
「その気持ち・・・。私達も・・・同じよ・・・」
ライラは輝明の呟きを聞くと頷いていた。
輝明は周りを見渡す。
室内は8畳ほどの広さだろうか。
床・壁・天井は白色の落ち着いた光を放っていた。
「遺物なのに・・・」
輝明は窓の外と室内を見渡すと不思議な表情を浮かべる。
「馬鹿ね。輝明から見れば『遺物』イコール『過去の物』なのでしょうけれど。現役バリバリの乗り物よ?最高スペックとは言えないけれどもね。・・・そうね。見せてあげる。どうせ忘れるんだから派手に行きましょ」
ライラは笑みを浮かべ、タブレットらしき物を取り出すと指を這わせていた。
その途端。輝明は強烈な眩暈を感じていた。
「う・・・お・・・?」
輝明は頭を押さえると、倒れそうになるのを堪えていた。
「はい。到着。輝明。外を見てごらんなさい?」
ライラは意地の悪い笑みを浮かべると、外を伺う事を輝明に促していた。
「う・・・ん?」
輝明は頭を押さえながら、言われた通りに窓から外を伺う。
「地球は?何処に行った?」
輝明は窓の外を伺いながら地球を探していた。
「何を言っているの?ここは地球から3万光年離れた銀河の中心。目の前にあるのはブラックホールよ?」
ライラは正に文明が追い付けず、知恵遅れの様子を見せる輝明に笑みを浮かべていた。
「・・・は?ブラックホール?」
輝明は再び窓の外を伺う。
そこには全く光を放たない小さい物体が存在していた。
「あれがブラックホール?つか危なくね?それ以前に小さくないか?距離感が掴めないからよくわからんが・・・。ブラックホールって巨大な渦巻きみたいのを想像していたんだけどもな。まだ遠いのかね」
地球から一瞬で遠ざかってしまった事も理解出来ない輝明。それでも目の前にブラックホールがあると言われても現実を理解する事が出来なかった。
「いいえ。目の前よ。地球で言う1Km位かしらね」
ライラは輝明の疑問答えていた。
「確かブラックホールって、超体積の天体が超新星爆発を起こした時になる中性子星だったけか?それが重力レンズと言う光すら曲げてしまう程の、あり得ない重力波を生み出しているって聞いた事があるんだが」
輝明は記憶を掘り起こすとブラックホールの構造を思い出していた。
「へぇ。良く知っているわね」
ライラは感心した視線を輝明に送る。
「あ・・・。まぁ。宇宙には昔から興味があったからな。色々調べて知っていたんだよ」
輝明は知識溢れる古代人のライラに関心された事により笑みを浮かべていた。
「それより。ねぇ輝明。派手に行きましょって言ったわよね。貴方今の時代で言うジェットコースター等好きかしら?」
ライラは、輝明がこれからどれだけの恐怖を感じるのかを期待しているのだろう。わくわくした表情を浮かべていた。
それを理解した輝明。
「わからん事ばかりだが・・・。一つだけ理解したよ。ライラ・・・。あんたサドだろ。古代の嗜好はわからんが」
「あらぁ?私ってそんな風に見えるかしらぁ?うふふ・・・。あぁそうね。体は椅子に固定して置いてね。じゃ古代人である私達の娯楽にレッツゴー!」
ライラはタブレットらしき物を操作すると、船は一直線にブラックホールへと向かっていた。
「まさか・・・」
輝明は言葉を失う。そして慌ててシートベルトらしき物を自身の体に纏わせていた。
「天然のジェットコースターへ行くわよっ!防御シールド解除っ!人工重力解除っ!推進力停止っ!」
ライラは笑みを浮かべると船に身を任せる。
その途端。輝明とライラの重力は失われ、浮遊感が漂う。
しかし。ブラックホールの引力に引き込まれる船。
上下左右とも解らない引力に翻弄される事となっていた。
「うわあぁぁぁっ!?」
ジェットコースターを経験した事が無い訳ではない輝明。しかし、それとは比較にならない感覚に絶叫を挙げる事になる。
船はランダムに回転しながらブラックホールに吸い込まれていった。
宇宙空間に限らず、この様な回転と超重力に巻き込まれてしまえば、人間など即死するはずだった。
しかし。
「あははははっ!どう?輝明!これを体験するのは現代の地球人で貴方が初めてかもよ?」
ライラは激しく回転する船内で輝明に笑みを浮かべている。
「う・・・。ぐぇ・・・。止め・・・」
輝明は既に限界とでも言う様に、体を椅子に任せていた。
「あははっ!やっぱりきついみたいね。いいわよ。嘔吐しても問題ないからね?それより楽しんで?この船は破壊される事はないからね。ブラックホールからワームホールへ。ワームホールを抜ける瞬間が最高なのよね。推進力を止めているから、吸い込まれる時のあの回転!グルグルグルっ!毎秒10万回転!最高だわっ!?ほら!来たわよ!」
ライラは目を輝かせると、天然のジェットコースターを楽しんでいた。
「脳みそが・・・。ライラ・・・。俺、人類が絶滅する前に・・・。死・・・」
輝明は呟くと、ボンっと言う音を立て体を爆発させ、その体を四散させていた。
すると。船はワームホールを抜け、通常の宇宙空間へ現れていた。
「ふぅっ!楽しかったっ!ねぇ。輝明。あんたはどうだった?」
ライラは輝明を見つめる。しかし、そこには輝明の骨の原形が残らない爆死した死体があった。
「う~ん・・・。やっぱりきつかったかしらね。何処まで覚えているのかしら。ま、いいわ。戻ってきなさいな?」
ライラは輝明の原形の残らない死体の破片に手を翳すと、タブレットを持ちながら言葉を発していた。
「アン・コープ!」
ライラは輝明の死体に手を翳すと、それにタブレットを重ねていた。
すると。輝明の木っ端微塵になった死体の残骸は、青白い光を放ち一ヶ所に集まる事になる。
「う・・・。うん・・・」
輝明は目を擦りながら目覚めていた。
「輝明・・・。大丈夫?やっぱり今の人類の貴方にはきつかったかしら・・・」
ライラは申し訳なさそうな表情で輝明を見つめる。
「俺・・・。死んだんじゃ・・・?」
輝明はライラの黒い瞳を見つめながら呟いていた。
「うん。死んだわよ。だから、私が蘇生したの」
ライラは悪びれる事も無く現実を輝明に伝えていた。
現実を理解した輝明。
「アホかあぁぁっ!俺。本っ当にお花畑が見えていたんだぞっ!何がブラックホールの天然のジェットコースターだっ!自殺まっしぐらじゃねぇかっ!何すんだっ!」
輝明は身を起こすとライラを睨み付けていた。
「あ・・・。あはは。御免なさいね。現代人の体がここまで弱いとは思わなかったから。今回多分初めて試したのは輝明だし・・・。まぁいいじゃない。死んで生き返るって事は、今の現代人には出来ない事でしょ?」
ライラはバツが悪そうに輝明を見つめる。
「あぁもぅっ!解らない事ばかりだっ!ワームホールに入って死ぬ直前までは覚えているよ。それで?ここは何処になるっ!?ジェットコースターの行先は?」
輝明は自身の四肢の状態を確認しながら窓の外を伺う。
そこには先ほど見た小さいブラックホールを確認していた。
「元に戻って来たのか?」
輝明は首を傾げる。
「いいえ。違うわよ。ここは別の宇宙。宇宙は沢山存在しているの」
ライラは笑みを浮かべると、理解が出来ない輝明に説明をしていた。
「はぁっ!?別の宇宙?宇宙って幾つもあるのか?どれ位?」
やはり現実離れした話に輝明は理解が追い付かない。
「う~ん。私達も全ての宇宙を調査するのは不可能だからね。私達の科学力でも数千垓(がい)個としか認識していないけれど・・・。当然全ての宇宙を把握している訳ではないわ?いい所5000億位しか調査はしていないわね」
「垓!?京(けい)より上!?そんなにあんの!?俺・・・。家に帰れるのか?」
輝明は困惑した表情を浮かべる。
「大丈夫よ。また同じ道を帰れば問題ないからね。でも・・・。また、あんた死んじゃうけれど・・・ね」
ライラは真っ黒の瞳で上目遣いをすると、申し訳なさそうな視線を輝明に送っていた。
「マジかよ・・・。帰りたいけどまた死ぬのか・・・」
輝明は引きつった表情を浮かべるしかない。
「だ・・・。大丈夫。また生き返らせてあげるから。たとえ、貴方の体が木っ端微塵になったとしてもね?」
ライラは先ほどの輝明の様子を理解したのだろう。嗚咽を堪えながらも、復活の約束をしていた。
「俺。そんな酷い状態になっていたの?木っ端微塵!?考えたくないんだが」
輝明は自身の状態を理解すると、恐怖に身を震わせる事になる。
「あ・・・。あはは。一瞬のお話よ。大丈夫。貴方がどんなに粉みじんになろうとも。分子レベルで破壊されようとも。私達の技術で生き返らせるから。安心してね?」
「出来るかぁっ!怖いわっ!」
その後。
地球上空に戻って来た輝明達。
「はぁ・・・。はぁ・・・。この野郎。また俺を殺しやがって・・・。生き返っているから文句は言わないが、礼も言わない。これが古代文明の力だとはな。あり得ない・・・」
輝明はライラを睨み付ける。
「いやぁねぇ。怒っちゃイヤよ?」
ライラは輝明の様子にしらばっくれている様だ。
「ともあれ。これが俺達が思っているUFOだと思っていいんだな?ブラックホールにわざと吸い込まれて、天然のジェットコースターだと遊べるほどの物」
「そ。貴方達が思っているUFOはこの様な物よ。普段は次元が異なる5次元の世界にいる私達。それがこの地球上の3次元に現れるとこの様な事になるの。私達にとっては、貴方達が自家用車として乗っている車と同じ感覚ね。ただし使い方が少し違う。私達がこの次元にUFOとして現れる時は、貴方達の文明や思想や倫理等を確認する時。当然その時には貴方達の目に入る存在として現れる。それを、貴方達はUFOとして、そして宇宙人として捉えているみたいだけれどもね。だけれども。先ほども説明した様に、それは私達古代人なの。同じ地球人ね。ただし時間軸は異なる。おわかりかしら?」
ライラは真摯な瞳で輝明を見つめていた。
「成程な・・・」
色々と突っ込み処満載と言う表情を浮かべながらも、輝明は頷いていた。
「あんた達が言うこのUFOで他に質問はあるかしら?」
ライラは輝明の質問に答える姿勢を見せている。
「そうだな・・・」
輝明は今まで様々なメディアで見て来たUFOを思い出していた。
そして思いついた物。それはUFOの形状や飛行形態だった。
「なぁライラ。俺達は今まで色々なUFOを見て来た。いわゆるアダムスキー型・・・要は円盤状の船体で、その下部に付いている幾つかの半球状の物。他にもただの球体だったり。様々な色や形に変形する物。葉巻型だったり。分裂したり。そして何よりあり得ない動きをするUFO。まぁ、確かにあり得ない動きは先ほども理解したが、あんな動きをしたら、中にいる君達は物理の法則を無視して死んでしまうのではないか?・・・まぁ、俺はさっき2回ほど死んだけどな」
輝明は思いつく限りの質問をライラにぶつける。
すると。
「あらぁ?2回じゃないわよ。帰りには50回位死んでいるから。だって生き返らせる度にあんた爆発して死んじゃうんだもの。蘇生する度にボンっ!結構面倒くさかったわね。それでも輝明への負担を減らす為に防御シールドは展開したし、重力コントロールはしたし、推進力も正常にさせたんだけれどもね?」
ライラは笑みを浮かべながら現実を輝明に伝える。
「・・・。聞くんじゃなかったよ・・・」
自身が置かれている現実に慣れて来たのだろう。輝明は苦笑を浮かべるしかなかった。
「あはは。まぁそれはいいとして答えるわね?」
ライラは輝明の様子を理解して、笑いを堪えると話を続ける。
「そうね。UFOの形状の違いなんだけども。それは私達の人種・・・。う~ん。貴方達で言う国の違いなの。貴方達の乗り物とか移動手段とか。国によって結構違いがあるものでしょ?それと一緒。古代人である私達でも200億人もいるわけだからね。国とはちょっと違うけれど。ある程度の境目はあるのよ。当然だからと言って、争いは絶対に無いのだけれどもね」
ライラの説明を理解する輝明。
「にしても形が違い過ぎないか?変形したり雲みたいな形になったりするんだぜ?確かに俺達の文明では車とか電車とか飛行機はあるが。デザインこそ違えど基本的な形は同じだぜ?あまりに違い過ぎないか?」
「それを理解して貰うには、私達の文明を理解して貰うしかない。不可能よ。単純に空飛ぶ乗り物はその様な物だと思って貰うしかないわね。強いて言えば、変形や分裂に関しては、私達が調査をする為に必要な変形や分裂と言っておくわ。その様な形状になった方が調査しやすいからね。それと、あり得ない動きも説明しましょう。もしあなた方の飛行機や他の乗り物が、重力・慣性・剛性・モーメント・応力・力点。色々あるけれど。それらを無視して直進していた乗り物が減速もなくいきなり後進したり停止したら、貴方達に限らず私達も含め生命の体は耐えられないわね。それを可能にするのが、やはり科学力となるのよ。・・・。そうそう。輝明達の人類は。『ある意味』それを可能にしているじゃない」
ライラは悪戯気な表情を浮かべると輝明を見つめていた。
「はぁ?俺達の技術?科学力?そこまで発展していたか?」
輝明は直進している飛行機が突然後進する動く様な素振りを思い浮かべていた。当然その様な動きをしたら、中の乗客は先ほど輝明が体験した様な死を迎える事だろう。
「私達ね。この時代で言う『ゲーム』と言うのを見た事があるの。それは戦闘機が弾を撃ちながら敵を倒していくという物。そのゲームの中では戦闘機が縦横無尽に動いているじゃない?でも現実にそんな動きをしたら?機体は木っ端微塵。乗っている人も即死でしょうね」
ライラはゲームという物を見た事があるのだろう。例えに挙げていた。
「ゲームかよっ!そりゃ当たり前だっ!仮想世界じゃないかっ!なんでもありだからな」
ライラの発言に輝明は苦笑を浮かべるしかない。
「でも。あんた達のゲームって言うのは『戦争ごっこ』が多いのよねぇ・・・。こりゃ、絶滅して当然か・・・」
ライラはふざけて遠い目をして見せる。
「ぐ・・・」
ライラの発言に輝明は言葉を失う。それは先ほどまで自分が遊ぼうとしていたゲームを思い出したからだった。
輝明が遊んでいたゲームは、オンライン上で戦争をして他プレイヤーと陣地を奪い合うという物だった。
「あはは。まぁそれは冗談にしても。私達のあんた達が言うUFOはそれらを克服した乗り物なの。突然の反転や急加速。急停止。今の貴方達の科学力では実現できない原理ね。説明しても理解を貰う事は出来ないわ。科学・物理。貴方達の文明の数万倍の内容になるからね。簡単に説明しようとしても、現代の物理学者も言葉すら理解出来ないと思うわよ?」
それには言葉を失うしかない輝明。
先程のゲームの話を聞くと沈黙していた。
すると。輝明は思いついたかのようにライラに質問していた。
「あぁ。もう一つ質問がある」
「いいわよ?何かしら?」
ライラは質問を促す。
「これまた沢山あり過ぎて困るんだが。UFOのサイズだ。今まで俺達は君達?のUFOを見てきたが。大きいUFOはまだいい。だが小さいUFOはどうなんだ?俺も見た事は無いが、話によれば米粒みたいなUFOもいるって事だ。このサイズにはどうやっても入れないだろう。どうなってんだ?遠隔操作か?」
輝明は現れるUFOのサイズに疑問を覚えていた。
「成程ね。それも確かな疑問だわね。確かにUFOのサイズはフェムトサイズから太陽程の大きさまで様々よ」
「フェムト?聞いた事がないんだが。古代語?小さいのか?」
輝明は聞いた事が無い単位に首を傾げる。
「う~ん。今の貴方達の技術であれば知られているとは思うんだけれども、一般的ではないのかしら。ナノサイズって知っている?その2つ下位の単位ね。センチ→ミリ→マイクロ→ナノ→ピコ→フェムトになる。そのサイズのUFOよ。当然人間の目に見える事はないわ。小さすぎるからね」
「いまいちピンと来ないが・・・。そんな小さなUFOにどうやって乗るんだ?」
「それも科学力故よ。私達は原子レベルで体を小さくすることが出来るの。とは言えいくら超科学が発達しているとはいえ、私達の限界はピコまで。フェムト迄は今の私達の技術を持ってしても無理ね。フェムトサイズは遠隔操作でしか動かせないわ?恐らく数千年後には出来る様にはなるとは思うけれど。それに比べ、超大型のUFOは私達のサイズを変える必要はない。要は用途によって使うUFOのサイズは異なるの。人類観察なのか。何かの作業用なのか。宇宙広範囲での探索用なのかとかね?」
ライラは両手でUFOのサイズを表していた。
「サイズの幅が広すぎて良く解らんが・・・」
目に見えないサイズから太陽程の大きさまでのUFO。それには輝明も頭を抱えるしかない。
・古代文明とは?
「まぁUFOの正体は理解した。なぁ・・・。人類は再生と絶滅を繰り返してきたんだよな?」
輝明はライラを見つめている。
「・・・?何度も言っているでしょう?その通りよ?出来ればそれを止めたいと努力している私達がいるのも解っているわよね?」
「この地球にはさ。あくまでも俺達が知りうる限りの古代文明があるじゃん?例えばピラミッドとかナスカの地上絵だとか。それ以外にもモアイ像とかストーンヘンジとか・・・。それらってのはさ、余りに過去の話過ぎて考古学者ですら説明がつかないんだよな。ライラ達は過去の人類の文明に対して干渉して来たって事だけど、今言った事にも干渉して来たのかい?大抵が宇宙人なんちゃらって話に落ち着いているようだけどな」
輝明は自身が知りうる古代文明を並べると、ライラ達がそれに干渉して来たのかの疑問が浮かび上がっていた。
「そうね。その答えはイエスになるわ」
ライラは戸惑いもなく答える事になる。
「え・・・?」
即答するライラに輝明は言葉を失う。
「今輝明が言った全てに当てはまる訳ではないけれど。その一つの答えは天体の動きを確認する事。これはストーンヘンジに限らず、地球上の未発達生物に教えて来た事よ。サークル状に出来ている遺跡全てと思った方がいいわね。要は地球が太陽を廻る1年を理解させる事。それを理解させる事により穀物の栽培期間を教える事が出来るの。今の貴方達には当たり前の事になるのかもしれないけれど。当時の人類には、食料を搾取するには必携とも言える事ね。それを理解するには天体と言うか太陽の位置を理解させる必要があった。夏至・冬至。私達はそれを理解させる事により、穀物の収穫時期を理解させた。はぁ・・・。何度も教えて来たんだけれどもね。また絶滅しちゃうんだから・・・。まぁ、それはいいわ。要は暦ね。それを教えるには陽の光を理解して貰う事が必要だったの。それには陽の光には陰がある事を理解して貰う必要があった。だから円形状の構造物を作り、その隙間から差し込む太陽の陽を読む事によって今がいつなのか。それを理解する知識を与えたわ。今の貴方達で言うカレンダーね」
「ストーンヘンジみたいな物か?」
輝明はライラの説明を聞くと、イギリスにある遺物を思い出していた。
「そうよ。あれは日時計でありカレンダーになるの」
「でもよ。あれって巨石が立石の上に置かれているよな。どうやって乗せたんだ?当時は重機等無かったのでは?」
輝明はストーンヘンジを思い出すと、当時の建築技術では不可能である事を理解していた。
「あぁ。それは簡単よ。だって、作り上げたのは私達なんだから。私達は使い方を教えただけ。作ったのは私達よ?当時の技術者達が、面白がって作り上げた物ね。当時の人類の反響を見たくて作り上げた物なのよ。・・・下らない。タダの見栄っ張りだけね。当時の人類が出来ない技を披露しただけの話なのよ。それが今の人類には宇宙人が訳あって作り上げた物なんじゃないかって話題になっているみたいだけれどもね。とんだお門違いだわ?」
ライラの言葉に多少幻滅する表情を浮かべる輝明。
「この話が本当であれば、歴史のロマンと宇宙人のロマンのへったくれもないな。歴史ロマンと宇宙人説を唱えている人達は馬鹿みたいじゃないか。こんな簡単に歴史がわかってしまうとな」
輝明は正に現実の現実に苦笑を浮かべる事になる。
「大丈夫よ。貴方が家に帰る時には、全ての記憶を失っているのですからね?」
ライラは逃げようのない輝明に笑みを浮かべている、
「あぁもぅ!それはいいよ。逃げられないのはわかっているからな」
輝明は両手を上げると降参の意を示していた、
「それで?他にも知りたい事はなぁい?大サービスよ?全て答えてあげる。この後に記憶は無くなるけれどもね?」
ライラはふざけた視線を輝明に送る事になる、
当然。それは輝明が知りたい内容を予測しているにしか過ぎなかった。
「沢山あり過ぎて困るが・・・。なぁライラ。あんた達の容姿って言うのは今も数億年前の過去も殆ど変わっていないんだよな?」
輝明は改めてライラの容姿を見つめている。
「そうよ。私達は創生された時からこの容姿。例え数億年経ったとしても、私達は輝明達の世界に順応する様に進化をする事は無い。それは私達が別次元に入り込んで、今この地球の環境に影響を受ける事が無い事になるからね。私達の容姿と言うか環境は、先程話した私達の絶滅後以降と同じ事になる。・・・で?」
ライラは輝明の疑問に先を促していた。
「いや・・・。言っちゃ悪いんだが・・・。その容姿だろ?文明を授けたって言うけど。その姿で現れて今の人類?過去の人類?の前に突然現れて文明をレクチャーするのか?俺だったらパニックになって逃げ回ると思うんだがな。まぁ・・・。今だけで見れば納得はしているけどな」
輝明は容姿の違う生命体が目の前に現れれば、誰しもが混乱すると思っている。
「確かにその疑問も理解出来る。でもね。それは今の世界を貴方が生きているからなのよ。言い方を変えれば、特異点直前の文明を持った貴方達に私達が文明を授ける為に現れる事はない。後は特異点を迎えた人類がどうなるかを見届けるだけなのよ。まぁ。今の様に記憶除去の為に動いている事は多数あるけれどね。でも。文明が未発達な時は話は別。私達はより良い文明を築き上げる為に、様々な知識を授けたわ。それでも輝明の疑問も解る。私達は貴方達が言うグレイの姿の化け物で人々の前に姿を現すしかない。そこで出てくるのが正に宇宙人や神ね。私達はその容姿から最初は恐れられたものの、空から飛来して来た宇宙人や神として勘違いされていたのよ」
ライラは人差し指を挙げると、過去の説明をする事となる。
「これ・・・。答えを聞いたら考古学者が一斉に辞めてしまうかもしれないんだが・・・」
ライラが突き付ける現実に、輝明は遠慮しながら声を挙げる事になる。
「何?遠慮しないで?」
ライラは笑みを浮かべながら輝明の言葉を待っている。
「例えば・・・。ペルーにあるナスカの地上絵だ。様々な憶測が飛び交っているが・・・。一般的なのはUFOの離着陸滑走路だな。でもライラの話では宇宙人はいないし、ライラ達のUFOの滑走路?ただの地上の落書きが?技術・・・?測量が凄いのは認めるが。本当に滑走路なのか?」
輝明はナスカの地上絵を思い浮かべる。
それには、渦巻いた尻尾を持つ猿・蜘蛛・ハチドリ・猫・宇宙人のペット?幾何学模様等を思い浮かべる事になる。
「ナスカ・・・?あぁ。あれね。地上に書いた落書きね。私はその時眠っていたけれども。話は聞いているわ。UFOの滑走路?馬鹿じゃない?輝明もこの船を理解しているとは思うけれど。UFOが離着陸するのに滑走路なんて必要ないのよ。何考えているのかしら。現代の飛行機や戦闘機じゃないのよ?何が悲しゅうて猿の尻尾をグルグル回りながら飛び立たなくてはいけないのかしら。目が回ってしまうわ?あれは当時を監視していた者の悪戯ね。・・・タイミング的にダルバスじゃないかしら。後で締めあげてみるわね。まぁ。それはいいわ。ナスカの地上絵と言われる物は、宇宙人や宗教的な意味は全く無いわ。あれは、当時文明を授けた私達に『この様な事も出来ますか?』と『絵』を差し出されて、当時のダルバス?いえ。技術者が模倣してあげたに過ぎないわね。要はただの巨大な落書きね。広大な砂地だったから落書きし放題だったのでしょうね。私達はそれを描き上げて、当時の人類をこの乗り物に乗せて空から見せてあげた。それなりの娯楽にはなったのでしょうね」
ライラの説明を受ける輝明。
「あぁ・・・。宇宙人のロマンが・・・。考古学のロマンが・・・。これを知ったら、どれだけの考古学者が籍を失うのか・・・」
輝明はふざけて項垂れて見せていた。
「あははっ!現実なんてこんなもんよ?でも。この現実は今の時代には伝わらない。せいぜい『今の記憶』を満喫することね?」
ライラはこの記憶を持ち帰る事が出来ない輝明に、不敵の笑みを送っていた。
・複数の人類の歴史とは?
すると。
「もういぃ!もっと知りたい事があるっ!今の記憶を失うっ!?上等だ!でも俺の好奇心を満足させてくれっ!」
既に観念している輝明。更なる情報をライラに求めていた。
「あははっ!輝明!いい感じで壊れて来たわね!いいわよ!次は何を知りたいの!?」
ライラも輝明の様子に満足しているのだろう。輝明の次の質問に目を輝かせていた。
そのライラの様子に悩む輝明。
「次のミステリーは何にしよう・・・。いや違う」
輝明はライラを見つめる。
「・・・?」
ライラは不思議そうな表情を輝明に向けていた。
「ライラ・・・。今俺が聞いた『歴史』は、今の俺達の文明の歴史だよな?」
「そう・・・よ?」
ライラは輝明が何を言おうとしているのかが解らないでいる様だ。
「今言ったナスカの地上絵やストーンヘンジ等。これらは今の俺らの人類が残した遺産なんだよな?だったら、俺達の前に絶滅した人類の遺産って何処かにある物なのか?時間が経ち過ぎたから完全に風化して消え失せてしまったものなのか?」
輝明は何度も再生と絶滅を繰り返している人類に疑問を覚えていた。
幾ら再生と絶滅を繰り返しても、前人類の文明の痕跡は何処かに残っているのではと。
「なるほどね・・・。そこまで思うか・・・。う~ん。基本的には残っていないわ。一番は時間の経過ね。それによる風化。極稀に貴方方が言う。古代文明の『オーパーツ』として残っている事もあるみたいだけれども。でも・・・」
ライラは言葉に詰まる。
「何がある?」
輝明はライラの様子に唾を呑む。
「絶滅の原因は自滅や破滅や運の悪い自然現象だけではない事もある。・・・私達による意図的な殲滅よ」
「え・・・。ライラ達が残った人類を殲滅したって事か?」
輝明は古代人であるライラ達が、文明を破壊する様子を想像する事になる。なぜ、その様な事をする必要があるのか。
「そうよ。説明するのは難しいのだけれども・・・。数人類に渡る話になるわね。その中で明らかに間違った進化を遂げる人類がいたりするのよ。私達がいくら説明しようともそれを受け入れない。そのまま行けば、特異点を迎える前に人類は絶滅する。一番多いのは、今の貴方達より数百倍とも言える好戦的な人類。常に戦争をし、いがみ合い。自分の利益の為なら他人等どうなってもいい。その人類達は私達の世界にまで侵入を試みて文明を奪い取ろうとする・・・。他にも人類発展の要となる生殖行為を間違った楽しみ方をする人類。要は同性愛だけの世界。それでは人類は数を増やす事は出来ない。・・・残念ながらその様な進化を遂げた人類には、私達は殲滅を試みるしかない。殲滅は正に一瞬よ。苦しませない為にね。心苦しいけれどもね・・・」
ライラは人類を抹消した時の事を思い出しているのだろう。悲痛な表情を浮かべていた。
「そんな事があるんだ・・・。俺達は大丈夫なんだよな?」
輝明は自身の人類が殲滅される時を想像しているのだろう。思わず身を震わせていた。
「今の所はね。貴方達の文明は既に特異点直前まで来ている。さっきも言ったけれど、この時代に私達が現れて技術云々を言う事はない。特異点を迎えた今の人類がどうなるかを見守るだけになるわね。まぁ・・・。このまま行けばいつもの事でしょうけれどね・・・」
ライラは既に結末を想像しているのだろう。溜息をついていた。
「まぁ。それはいい。それより・・・。思い出した事があるんだが」
輝明は今まで見たり聞いたりした記憶を掘り返すとライラに問いかける。
「何かしら?」
「人類を殲滅したのが古代人であると言うのなら・・・。俺達の人類の神話に出てくる『ソドムとゴモラ』の地を焼き払ったとある。多分それって俺達の過去の人類だと思うんだが。まぁ神話と言うか聖書か?俺達の人類で言う『キリスト教』になるんだけどな。その神話はライラ達になるのか?」
それを聞いたライラは暫し腕を組む。
「うん。あっていると思うわね。先程も話したけれど、性の乱れね。恐らくリンクする言葉が、あんたが言っているキリスト教の『産めよ増やせよ地に増えよ』になる。どんな文明でもその言葉を定着させたのは私達。性の乱れはその意から外れる事になる。私達が望んでいるのは、とっとと人口増やして発展しなさいよ。ですからね」
「ソドムとゴモラの名は?って怪獣みたいな名前だな」
輝明は怪獣っぽい名前に首を傾げる。
「あははっ!恐らく私達古代人の誰かが付けた地名ね。ゴメン。なんでそんな地名になったのか迄はわからないわ?」
「でもそれって二つの地名なんだろ?その時の人類は二つの国?なのか?しかなかったのかね」
輝明は現在ではこの地球上に多数の国がある事を理解してる。当時は二つの国しかなかったのか。
「あぁ。それはね。人類滅亡や私達が殲滅とは言っても、必ずしも地球上全ての人類が滅亡するって訳でもないのよ。まぁ、滅びる時は大抵が地球上全てになる時の方が殆どだけれどもね?あんたが言った例の場合は地球上全てではなく、一部の部族だけになるわね。この文明が地球上に広まったらいけない。他の好ましく発展している種族に悪影響を与えてしまう。その時にはピンポイントでその部族だけを殲滅するの。要は今の地球で日本だけを吹き飛ばすと想像すればいいわ?」
ライラは輝明が住む日本を、UFOの窓から覗き込むと攻撃する素振りを見せていた。
「止めてくれっ!怖いわっ!・・・でも。日本を一瞬にして絶滅させる兵器?やっぱり核なのか?」
輝明はふざけて慄いて見せるも、その殲滅の破壊力に興味を持っていた。
それを理解したライラ。
「本当はね。争いを好むあんた達にそれを教えたくはないの。でもま。いいわ。どうせあんたは記憶が残る事は無いのですからね」
ライラは溜息をつくと輝明を見つめる。
「原理を聞いたって俺じゃどうしようもないよ」
輝明は苦笑を浮かべていた。
「ちなみに、今あんた『核』と言う兵器を口にしたけれども。私達から見ればこれほど原始的で野蛮な兵器は無いわ。ただ破壊と死の大地を作り上げる兵器。相手を倒して陣地を奪おうとも。放射能渦巻く死の大地になっていたらどうしようもないじゃない。まぁ。それはいいわ。私達はそもそも相手を憎んで殺すための兵器は持ち合わせていない。確かに破壊兵器ではあるけれども、それを使うのはその様な時だけ。その兵器の名は。恐らく貴方方人類にも残されているかもしれない。『ゲヘナ』。これは開発者の名前ね。この兵器の特徴は、ピンポイントで一瞬にして地を焼き払う兵器。貴方達の核兵器は、使用すると放射能が他の地域に流れて行ってしまい、破壊をしていなくともその地を死の大地に変えてしまう。ゲヘナに至ってはそれが無い。ゲヘナを放たれた地域は、正にその地域のみを一瞬で焼き払うのよ。生物・文明ごとね?そして延焼した煙が指定した場所以外に流れる事もない」
輝明はライラの説明を受けると頷いていた。
「確かに・・・。聞いた事があるかもしれない。ゲヘナの炎が人類を殲滅させたと・・・。これも恐らく聖書だな。悪い。俺は宗教には殆ど興味が無いから憶測でしかないがな。・・・お~怖。取りあえず俺達はライラにターゲットにされていないみたいだ」
輝明は頭を掻くしかない。
「うふふ・・・。正に取りあえず今は・・・ね?」
ライラはタブレットを取り出すと、操作する仕草を見せる。
「何も無い事を祈っているよ」
・望まれている事とは?
「他に聞きたい事は?結構教えたと思うけれども」
ライラは輝明に問いかける。
「あり過ぎるわっ!宇宙人・古代人・地底人・神話・お化け・霊の世界・死の世界・天国地獄・神の世界・超常現象・超能力・UMA・・・。考えたらきりがない。でも・・・」
輝明はライラの質問に言葉を失う。
「・・・」
ライラはそれに答える事は無い。
「なぁ。ライラ。俺は確かに最初にライラに会った時にはパニックになったけど。ライラは俺にコンタクトを取った理由をはっきり説明してくれた。俺はもう、ライラを敵だと思ったりする事はない。この後俺がどんな質問をしても答えてくれるのだろうが、結局記憶を消されてしまうのではどうしようも無いしな」
輝明はライラの漆黒の瞳を見つめていた。
すると。
「あはは・・・。恥ずかしいわね。グレイである私の瞳をしっかり見つめてくれたのは輝明が初めてよ?今まで記憶除去の為にここに連れて来た現代人は、大抵がパニックになりながら無理矢理記憶除去を行ってきたからね?」
ライラは恥ずかし気な表情を浮かべると輝明から視線を逸らしていた。
「聞きたい事は沢山あるが、もういい。それより教えてくれ。俺はライラからソーサリアである理想郷への想いをたくさん聞かされた。人類は何度も滅亡し、それでも古代人達は理想郷であるソーサリア復興の為に頑張って来た。俺達は・・・。何をすればいいんだ?」
輝明は真摯な瞳でライラを見つめていた。
「輝明・・・」
ライラはその輝明の様子に言葉を失う。
「絶滅を繰り返してきた人類。俺達もまた同じ末路を迎えるのか?でもそれじゃ・・・。ライラ達の苦労はいつ報われる?ゴメン。俺はライラ達古代人の努力など微塵にも解っていないが・・・。今の話を聞くと、永遠に無理なんじゃって思えて・・・」
輝明はライラの肩を取ると沈黙していた。
輝明の感情を理解したライラ。
「ありがとう・・・。輝明。貴方は優しいのね。相手の気持ちを理解する事が出来る人。そして、相手が思い悩んでいる事を理解して、それに対して解決する道を考える事が出来る人。貴方なら、もしかしたらこの今の人類を滅亡させる事を防ぐ事が出来るのかもしれない・・・」
ライラは輝明の心を理解すると、目じりに涙を浮かべていた。
「まっ!まさかっ!俺はそんな大それた事が出来る人間じゃない!でも、ライラ達古代人の事を考えると・・・」
輝明はライラの涙を理解すると言葉に詰まっていた。
「この女泣かせ。私、ダルバスと結婚したの間違っていたのかしら。輝明と結婚していた方が良かったのかも・・・」
ライラはふざけて輝明に誘惑の視線を送っていた。
例え容姿は違うとはいえ輝明はそれを理解する事になる。
「じょっ!冗談はやめてくれっ!」
輝明は色々な意味合いでその冗談を真っ向から跳ねのけていた。
「あははっ!ウブねぇ?解っているとは思うけれど冗談よ。私には愛する夫ダルバスと、娘レイナがいるのですからね。でもありがとう。ダルバスがくたばったら、あんたを誘惑しに来るからね?」
ライラはふざけて輝明にウィンクを送っている。
「あ・・・。あはは・・・」
輝明はそのライラの態度に曖昧な笑みを浮かべるしか無い様だ。
すると。
ライラは輝明に毅然とした視線を送っていた。
「ねぇ。輝明。もし先程の貴方の気持ちが本当であれば、約束して欲しいの」
「約束?」
「そう。ただしこの約束には拘束力はない。約束と言うかお願いね。貴方の先ほどの気持ちが本当であれば、可能である限り今のこの世をソーサリアに近づけて欲しい。今の貴方にそれが出来るだけの力が無いのは解っている。そしてそれ以上を望む事も無い。でも。この先。この先の未来。もし貴方にそれが出来るならば。可能な限り今度こそ絶滅を回避する世界を。私達の世界をここまで理解してくれたのは多分貴方が初めて。それだけは覚えておいて・・・ね?」
ライラはそう言うと、輝明の頬を手に取り唇を送っていた。
「あ・・・」
輝明はグレイであるライラの唇を理解する。その感触は人間そのものだと。
「うふふ・・・。今のはダルバスには見せられないわね。これは秘密よ。誰にも言っちゃダメよ?」
ライラは恥ずかし気な笑みを浮かべると輝明から離れる。
「あはは。ありがとうライラ。この後、俺はここでの記憶を記憶を無くすんだろう?約束も忘れるだろうが・・・。それでも約束するよ。俺が出来る事ならなんでもね」
輝明はライラの瞳を見つめる。グレイであるライラの漆黒の瞳。今の輝明にはそれが普通に見えていた。
手を取り合う輝明とライラ。
それはお互いの温もりを忘れないが為の握手だった。
「・・・帰る?」
ライラは名残惜しそうな視線を輝明に送っていた。
すると。
「おいおい。本気で浮気するつもりか?愛するダルバスって旦那と、可愛いレイナって子供が待っているんだろう?俺は現代と古代との面倒くさい浮気なんて堪忍だぜ?裁判は現代か?古代か?」
輝明は苦笑を浮かべながら冗談を言うとライラを見つめている。
「うふふ。そうね。この出会いは私達だけの秘密にしておきましょ?」
ライラは輝明の様子に複雑な笑みを浮かべている様だ。
「それじゃ・・・。貴方を家に帰すわね・・・。記憶を除去するけれど・・・いい?」
ライラはタブレットを取り出すと、遠慮がちに輝明に問いかけていた。
「ん・・・?絶対にヤダ・・・。とは言っても無理なんだろう?」
輝明は最初にいたベッドに横たわりながら笑みを浮かべている。
「そうね・・・」
輝明の言葉にライラは悲し気な視線を送っていた。
「はぁ~・・・。宇宙人と思っていたのは地球人である古代人かぁ。遺跡もUFOも。全部ライラ達の古代人の仕業とわねぇ・・・。こりゃ考古学者や宇宙人を信じている学者は仕事を失うなぁ。ははは・・・」
輝明は無機質に光を放っている天井を見つめていた。
「・・・」
ライラは輝明の感情を理解しているのだろう。言葉を発する事は無かった。
すると。
「なぁライラ。俺が今の文明に帰った後でも、また逢う事って出来るのか?あ、勘違いしないでくれよ?友人って事でな」
輝明はライラとの再訪を望んでいた。
しかし。
「ゴメン。それは多分ない。貴方は記憶を失うし、仮に貴方の前に私が現れても思い出せないはず。まぁ。死ぬ直前であれば、脳のニューロンが記憶を取り戻している事はあるかもしれないけれど・・・」
ライラは輝明の要望に困惑した表情を浮かべるしかない。
「そうか・・・」
輝明は残念そうな表情を浮かべる。
「じゃ・・・。帰ろ?」
ライラはタブレットを取り出すと、輝明に向けていた。
「そうだな。でもライラ。ありがとう。でも本当に残念だよ。この記憶を持ち帰れないとはね。それでも感謝だよ。とてつもない貴重な経験が出来た。何度も殺されたのは正に覚えていないと言っておこうかね」
輝明は皮肉を込めた笑みをライラに送っている。
「う・・・。うっさいわねぇっ!どうせ全部忘れるんだからっ!ほらっ!とっとと行きなさい!」
ライラはタブレットを操作する。その途端輝明の体は宙に浮かび上がっていた。
すると。
「おっと。ライラゴメン。俺からもお返し」
輝明は浮かび上がりながらも強引にライラの頬を捉えていた。
そして自身の唇をライラの頬に送っていた。
「え゛・・・」
突然の輝明の行動にライラは言葉を失う。
「あははっ!これでお相子だ。当然これは『俺達』の秘密な!古代人のダルバスさんにばれたら俺は八つ裂きにされてしまうからなっ!じゃあなっ!ライラ!出逢えた事に感謝するぜっ!?また逢えたらいいなっ!」
ライラから手を離した輝明。
その姿はその場から消える事になる。
「輝明・・・」
ライラは地球に戻った輝明を想像すると言葉を失っていた。
・Earth's next destination(その後の地球の行先)
「ん・・・。あれ・・・。俺いつの間に寝ちまったんだ?」
輝明はベッドの中で目を覚ます。
「時間は・・・。やべっ!遅刻寸前じゃんっ!ゲームもつけっぱなし?なんで!?」
輝明はベッドから飛び出すと、テレビとゲーム機の電源を切ると慌てて制服を着て家を飛び出していた。
「輝明!朝ごはんはっ!?」
飛び出す輝明の背後からは、母親が朝食を摂ることを促していた。
「いらないよっ!間に合わないじゃないかっ!」
輝明は母親の言葉を無視すると、学校へと足を運んでいた。
そしてその数年後。
高校と大学と卒業した輝明。
輝明は上流企業へと就職していた。
エスカレーター式に昇進していく輝明。
しかし。
世界は戦争を繰り返していた。自国の利益を得るが為に他国に攻め入る。
それはテレビ越しでの話だった。テレビの中で人が殺されようが飢えようが。所詮それはテレビの向こうでのお話、
自分がいる日本は平和だった。
しかし。輝明には何か引っかかるものがある、
自分達だけ平和でいいのか。銃や爆弾で殺される事も無く飢える事も無い。
戦争故に。人種故に。世界では苦しんでいる人達が沢山いる。
このままでは世界は滅びてしまうのではないか。
それを理解した輝明。
輝明は辞表を会社に提出していた。
自身の目的は漠然としていた。
それでも世界を崩壊に導いてはならない。
それ故に輝明は行動を開始していた。
輝明は世界平和を目指すには、ここ日本では力が足りないと思ったのだろう。
某大国へと足を運び、今までの経験を活かし経済と政治的な力をつける事となる。
その後。
世界に画期的な事が起こる事になる。
それは某大国で初となる、日系の大統領に輝明が選出された事になる。
異例の事態に世界中は沸き立った。
そして輝明が提唱した事は、平和的な世界統一。
全ての国境と言う概念を捨て、地球が一つの地球と言う星になる事。
それを提言し活動を始める事になる。
荒唐無稽とも思える活動。
全ての武器を捨て、国境を取り払い人種の壁を取り払い。そして手を取り合う事。
争う事の無益さ。そして空しさ。奪い合うのではなく皆で共有しよう。分け与えよう。
それを輝明は浸透させていった。
そして。歳月は流れ・・・。
輝明は寿命を迎える寸前にまでになっていた。
ベッドに横たわる輝明。
「プレジデント・・・」
側近は咳込む輝明に心配げな視線を送っていた。
「大丈夫だ・・・。今日はいつもより体調はいい・・・。もう・・・。私の役目は終わった・・・。ようやく世界が一つになり、争いの無い世界を作り上げたのだからな・・・。悔いはない・・・。だが、しかし不思議だ・・・。何故私はここまで『人類存亡』の為に動いたのか・・・。勿論間違った事はしていないと思うし、後悔もしていない。この様な行動の原動力は何だったのか・・・。解らないな・・・。何故ここまでがむしゃらに・・・」
輝明はそこまで言うと瞳を閉じていた。
「プレジデントっ!」
側近は慌てて輝明の様子を伺っていた。
「あぁ・・・。大丈夫だ・・・。すまないが・・・一人にしてくれんかね・・・」
輝明は手を振ると側近を部屋から出ていくことを促していた。
渋々とそれに従う側近達。
一人になる輝明。
「あぁ・・・。」
輝明は純白の天井に向かって手を差し伸べていた。それは何かに縋る様な仕草にも見える。
「私は・・・。過去に何か大事な『約束』をしたような気がする・・・。でも解らない。何の約束をしたのか・・・。でも、その約束を果たした様な気もする・・・。約束をした相手・・・誰だ・・・」
輝明は天井を遠い目で見ながら、過去を思い出していた。
「逢いたい・・・。約束をした人物に逢いたい・・・」
輝明は涙を浮かべるとその瞳を閉じていた。
輝明は死を迎えようとしていた。
その刹那。
輝明の前に一人の人物が現れていた。
「やっほーっ!輝明!元気してたかしらぁ!?お望み通り会いに来たわよっ!って既に死ぬ直前だもんね。元気なわけないか」
目の前に現れた人物。
それは世間一般で言われているグレイと言う宇宙人だった。
しかし。
「古代人の・・・。ライ・・・ラ・・・」
輝明は意識朦朧の状態でライラの名を呼んでいた。
「あははっ!記憶除去もしたけれど。この状態であれば流石に思い出すかな。・・・ともあれ祝辞を述べにこさせてもらったわ?おめでとう!彼方は私達が思っていた以上の速さでこの文明の争いを収束させたわ。まだ特異点も迎えていないのにね。これなら特異点を越えても、争いによって人類が自滅する事は無い・・・。多分ね?」
「約束・・・。果たし・・・た?」
輝明は朦朧とした視線をライラに向けていた。グレイと言うライラの記憶は無い。普段であればSPを呼ぶのだろうが、それでもライラが傍にいると言う不思議な安息感に包まれていた。
「うんうん!大上出来!褒めてあげる!」
ライラは輝明のベッドに座り込むと、輝明の頭を撫でていた。
「あはは・・・。なんとなく・・・思い出したよ・・・。君には・・・何度も殺されたね・・・」
輝明はライラに力ない笑みを浮かべる。
それには慌てるライラ。
「ちょ・・・っ!余計な事を思い出してんじゃないわよっ!あれはお遊びでの事故じゃないっ!」
ライラは輝明の視線を受けると、思わず顔を逸らしていた。
「あはは・・・。これで・・・。君達の理想郷である・・・。ソーサリア・・・に近づけるかな・・・。ゴメン・・・。もう目が見えない・・・。君の声も・・・感触も・・・」
輝明は手探りでライラを探していた。そして呼吸は止まり、その手は力なく落ちる事になっていた。輝明は死んだのだ。
ライラはその輝明の手を取る。
「大丈夫よ・・・。貴方は私達の世界に招待するわ。今はお休みなさい。本当にお疲れ様・・・。目覚めた時は私達の世界よ・・・?」
ライラは笑みを浮かべ輝明の手を取ると、瞬時にして輝明と共にその姿を消していた。
その後プレジデント輝明が消えた事による騒動が起きたのは想像にたやすい。
世界統一を拒む派閥の陰謀説。通例の如く宇宙人説。
様々な憶測が飛び交う中、真実にたどり着けるのは誰もいない。厳密に言えば真実を知っているのは輝明本人と古代人達になるのだろう。
古代人文明に招待された輝明。
古代人と現代人は本当にソーサリアに帰依出来るのか。輝明の努力は本当に報われるのか。
現代人も古代人もそれを知る術はまだない。
宇宙人。神。古代文明。貴方達はどれを信じますか?
読んでくださった方。ありがとうございます。
今回は『ミステリー』という事でアップさせて頂きました。
なお。
今回は小説ではありますが、あまり小説っぽくしていません。
情景描写はあまりなく、殆どが会話だけでの描写となります。
これは意図的な物となります。
会話と僅かな情景描写のイメージでどれだけ想像を膨らませられるかになります。
当然これは自己満足にしか過ぎません。ご同調頂ける方がいらっしゃいましたら、嬉しいです
。
普段であればUO(ウルティマオンライン)の小説を書いているのですが、魔が差してこの様な小説を作ってしまいました(苦笑
今後とも、ご理解いただける方がいらっしゃいましたら、お付き合い頂ければ幸いと存じ上げます。