バッハよ オルガンよ 不在よ

 バッハよ そのそのオルガンを弾く指をとめておくれ、
 あなたのオルガン音楽はいつもわたしを狼狽えさせる、
 光と打ち「(わたし)」という肉を神経で包含し一つの神経と剥く、
 バッハよ あなたの音楽はわたしをまるで跪かせるのだ。

 バッハよ そのオルガンを弾く指をとめておくれ、
 あなたはわたしから「我」を投げだそうともするようだ、
 あなたはわたしからわたしを薙げるように刈るようだ、
 手折られる花と摘む如く剥ぐばかりか、静謐に凪ぐわが身なんだ。

 バッハよ そのオルガンを弾く指をとめておくれ、
 嗚バッハよ そのましろく叩く不在と満ちみちる、
 オルガン弾く指の天揺れる不在というすべてをやめておくれ、

 バッハよ そのオルガンを弾く指をとめておくれ、
 亡きひとの音楽ははや亡きけれど、黎明と在りそれ不在、
 あなたはわたしを旋律聴く魂という不在と化し、結ぶつもりか?

バッハよ オルガンよ 不在よ

バッハよ オルガンよ 不在よ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2022-12-02

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