Le stand ... client  邦題 屋台の・・客

Le stand ... client  邦題 屋台の・・客

上司と女性の平凡な話。

 社で部員から飲みに行きませんかと言われた。
 社でも評判の美人だから、男性の受けは良いようだ。誰が彼女を落とすかというような状況ではと思う。 
 三田洋二を誘ったのは人畜無害だからだと思う。年齢も離れているし何か相談でもあるのか、それとも暇潰しなのか・・。
 社の近くの居酒屋で飲む事にした。洋二は専らビール党だが酒井紗耶はサワーに決めたようだ。
 摘みはお決まりの焼鳥などだが、彼女は特別何をと言わないから、何でも好きなものを頼めば?と。
 飲み乍らの話題は、社での男性の中で誰が最も彼女に似合っているかという事だ。
 彼女とは以前も何回かこういうことがあった。美人だから相手を選り好みしているのか・・なかなか決められないような様子だ。
 慌てる事は無いが、最初に飲みに行ってから二年が経つ。適当に見繕ってという訳にもいかないが、もうそろそろ・・候補が浮かんでもいいような気がする。
 具体的に何名かの名を挙げてみた。彼女の好みをある程度は聞いているが、実際の所誰がいいとは責任もあるし言えない。
 其れで、次第に時間が経ってしまった。洋二は独身だが、今更自らの相手を見つけるのは難しいと実感をした。
 大体、此れはと思う女性はいないし、外見だけでは分からないが、案外女性というものはいろいろな要望が多い。 
 特に、離婚を経験した女性は未婚や死別よりも理想が高く、海外旅行や贅沢をしたいというパターンが多い。
 洋二の様にそういう事はどうでもいいのではという考え方はしないから、こりゃ、此のままかなと思う事ばかりだ。
 万が一自分に何かあった時でも、相続はどうしようかと思ったりもする。
 恵まれない子供の施設にでも寄付など考えた事はあるが、案外、意味はないような気もする。
 というのも、具体的にどの子供に渡る事になるのかという事は教えて貰えない。
 そんな事を考えていて、彼女の相手の事を考えていなかった事に気が付いた。
 其れでも、何人か頭の中には浮かぶのだが、中々口に出せない。それとなく彼女に匂わせてみるが、反応は今一のようでもある。
 しかし、此れでは先に進まないと思い、社の便せんに何名かの名を書き封筒に入れ、店を出る時に彼女に渡した。
 其の後、飲み足りないからと・・駅前の路上に出ている屋台で、おでんしか無いが、其れで酒を飲んだ。
 おじさんはアルミのような計量カップになみなみと酒を注ぎサービスをしてくれるが、ハッキリ言ってあまり良い酒ではなく美味しくない。
 其れでも、何時も手頃だからと毎回屋台で飲んで帰る。



 近いうちに、洋二は人の勧めである女性に会う事になっている。待ち合わせ場所を聞いていたのだが、うっかりして遅刻してしまった。
 相手は、まあ、臨時の公務員とかで月並みだが夫と死別後、まだ大学生の次男と一緒に住んでいると最後に聞いた時、其れでは本当に再婚の意思はあるのかと思っても見た。
 子供がいるのなら、其方の方が優先ではないかと思う。其れで、其の話はお断りをした。
 どういう訳かあまり強い印象は残らなかった。子供が卒業してからでも遅くは無いだろうと思う。
 帰り道に再び屋台で飲んで行こうかと思った。屋台も寒い中で、客は大抵自分しかいないから、此れで稼ぎは・・?など気にしてしまう。
 




 再び社の部員と飲みに行くことになった。先日の紗耶に男性が二人だ。
 男性の方はおそらく満更でもないような表情で酒を飲みながら彼女やもう一人の男性と話をしている。
 或る程度時間が経ったところで、洋二は店主に皆の代金を多めに置き店を出た。
 ホームに電車が入ってくる。毎日同じ電車に乗り、よくも飽きないものだと思ったりするのが、少しおかしいような気がする。
 洋二は片手間に書き物をしていて其れが趣味だ。といっても大したものは書けないが・・まあ、自己満足というところだ。
 当然ながら、何時もの屋台の映像が頭に浮かんだ。寄っていくかと思うより早く足が其方に向かっていた。
 屋台は今日も貸し切りの様に他に客はいない。




 おじさんとぼそぼそと話をしながら、あまり美味しくない酒を大盛で注いで貰う。
 ふと気が付くと・・客が来た。
 と思ったが・・屋台に近付いて来た顔を見て驚いた。
 紗耶が・・どうして此処を知っているのかと思った。
「・・君・・良くここが分かったね?其れに・・あの連中はどうしちゃったの?」
 考えてみれば彼女の帰り道は同じ方向だった。その割には一緒に帰った事がないから気が付かなかった。
「屋台なんて珍らしいだろう・・良かったら何かおでんでも摘まんで・・?」
 彼女はおじさんに適当に見繕って貰うと、美味しくない酒をコップで飲み始めた。
「お見合い・・上手くいったんですか・・?」
 洋二はそんな話をしたのかなと思いながら・・。
「何か、大学生の子供が一緒に住んでいるんだって?まだ・・早いかなと思ってね・・」
 すぐに話題を変えた。
「君の・・彼等は置き去りにしてきちゃったの・・?」
「・・だって、また会社で会えるから・・伸ばしても良いかなと思ったりして・・?」
「ああ、其れはそうだけれど・・僕だって其れは同じじゃない?」
「・・お見合いで決まったのかと思いまして・・?」
「僕の事は・・どうでもいいんだけれど・・自分の事を考えないと?しかし・・良く此の屋台の事が分かったね?」
「この前飲んだ時に・・寄って行くかなって言ってから・・何処に?って聞いたら・・此処の話をしたじゃないですか?通り道だから・・すぐに分かりました・・屋台なんて案外面白いなと思って・・おじさんボケですか・・?」
 もう一人のおじさんの手前うっかりした事は言えないが、あまり衛生的だとは言えず・・持って来た水で食器を洗い流したりするし、酒も其れなりだから・・居酒屋の方が良いとは思う。



 まあ、今回の事はどうでも良いが・・?早くしないと・・婚期が遅くなるのが心配になった・・勿論・・彼女の事だが・・。





 此処で・・作者は・・。
「紗耶は・・その後すぐに相手が決まり・・結婚のゴ―ル番を掛け抜けた・・」
 と書こうと思ったが・・其れでは・・彼女の相手の観察眼をせかす事になるので・・あまり良くはないと思う・・。




 それにしても・・彼女は其れからも屋台が気にいったのか・・居酒屋とあまり変わらないペースで行く事もある・・。
 心配なのは・・こんな事何時までやっているんだろう?という事だが・・彼女は結構余裕のようだ・・まあ、美人だからかな・・?





 其れから・・相変わらず・・時々屋台・・が続いている。他の連中には屋台の話はしないようだが・・まるで・・娘と顔を合わせているような気がしてならない・・。



 屋台は季節により・・冬の方が流行るものだ・・とは言っても客は・・二人だが・・。
「行潦(みづたまり)も、つめたく、墨を流した様な黒々とした空を映したまま、この冬の夜を、何時かそれなり凍つてしまふかと疑はれる。」「芥川の文章に半分手を加えた」   
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「by europe123」」
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Le stand ... client  邦題 屋台の・・客

飲みに行った親子ほどの二人共、別々の結婚が頭に。

Le stand ... client  邦題 屋台の・・客

二人が、互いの話をしあったのは・・駅前の小さな屋台。 美味しくは無い酒だが、二人は飲み語る。 親子ほどの二人には其々の結婚感がある。 先ず、二人がどうなる事でもないのだが、屋台の雰囲気が二人別々の先々を描かせていく。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-10

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