遥かな宝物の星にて・小町・式部・晴明に私と綾乃・の空蝉・・。
明治の文豪たちも、幾つかの幻小説を書いています。
، شیکیبو، هارومی، من و آیانو، هویت ... 邦題 遥かな宝物の星にて・小町・式部・晴明に私と綾乃・の空蝉・・。
銀座通りのカフェで休憩をしている時だった。脇に置いてあったラックから週刊誌を取り出そうと。
同時に誰かが同じ雑誌に手を触れたような気がした。
「あ、どうぞ・・」
と言ったのだが・・姿が見えない・・、
「何だ・・気のせいか?」
雑誌のページを捲っている・・或るページで指が止まった。
掲載されている写真のページの見出しには、昭和で最も人気のある女優とし何人かの女性が笑顔を見せている。
上段の一番大きな写真の女性は・・。
「・・綾乃?」
微かに笑みを浮かべているようだが、彼女なら品をつくるのでは無くとも上品な色艶が窺えるから、他の女性とは時代の差を感じさせる。
そういえば、此処のところ夢に現れる事が無かったから、身体でも壊したのかと・・そんな訳はないのだが。
千年前からの契りで、二人は結ばれている筈だが・・そもそも時空を超えて繋がっているのだから。
其処である宇宙の法則を思い出した。
この青い惑星で考え出された理論上は、仮に遥かな文明迄行って来たとする。
二つの惑星の距離は億光年とする。出発時と帰還時では時間に狂いが生じる、ああ、やめておこう。
その様なものではないから。三次元だけで構成されている訳ではない宇宙空間では、当て嵌まらない。
科学・医学・薬学など何をとっても、本来、未知な部分が半分以上であるから仮説として考えるしかない事になる。
そう言えば都合は良いが、要は・・人類の思考能力と経験値では、スーパーコンピューターのように、dataの計算能力はあってもdataそのものが無ければ、分からない、と答えた方が寧ろ正しいという事になる。
あの時の、つまり綾乃に恋していた私は、私ではあるが、例えようとすれば少し大き過ぎるミスをしでかしていたとでも言うしかない。
二人の間に会わない時間があると考えるのは妥当ではない。矛盾ではない。しかし、其れを今、レベルが無しに等しい人類に当てはめるには無理があり過ぎる。
幼稚ではあるが、少し深く寝すぎてしまい夢を見る間もなかったとでも考える事にしておこう。其処で、話は逆戻りする。
女優として掲載されているのは、綾乃が私を目覚めさせるための手段に過ぎなかった?
先程まで姿の見えなかった、隣のテーブルを挟んだ席には紛れもなく綾乃が座っている。
「夢で申しますが、八坂神社の手前の西楼門で、朝、十時に。忘れいでね・・と・・?」
「いや、勿論、忘れていたんではないよ。君以外に頼みの綱も無ければ、ああ、言い訳は良しにしておこう。ところで、この写真は如何?」
綾乃はすっかり何時もの彼女に戻っていて、茶碗を手に取り口をつけてから受け皿に戻すと。
「行けへんかった?」
「いや、君にしては随分派手な・・と思ってね?」
「人から聞き、当座そないな事にしたら・・と?」
「其の人というのは・・あの私を蘇らせてくれた?」
「そうや、晴明はん・・」
「まあ、彼ならそんな事があってもおかしくはないな?其れで、まさか本気でお芝居を?」
「いえ、雑誌の方勝手にそないな事を・・」
「しかし、此れだけ大きく載せられると、騒々しくなるんじゃないかな?彼が替え玉でも?そうでも無ければ、まあ、君ならどんな役でもこなせるんだろう・・素晴らしい歌を詠むくらいだから思いを演技にかえるくらいは何とでもなるのかな?」
「・・けど・・筋書きやらどないでもなるさかい?」
「晴明ならではの知恵なんだろうが、少し時代は変わっているよ」
「ほんまは、其れを心配し、あんたは、いけるかしらと矢も楯もいられのうちゅうのが、彼にお願いした訳・・言うたら?」
彼女の気持ちも分からない訳ではない・・物騒な世界だからと、逆にこちらも心配になる。何せ、あの頃は住みやすかったからとは思う。
「折角だから、また時を戻すにしても・・一度君の晴れ姿を見て見たいな?」
「・・そやな、うちはそあらへんに・・真剣に考えてるんとちゃうのやけど・・?せやったら・・あんたにいっぺんだけ・・」
何時の時代にも戻る事は出来る・・先の世は危険だが・・と、私は・・。
其れに、此の詰まらない世に、せめて彼女などが、少しでも美しさを披露できるのなら・・其れは記念になる・・私はそうも思った。
早速、二人だけの世界から抜け出す事にした。少しだけだが・・。
既に、二人の姿は別の場所へと向かっている・・まるで、空間同士の敷居を通り抜けるように・・。
フラッシュが炊かれ、噂の女性の記者会見場に・・。
「あの・・綾乃さんの今回の役柄は、あの平安時代の有名な女性ですが、役柄としては御満足でしょうか?」
「・・どうせ、大したお仕事は出来やしまへんが・・わしなりにやるしかおまへんさかい?」
「歴史上も有名なあのシーンでは歌も詠まれるとか・・少しさわりだけでも披露して頂ければ・・夢の歌が多いという事ですからさぞかし味わいがあるでしょうね?」
「さて?其れはどうか?分からしまへんが、あくまでもお話の筋書きどすさかい・・では、お一つ・・」
彼女はそう言うと、、有名な歌の中から一つ披露したが、まるでアフレコのように声までが歌の情景にあっているようだ。
「恋ひわび しばしも寝ばや 夢のうちに 見ゆれば逢ひぬ 見ねば忘れぬ」
(恋しく想うことに疲れたから、少し眠りたいの。
もしかしたら夢であの方に出会えるかもしれないし、
夢に見れなくても、その間は、この疲れ果てるほどの恋しさを忘れていられるもの・・)
「流石に・・「世界三大美女」の1人ともされる小野小町さんですね?確か、六歌仙であり三十六歌仙の一人、また、著名な女流歌人の称号でもある女房三十六歌仙の一人でもあり、恋の和歌の歌人としてカリスマ的存在ですね。素晴らしい。
ところで、此のお相手とはやはり今回のお話の「深草少将の百夜通い」の・・彼ですか?何か、お芝居では有名ですが、あくまでも深草少将というのは実在の人物ではなく、この話はフィクションなんですが、モデルとなった人物はいたとか・・。
フィクションにしても、こんな話が伝えられるぐらいですからやっぱり絶世の美女・小町さんですね・・ねえ?綾乃さん?」
綾乃は、周囲の人垣の中から私の姿を見つけると、笑みを浮かべ首を傾げた。
撮影はお馴染みのこの話を取り上げたもので、かなり修飾され華やかになっているようだ。
「こんな事言っては失礼ですが・・美しい女優である綾乃さんの悩殺pauseっておありなんですか?若し、出来たら?其れで大スクープになるものですから・・?」
会見場が、俄かに静かになると期待する記者達の息を潜めたような緊張感が・・。
綾乃は、再び私の眼を見ながら、伺いのサインをよこす。
私は、
「どうせ此れ一回だけなんだから、いいんじゃない?」
と、返事を送った。
「でしたら・・一瞬だけ。でも、はしたない真似はしたくないんで、後ろ姿・・と言っても着物を脱ぐわけではなく、うなじだけ?」
一斉にフラッシュが炊かれた・・。
彼女の真白いうなじから、襟足がやや広めに背に落としてある。滑らかで柔らかそうな肌理がflashで弾けた様に窺える。
巷では、晴明作の二役の女性もどきがこの後も演技を引き受けた様だ。
その頃、綾乃と私は、暖かい太陽に溶け込んだような宙を通り抜けていた。
「・・あれだけ歌を歌った歌人・・世界三大美女の小野小町は実在していたという事を知っているのは私だけかな・・?」
綾乃は次元を超える瞬間に、もう一つ歌を。
「いとせめて 恋しき時は むばたまの 夜の衣を 返してぞ着る」
どうにも恋しさに堪えられない時は、
(せめて夢で逢えるよう夜の衣を裏返して着るのです)というのは、恋のおまじない・・と言う事・・。
二人は次元空間(仮称)を通り抜け・・遥か彼方の平和な惑星迄辿り着いた。
「ねえ?小町と君が同一人物だと知っているわけ?晴明は?」
晴明が突如。
「・・大丈夫ですよ。紫式部さんの館から一っ飛び・・彼女かなり来たがったから、いいでしょうか?」
「・・ああ、幾らでもどうぞ、私を蘇らせてくれた貴方ですから。それにしても古き良き時代が、まさか、こんな遥かなところにあるとは?そう思いません?」
晴明は頷くと、
「陰陽道でもこういうのは案外難しいんですよ・・ねえ?式部さんもそう思わない?」
式部が周囲の環境の余りの良さにホッと溜息を付き思わず、二つ程歌を。
「その人、とほき所へ行くなりけり。秋の果つる日きたるあかつき、虫の声あはれなり」
(その人は、遠い国へ下って行くというのであった。秋の終わりの日が来た、その早暁に、虫の声がしみじみと鳴いていた。)
「「遥かなる所に、行きやせむ、行かずや」と、思ひわづらふ人の、山里より紅葉を折りておこせたる」
(「遥か遠い任国に、行こうか、行くまいか」と、思い煩っていた人が、山里から紅葉を手折って寄越した歌。)
時代は異なっても良いものは良い。素晴らしい魔法使いも素晴らしい。そして、稀に見る美女が二人とは・・この上なき天下(てんが)なり・・。
皆の顔が喜びに変わる頃、数多の星達も此れでもかと、瞬き歓迎していているようだった・・。
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「330mix by europe123」
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遥かな宝物の星にて・小町・式部・晴明に私と綾乃・の空蝉・・。
其れは、おそらく、作家としての気分転換や発想に関する空蝉だったのかも知れない。