冬の殻

 シリアルを、ばりばりとおおげさに音を立てて噛み砕く朝に介入する、刹那の喪失に。空虚。からだのなかみがすべて、からっぽになったみたいな感じ。すずめがちゅんちゅんと鳴いている声がして、換気のためにわずかにあけた窓からの風で、カーテンのすそがふくらんで、なにげなくつけたテレビからは、なまえのしらない、けれど、かわいらしい絵のアニメーション。きっと、つついたらぷにぷにしそうだ、と思いながら、シリアルといっしょにスプーンですくってしまった牛乳に、ためいき。ベッドルームから、エヌの起動音がきこえて、目覚めたことに気づいて、十二月らしい気温ですっていう天気予報に、きょうはダウンジャケットを羽織っていこうと決めて、ふいに、他者からのやさしさがほしくなって、でも、そういうのはみんなまやかしなのだと自分を戒めながら、お皿にくちをつけて、牛乳を吸ってふやけた残りのシリアルを流し込んだ。

冬の殻

冬の殻

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-07

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