美空からの使者

美空からの使者

人類ではない者達の考え。

 大阪国際空港から北京行きの便に乗った。
 隣の席に座っていた知里美雪が尾上雄二に話し掛けている。
「大阪で何か収穫はあったんですか?」
「いや、特段の事由は無かったが、彼の母親に関する大体の姿は浮かんでいる。終戦直後から差別があったから私も子供ながらにいろいろな記憶が蘇って来る。在日朝鮮人と・・」
 其処まで言えば美雪にはそれ以上話す必要は無くなる。知里という苗字は此の国でもあまり目にしない文字だが、れっきとした此の国の先住民でもあるアイヌ民族。
 コロボックルと言えば彼等の神とも言われているが、そもそもそれらの類は青い惑星に次第に進化してきた人類が登場した当時に、雄二の祖先たちが暗示をした事に始まる。
 前回までのseriesでも何度か出てきたように神や仏というものを人類に暗示する事で、人類誕生当初の不安を聊かでも鎮める事が出来るだろうとの判断で行われた。
 ところが、祖先たちが既に同じ様な目的で宇宙空間に存在する他の生命体に暗示した結果とは逆の効果が現れる事にもなっている。
 他の惑星でのその後着実に進化を遂げている過程では全く問題は見られず、静かな生命体の惑星として成長を続けているのだが、例外の現象が青い惑星で繰り返されたまま現在に至っている。
 美雪が今回雄二に同行した理由は雄二の目的を終えた後雄二の郷里で生活をしたいという事で其れが可能になったからだ。
 可能という事の意味は、百五十億年彼方の巨大な創造惑星に於いては、同じ様な緊急避難の目的で移住してくるのに許可が必要になる。
 許可は高度な惑星の住民達と創造頭脳(以後単にAIという人類の名称を使用する。)で創られている「仮称連盟」というものに居住の審査が委(ゆだ)ねられるのだが、結果、承認されたという事。
 緊急避難の意味はと言えば後程述べる事にするが、此れから雄二が訪問をする事とも多少の関係がある。許可は惑星からだが、実際に彼女が住む事になるのは東京都に位置する「別の三次元空間」であり、雄二は弁護士であると共に、元旧財閥系のグループの総帥でもあり、また、何の変哲もない物書きで文豪夏目漱石とも交友関係にある。
 雄二と一緒にその空間と本来の三次元空間との丁度境目に位置する花街の茶店に住んでいる女性が若井夕子で花街の芸者達の師匠である。
 もう二人、女性が度々登場しているのだが、一人は大物女優である三田綾子で雄二と同じ大学時にミスコンからデビューを飾ったという経歴の持ち主で、二人共誕生してから人類として育って来た。
 更に一名は現在雄二達の郷里に近い惑星に戻っているが何れ再び此方に来る事になるだろう。美雪が住む事になる花街はその名の通り、元は遊郭であったが、昭和33年売春禁止法以降は其の面影だけを残している。
 そんな事もあり、二人の会話は昨晩夕子と三人で見た映画の話題になっている。昨日、話した市川雷蔵・山本富士子出演で泉鏡花作の「歌行燈」が其れで、舞台が禁止法以前の明治の遊郭となっているので・・。
「いや、僕はあの作品を三日続けて見ているが飽きないんだな。人類の世界・此の国は女が男の僕(しもべ)の様になっているんだが、富士子扮するお袖がどうしても芸者というものに成れず、嫌々借金の為に大旦那の妾になる運命を認める事が出来ず、自殺を考えていた。謡(うたい)の師匠の娘であったのだが、そもそも父を自殺させる元になった雷蔵扮する能の宗家の跡継ぎである恩地喜多八と、一目惚れの様になっており、最初の見せ場である夜半の森の中で喜多八が彼女に「玉之段」の舞を教える。其の後はほぼ全編に亘り二人の苦悩の経緯が描かれていた。そして、最後のシーンは本当に最後に相応しい素晴らしいsceneをカメラが捉えている。其れも、偶然、お袖の旦那の予定がずれたお陰で、仲間の芸者からある客部屋に出るように頼まれる。其れを聞いたお袖は既に、死に体(しにてい)、であったから一旦は断るのだが・・芸者の「お能の方よ・・」の言葉に思わず、「それなら・・」と。お能の方とは奇しくも喜多八を感動した父ともう一人だった。其処で、お袖は芸者の舞を踊ってくれと言われたが断る。「厚かましいのですが、私にとっては最後の晩。出来ましたら能の舞を・・」許可した二人の前で舞う姿もさることながら、見ている宗家が其の舞に心当たりを覚え、「私も他の事は分からぬが、事、脳を舞う人の頭の中は読める・・」など言い出す。お袖が舞の最中にうっかり落としたのは「猫いらず」という鼠用の毒薬。其れを見た宗家がお袖に言って聞かせる。「・・其れ程真剣に死ぬ気であるのなら、其れを懸命に生きる方に・・あとの事は私が一切の責任を持つ・・」もう一人も、「あまりの迫力に思わず汗が流れ出・・」。宗家は自らが勘当した喜多八とお袖の舞が同じ事に気付き、そんな事を言ったのだろう。そして、最後の場面で、宗家が部屋のガラス戸を開け放つ。お袖の舞に合わせ鼓(つづみ)の音と宗家の能の声が辺りに響く。余りの場面に芸者達も部屋の外から覗いている。其処にやっと気が付き薄暗い庭園から現れたのが、雷蔵・喜多八。二人が顔を合わせるsceneのお袖の表情の演技が上手い。二人は目出度く衆目の中で抱き合うのだが。此れには、あわやの場面での落としとしては実に見事と言わざるを得ない。涙が出るのは人類だけではなく高度な文明の住民でも同じ事。カメラは当時の時代の薄暗さ・鏡花の作品の神秘さを感じさせながらも、ここ一番では見ている者に上手に訴えかけている。子供の頃から山本富士子は知っていたが、此処までの女優だとは思えず・・でいたが、此れで改めて当時の映像美と作品を上手く脚本・シナリオに網羅している事に感動をした。詰まらぬ小説などやめようかと思った」
 其れは、どうやら一緒に見ていた夕子と美雪にも同じ様に感じられたようだった。大体が、人類の進化のlevelは心もとなく、何時までも女は男の遊びにしか過ぎないという偏見と差別には、つくづく呆れかえる。
 其れを聞いていた美雪も同様に差別の被害者である。此の国では在日朝鮮人やアイヌ民族の差別の言動が未だに窺がえ、其れも、今度は政府の同じ女性のくせに。「2022/11/30 · 30日の参院予算委員会では杉田水脈総務政務官(自民党衆院議員)が、「日本に女性差別というものは存在しない」とした2014年内閣委員会での自身の発言 …杉田氏は16年の国連女性差別撤廃委員会出席時、「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」と自身のブログに投稿していたことも塩村氏に問題視された。杉田氏は当時、「目の前に敵がいる!大量の左翼軍団」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」「国連を出る頃には身体に変調をきたすほどでした」とも書き込んでいた。杉田氏は「至近距離で罵声を浴びせられた。このような感想を持つのは仕方がなかった」などと釈明したが、塩村氏は杉田氏のブログでの説明を根拠に「自分から近づいていったんじゃないですか」とたたみかけた。杉田氏はまた、16年に産経新聞のニュースサイトに、保育所増設や夫婦別姓などを求める動きはコミンテルン(共産主義政党の国際組織)が日本の家族を崩壊させようと仕掛けたものだとの趣旨の寄稿をしたことについて「事実として確認できず、不用意な発言だった」と述べ、撤回する考えを示した。「女性はいくらでもうそをつけますから」との過去の発言については「女性を蔑視する意図は全くなかった」と釈明した。
 塩村氏は杉田氏の更迭を岸田文雄首相に求めたが、首相は「人事は適材適所だ。政府の一員になった以上、政府の方針に沿って職責を果たしてもらう」と拒否した。杉田氏は過去、LGBTなどの性的少数者は「生産性がない」と主張したこともある。毎日新聞【日下部元美】」 
また、別紙では。「“ヘイトの見本市”杉田水脈政務官薄ら笑いでデタラメ答弁連発 ...11月30日の参院予算委員会は慄然モノだった。 立憲民主党 の 塩村文夏 議員が差別発言を平然と繰り返す 杉田水脈 総務政務官の資質を40分あまり追及。薄ら笑いを浮かべた杉田氏はデタラメ答弁を連発し、「日本には命に関わるひどい女性差別は存在しない」と言い出し、審議は何度も止まった。安倍元首相の子飼いアピールで生き延びてきた杉田氏は、さながら「ヘイトの見本市」だ。 杉田氏の異常な思考回路は「LGBT ...
日刊ゲンダイ on MSN日刊ゲンダイ on MSN · 5 日。
岸田首相、杉田水脈政務官の更迭否定 過去の発信巡り
岸田文雄首相は30日の参院予算委員会で、杉田水脈総務政務官の更迭を改めて否定した。「政府の一員になった以上、政府の方針に沿って職責を果たしてもらう」と述べた。野党が過去の発信などを問題視して辞任を求めていた。杉田氏は過去の月刊誌の論文で性的少数者(LGBTなど)について「生産性がない」と記した。同日の予算委では自身のブログで国連女性差別撤廃委員会の会合の出席者をやゆしたことも指摘された。「チ ...
日本経済新聞 · 6 日
 同様の記事は、「khb東日本放送」・「FNNプライムオンライン」・「Yahoo!ニュース · 4 日」・「岩手日報」・「京都新聞」・「日経新聞」などにも掲載された。



 ところで、二人が向かっている先は、北京だがそこで用を済ませ、再び機上の人に・・。
 実は、大阪に寄って来たのには理由があった。美雪の様なアイヌ民族と同時に朝鮮民族も卑下されている。朝鮮半島の国の元首の母は、大阪生まれのこの国の人。
 雄二はそもそも人類では無いが、遥かに進んだ文明の住民で差別は許せない特に弱者に対しては。其れは兎も角二人が大阪から飛び立ったのだが・・それ以前に何処の国からか攻撃があった。
 雄二は人類の様に言葉で表現するだけでなく、頭脳同士での対話が・・寧ろその方が郷里では多い。其処で今回の事情聴取に至った。
 雄二達の三次元空間は何処の国にも属さない。強いて言えば宇宙の空間と同様。
先ず、「懸案事項である、行方不明者の件であるが、先方には、此の国の言葉は刺激が強過ぎるし、彼は聊か短気な面もない事は無い。側近が処刑されたのも飲酒の後だった」
 国交は無くとも雄二達には無関係と言えるから、必要な事を教えて貰う事が出来た。
 次に攻撃をした発端であるが・・。
「防衛費5年で43兆円、GDP比「2%」到達ありきで財源確保は後回し…当面国債発行で数年後に増税か 国民負担は必至」
「長射程ミサイル開発5兆円規模 政府の防衛力整備計画の概要判明」
「自衛隊沖縄に終結」
「USAの基地から発がん性物質流出・・勘ぐれば、化学兵器・生物兵器を自国外で製造実験~過去の人体実験からそんな事も言われても仕方がなく、しかも、治外法権で、実態は蚊帳の外の出来事・若しくは薮の中」
 まあ、雄二達から言わせれば、何もしなければ何も起きないと主張をしてきたのだが・・。
 極端な考え方をすれば・・軍備を進めるのであれば、対抗する・・というのが人類の本能といえ、其れが歴史上際立っている国はUSAに他ならない。
 且つて、此の国も原子爆弾の人体実験の被害を被ったのだが・・今の国民はこの事に言及をしようとせず。
 USAが口を開けば、「他国の被害が・・」・更に「自由主義が=世界中、でなければ満足はしない」が信条。ところが、先程の女性の問題にあらず、人類は其々に考える事・言動が異なって当たり前。
 例えれば、絵の具であれば、カラフルであるのを、自国の思想一色・星条旗色に塗りつぶさないと満足がいかない。全色合わせれば黒色になり、光であれば白色になるのだが。
 或る意味、「他国に内政干渉ばかりしている」とも言える事になる。雄二達が学んできた事の中に存在する言葉が、或る時は「自由と規律が両立しなければならない」であり、「他人の言動を頭から非難するのは、弁護士の交渉能力にも劣る」。
 更に、政治学上の歴史上で言えば、「Germanyのマルクスの資本論・共産党宣言が発端となった原因は資本主義による貧富の差が取り上げられたという一面も否定はできない」。
 現実には、これ等は資本主義もそうであるように、修正・・。修正・・。となって来たのが現実で、かなり形が変わってしまったという事になるのだが・・。



 二人は事情を聞き、花街の空間に戻る事にした。此処には、攻撃を受ける理由もなくば、被害痕など皆無。武器などは全く不必要であり、伴い住民には一切の何物の負担も生じない。国で無ければ、税は存在しない。
 余談であるが、且つてEnglishで政治学用語とし存在したのは幾つもあるが、
「status quo」とは・・?
 茶店に漱石が顔を出した。
「ある人は十銭をもって一円の十分の一と解釈する。ある人は十銭をもって一銭の十倍と解釈する。同じ言葉が人によって高くも低くもなる」
 故人であるのだが、漱石は天才故解釈が賢明だと言えそうだ。

美空からの使者

女性が男性の遊びに利用されていた歴史は未だに。

美空からの使者

大阪以外が攻撃された理由と、拉致被害の裏。 交渉力は何も決まった人にだけ備わっている訳ではない。宇宙の文明から見た青い惑星の現状。

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-07

Copyrighted
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