地獄の季節──アルチュール・ランボオ(翻訳・未完)
26の時に全訳しようとしてたのですが、これ以降を放置していました。これからはちゃんとフランス語をやる時間を割こうと思うので、一区切りごとに載せようと想っています。かなり自分勝手に翻訳しています。
嘗ては、もし僕が定かに憶えているんなら、わが生活、饗宴のそれであったのだ、その時分、如何なる親切心もわが身へ向かいひらかれて、悉くの葡萄酒は、どっぷりと垂れ流されていて。
或る夕、僕はかの美、験しに膝に坐らせてもみたのだった、──そうか、貴様は嫌な奴──すればそいつへ、罵詈雑言を投げてやった。
正義、そいつに対し、僕は武装したのだった。
僕は逃げた。ああ、魔女供、悲惨、くわえて憎悪よ、わが秘宝を託した相手、それは貴様等なのである。
僕は苦心惨憺し、遂に成し遂げたのだった、なべての人間の希望なぞというものを、わが精神の裡で、失神状態へと還らせることを。ありとある歓喜、僕はそいつ等を絞殺するが為、無慈悲なる野獣の魂から湧き昇り、すれば跳躍したのだった。
くたばろうともするさなか、僕は死刑執行人等を召喚した、すればそいつ等の銃の台尻へ、噛みついてもやったのだ。僕は花々をも喚び起こした、どす黒い流血を以て、わが身を窒息させんとして。不幸の季節こそ、わが神の発情期である。わが肉体、汚辱の泥に吊るされた鉤、僕はその身ぐったりと横臥え、重罪の空気のどん詰まりに、乾き切っても往くのだった。すれば狂気による手練手管によって得たもの、そいつはね、野蛮人の血色の好い頬であった。
されば、うら若き春が僕へもたらしたもの、そいつは風と運ばれる、おぞましい愚者のケタケタ嗤いなのだった。
ところで近頃の話──、不断に響いてるのだよ、わが詩作の極致に脚張り蟠りやがった、断末魔の不協和音がね! 僕は夢想し、嘗ての宴の鍵を捜し求めているのだ、いずこでそいつを奪還しえるか、或いはそいつを閃かす鍵、まさか食欲ではあるまいか。
愛こそその鍵である──僕の抱く夢想が幻にすぎぬこと、それを証明するのがこの想いつきさ。
「貴様はハイエナのままでいるのだ…」なぞと、悪魔奴、しかも自己欺瞞に塗りたくられた奴、愛想笑い浮かべた罌粟の花を、わが頭に戴冠しやがる。「死をモノにすることさ…それも貴様の欲望、エゴイズム、くわえて吐き棄てられ溜った白桃いわく罪業、それ等諸共曳き伴れて」
ああ、僕はね、夥しいもの等で手が塞がり、うんざりしているとこなのだよ。──さて、親愛なる悪魔よ、お願いですがね、その苛立ちに燦る瞳、もすこし抑えてはくれませんか、されば遅ればせながら自己紹介、貴様が僕を逃がすまで、その短い猶予期間にやらせてもらおう。貴様はね、作家の描写・啓蒙の才なぞというもの、欠如してるのがお好みだ、そんなら君に披露しようか、地獄で書かれた僕の手記、呪わしき紙片の幾枚か!
地獄の季節──アルチュール・ランボオ(翻訳・未完)